第12話 鬼嫁の右腕、赤のロボシフト

 「なるほど、変身後に更に鋼を纏いさらにその上で仲間達皆で一つの巨人となる術と言う事ですね」


 アカネがロボシフトについて理解する。


 「アカネのロボシフトの修行、俺も加わるから二人でやろう」


 自分の前回の失敗から、太郎がアカネのサポートに付いてのチャレンジとなった。


 「太郎様の時に、私だけでもお傍に控えさせていただきたかったです!」

 

 アカネが可愛らしくむくれる。


 「がっはっは、愛されとるのう坊主」


 ガンテツが笑う。


 「……ごめん、でもあれは自分で破らないといけない殻みたいな物だったんだ」


 太郎がアカネに謝る、仲間の力はありがたいけれど頼りっぱなしでは駄目だと太郎は考えていた。


 「では、私の時は太郎様がお助けにいらして下さるのをお待ちしております♪ 私、今はこのように男の武家の装いですが元来は気弱な性根で熊を素手で倒せる程度の力で金棒より重い物など持った事のない細腕の手弱女ですので♪」


 アカネがしれっと笑顔で、オーガジョークを言う。

 イチヨから、アカネこそヤチヨ村最強の女だと聞かされていた太郎は苦笑する。


 「うん、その時は絶対に助けに行くよ!」


 太郎は真面目な顔でアカネに誓った。


 「……やっぱり、太郎様は素敵な殿方です♪ あの時、他のヤチヨ村の娘に取られなくて良かった♪」


 アカネは頬を赤く染めた。


 「がっはっは、お主らが想い合っておるのはわかった♪ では、やってみせい♪」


 ガンテツの笑いでアカネの採石場での修行が始まった。


 「まずはお馴染みの、ブレイブシフト!」


 アカネがアカシフターにブレイブシフトする。


 「……そしていざ参る、ロボシフト!」


 アカシフターのシフトチェンジャーが。金色の光を放ちアカシフターが双肩と胴体に鬼瓦のような装甲を追加で装備した二メートルサイズのスーパーロボット。


 ロボシフターの姿となった。


 「よっし、アカシフターは一発で成功か羨ましいぜ♪」


 太郎は、素直にアカシフターのロボシフトの成功を喜びつつも羨んだ。


 「それじゃあ俺も行くぜ、ブレイブシフト!」


 太郎もシロシフターへと変身した。


 「そして、こっちもロボシフトだ!」


 シロシフターもロボシフトする、二体のロボシフターが相まみえた。


 「では殿、いつもの如く互いにぶつかり合い稽古と参りましょうか♪」


 アカシフターが金棒を、ホームラン宣言のように向ける。


 「応♪ いざ、尋常に勝負♪」


 シロシフターのボディから法螺貝の音が鳴り響き、ロボシフター同士の模擬戦が始まった。


 先行で相撲のぶちかましで突っ込んだシロシフター。


 対するアカシフターは、両肩の肩盾状態になっていた鬼瓦が外れて空中で合体し巨大な盾となってシロシフターの突進を止める!


 「ぐっわ~~っ! ロボになってもガンガン体に響く!」


 鬼瓦の盾にぶつかり、全身がふらつくシロシフター。


 「まだまだ! カナボウキャノン!」


 鬼瓦の盾が横開きになると、開いた個所から突き出た金棒を挟み砲台と化した。


 砲となった金棒の先端から、巨大な火の玉が発射されシロシフターを吹き飛ばす。


 だが、シロシフターも空中で宙返りをして着地しダメージを減少させた。


 「こっちも飛び道具だ、モモビ~~~~ム!」


 シロシフターが顔のバイザーから桃型のピンク色の光線を発射する!


 その一撃は、アカシフターのカナボウキャノンに直撃すると爆発を起こして吹き飛ばした。


 「……何、消えた?」


 爆発の煙が晴れると、そこには誰もいなかった。


 「甘いですよ!」


 シロシフターは背後から振り下ろされた金棒の一撃を、何とか回避した。


 「グンバイシールド!」


 避けた所に来た金棒の追撃を、巨大化した軍配で受け止めるシロシフター。


 「勘が良いのは良い事ですが、まだまだあっ!」


 今度は距離を取り、肩の鬼瓦を燃え上がらせてショルダータックルを仕掛けて来るアカシフター。


 「それはこっちも同じだ、グンバイスピン!」


 その場で独楽の如く超高速回転を行い、回転ドアの要領で相手の攻撃を弾き飛ばすシロシフター。


 二人の模擬戦は、どちらも負けじと攻防を繰り返していた。


 「やはり、貴方様は私の事をきちんと見てぶつかって来て下さる♪」


 アカシフターが、言葉を漏らす。


 「俺もお前に、向き合ってぶつかり合って! 笑い合って、支え合ってもらってる!」


 シロシフターからも、感謝の言葉が漏れる。


 「……何とまあ、愛しき良き殿方でしょうかあなた様は♪」


 「……あなたも、素敵な女だよ♪」


 互いに想い合う二人。双方軍配と金棒を中段に構えて金色の炎を灯す!


 「グンバイスマ~~ッシュ!」


 「カナボウダイナミック!」


 互いに技の名を叫び合いながら突進し、シロシフターは相手の胴を打ちアカシフターは脳天へと振り下ろして武器をぶつけ合い二体とも同時に爆発した。


 「や、やりすぎだ馬鹿者共っ!」


 ガンテツが叫ぶ中、太郎とアカネは互いの手を握り合って寝転がっていた。


 「流石は我が夫にして殿、オーガの王に相応しい強く優しく愛しい背の君です♪」


アカネが太郎を、恋する乙女モードで讃える。


 「……うん、嬉しい事を言われてるんだけど恥ずかしすぎる!」


太郎の方はアカネの言葉に、悶えた。


 太郎の方は記憶が抜けているが、何故かアカネ達の自分に対する押しかけ女房発言をいつの間にか受け入れている自分に気が付いた。


 そしてぶつかり合いが終わり立ち上がった太郎とアカネは、ガンテツに怒られた。


 「お主ら、もう少し加減せんか! まったく、二人共に似た者夫婦か?  坊主も娘も、どっちもヤチヨにそっくりじゃ」


 ガンテツは、太郎とアカネのカップルに戦う時は修羅となる友人の鬼神を思い浮かべて怒りつつも呆れた。


 「まあ、確かに祖母ちゃんの孫だしなあ俺」


 申し訳なさそうに呟く太郎、鬼神の血は確かにその身に流れている。


 「私も、生まれからしてヤチヨ様の眷属で更に巫女でしたので」


 アカネは、ガンテツにそう言われても特になんとも思ってもいなかった。


 「まあ、お主らも自分の高い火力を実感したであろう? 今後は、今よりも手加減の方を覚えて力の制御を課題にせい!」


 ガンテツから、手加減を覚えろと言われてしまう二人であった。


 「さて、素の女子の部分が出てしまいましたがここからはまた真剣に」


 アカネが、太郎と一部の面子以外の前では女の部分を出したくないのと太郎の男性の友人の枠を独り占めしたいと言う独占欲から始めた男装の演技モードに入る。


 「男っぽく振舞う姿も良いけれど、女性らしいアカネも好きだよ♪」


 太郎がアカネに自分の思っている事を伝える。


 「……そのお言葉は嬉しいのですが、不意打ちは卑怯です!」


 アカネが頬を染めて怒鳴る。


 二人は再びシロシフターとアカシフターにブレイブシフトした。


 「さて、お主らロボシフターが二体になったと言う事は合体も試せるかのう?」


 ガンテツが二人を見て呟く。


 「合体ですか♪ 戦でも殿と一つになれる、良いですなあ♪」


 アカシフターがやる気を見せる。


 「どうなるのかわからないけれど、試してみます!」


 シロシフターも挑戦する気になった。


 「ふむ、では二人共ロボシフトで変化せい」


 ガンテツが指示を出すと、シロシフターとアカシフターはロボシフトした。


 「行くよアカ! 合体シフト!」


 「心得ました♪ 我が身を殿の右腕に!」


 二体のロボシフターが変形を始める、シロシフターは勢い良く胴体から右腕が射出されて外れる。


 アカシフターの方は、上半身と下半身が分離。


 上半身部分が上腕の部分に変形し、両肩と胸の鬼瓦が一枚の巨大な肩盾となる。


 下半身が前腕部分に変形、それぞれがシロシフターの分離した腕を覆うように合体して巨大な真紅の右腕となってシロシフターと合体した。


 「うお! これが合体か!」


 「またしても、殿の初めてをいただき申した♪」


 「いや、ちょっとアカは何を言ってるんだよ!」


 「ああ、自分が殿と一つになるとは良い気分にござる♪」


 「いや、ちょっと思考が危なくなってるよアカ!」


 右腕が巨大な真紅の籠手を纏った、アンバランスな形になったロボシフター。


 シロとアカの二人の戦士は、自分の右腕と夫婦漫才を行っていた。


 「まあでも、力強く頼もしい右腕になったのは運が良いぜ♪」


 シロシフターが、アカシフターの変形合体した右腕を動かして見る。


 「はい、私が殿の右腕です♪ 鬼瓦の楯に金棒に攻防に優れし、我が剛腕と火力を存分にお使い下され♪」


 アカが語ると同時に、ロボシフターの右腕に金棒が握られていた。


 「おお、この状態だと仲間の武器や力が使えるのか♪」


 ロボシフターが金棒を振るう、だが自分もバランスを崩して転倒してしまった。


 「と、殿! お気を確かに!」


 慌てるアカシフター、鬼瓦から勢いよくガスを噴出して起き上がらせる。


 「大丈夫、これは調子に乗った俺が悪いよ♪」


 起き上がって、笑うシロシフター。


 「いえ、私も嬉しさの余り我を忘れておりました」


 アカシフターも謝る。


 「じゃあ反省終わり、この形態は二人で呼吸を合わせて動こう♪」


 「御意、お任せあれ♪」


 合体したロボシフター、アカとシロが二人の息を合わせて動いてみる。


 「それではまず、右腕を燃やして見ましょう♪」


 「オッケ~♪ 燃やすぜ、バーニング!」


 ロボシフターの右腕全体が、真紅の炎に包まれた。


 「このまま殴っても良し、振るっても掴んでも良し♪ 腕を突き出して火炎放射も可能です♪」


 アカシフターが解説する。


 「なら、手の部分だけ熱して見たり殴る時に肘から炎を噴き出して威力を上げたり火炎弾にしたりと火加減は任せてくれ♪」


 シロシフターが、自分で言った通り炎の温度や出力を調整して見る。


 「肩のオニガワラシールドも、便利ですぞ♪」


 アカシフターが、肩のオニガワラシールドをスライドさせて右手に持つ形にする。


 「おお、肩の鬼瓦って動くんだ♪」


 肩の盾が、手で持つ盾になった事に驚くシロシフター。


 「はい♪ 遠近の攻めも防御もお任せあれ♪」


 「凄いけど、調子に乗り過ぎはお互い駄目だって♪」


 分離して変身を解いて太郎とアカネに戻る二人。


 「次は、チグサの番だな♪」


 太郎が呟く。


 「チグサ殿も皆を繋いでくれるお方なので、楽しみですな♪」


 アカネも、チグサとの稽古がどうなるかと想いを馳せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る