第三章:ロボシフトの術修行編

第11話 神様の修行 ロボシフトの術!

 「あれ? 何か霧が出て来たな?」


 お園さんと言うサポーターを得て、牛車で旅に出たブレイブシフターズ。

 太郎が窓を開けて外を見てみると、それまで晴れていた山道に突如霧が出てきた。


 「山の天気は変わりやすいですからな」


 牛車の中でもアカネは男装姿で、落ち着いていた。


 「お茶でも飲んで、気分を落ち着けましょう♪」


 チグサも平然と仲間達にお茶を淹れだした。


 「いや、先輩方! 牛さんが何か、猛ダッシュを始めましたよ!」


 ウコンが牛車を引く牛の速度が上がった事に、何か事件の予感がして慌てだした。


 「ヒャッハ~♪ はやいはや~い♪」


 キジ―は牛車のスピードが上がった事で、テンションがハイになっていた。


 「もしかして、噂のブラックテイルの仕返しかい?」


 お園さんが戦隊達に尋ねてくる。


 「……いや、これは何と言うかそう言う邪悪な感じが一切しない?」


 太郎もウコンから教わった方法で額に意識を集中して、敵の妖気を探って見る。

 だが太郎が術で探って見た結果、敵の持つ独特の邪悪な妖気は感知できなかった。


 「ウキ? 大将が邪悪な気を感じなかったと言う事は、まさか神絡みですか!」


 かつて神と争った事のあるウコンが焦る、今は味方だが彼女は神々が苦手だった。


 「神様の思し召し、谷町からの呼び出しかね?」


 お園さんが状況から考えれる事態を予測してみた。


 「う~ん? きっと、キジ―達にとって大事な用件が出来たんだよ♪」


 何故かキジーは前向きだった。


 「キジ―の言う通り、前向きに参りましょう♪」


 アカネもキジーの言葉に同意する。


 「私達なら、何とかなる気がします♪」


 チグサも何処か気分が浮いていた。


 「ウキ~? 皆さん、神々は気まぐれな存在ですからね? 油断は駄目ですよ」


 ウコンは自分の経験から、皆に警告する。


 「……うん、ウコンはありがとう♪ 浮かれすぎず、気を引き締めて行くよ」


 太郎はウコンの言葉に同意して、自分の心を落ち着かせた。


 やがて、牛車が止まったのでお園さんを除き太郎達は牛車から降りる。

 そして、周囲を見回した。


 「ウコンと出会った黄猿山のような岩山ですな、足元は石だらけなのでご注意を」


 アカネが場所の感想を述べる。


 「……皆、固まろう! ここは俺が知っている場所に似ている!」


 太郎がキリッとした目つきになり、仲間達を呼びよせる。


 「た、大将? いきなり真面目なお顔になって一体ここは?」


 ウコンが戦いの時のように真面目な顔の太郎に驚く。


 「ご主人様、ブレイブシフトはした方が良いですか?」


 チグサが太郎に尋ねて来た。


 「うん、それはまだで」


 太郎は崖の上を見つめた、ここが採石場のような場所なら崖の上から誰かが来る。


 地球でヒーローを目指していた太郎にとって、採石場は戦場であり特訓場でお馴染みであった。


 「……太郎様、素敵です♪」


 アカネは太郎の態度に惚れ直していた。


 「……やや? 大将、崖の上を!」


 ウコンが崖の上を指すと、天が曇り雷が落ちる。


 「あの方は、ガンテツ様?」


 チグサが落雷と同時に現れた人物の名を叫ぶ!


 「神様のおっちゃんだよ!」


 キジ―もガンテツを見て叫んだ。


 「がっはっは♪ 坊主共、悪いが用事があって呼びださせてもらった♪」


 ガンテツが豪快に笑いながら叫ぶ。


 「お久しぶりで~す! どう言うご用件ですか~?」


 太郎がガンテツに向けて叫ぶと、ガンテツがジャンプして近づいてきた。


 「おう♪ 坊主達に朗報だ、坊主ならわかるとヤチヨから言われてるがお前達に巨大ロボを与える♪」


 ガンテツが笑いながら語った。


 「ええ! マジで♪ 運が良いぜ、やった~~~~っ♪」


 太郎はガンテツの言葉に大喜びした、戦隊と言えば巨大ロボット。


 巨大ロボットと言えば、ヒーローのステータスとも言える代物であり王侯貴族が白を与えられるのと同じ位嬉しい出来事であった。


 「……ご主人様、凄く嬉しそう♪」


 喜ぶ太郎を微笑ましく見つめるチグサ。


 「ボスが嬉しいとキジ―も嬉しいよ♪」


 キジ―はわかってははいないが、太郎が喜んでいる事に喜んでいた。


 「喜ぶ太郎様の笑顔、太陽のようです♪」


 アカネは恋する乙女モードになっていた。


 「ウキッ? ロ、ロボってもしかして! あの、でっかい武装した巨人ですか?」


 ウコンは身をかがめて震え出した、神々との喧嘩でロボが出て来た時の事を思い出したようだ。


 「おお、そう言えばヤチヨがウコンと喧嘩した時も使ったのう?」


 ガンテツが、トラウマでブルブルと震えているウコンを見て思い出した。


 「そう言えば、どんなロボなんです? やっぱり、合体とかできるんですか♪」


 太郎は自分達のロボットがどんな物か気になっていた。


 「ほっほっほ♪ 坊主、焦るでない♪ これから説明してやるから♪」


 ガンテツがはしゃぐ太郎を宥める。


 「神々での話し合いの結果、坊主達がロボに変化する術を開発したのでそれをこれから修行して身に付けてもらう♪」


 ガンテツがコンセプトを語った。


 「おお、何か格好良さそう♪ 俺、頑張って身に付けます♪」


 太郎が気合を入れて叫ぶ。


 「……ふむ、変化の術ならば乗り物の置き場などに困りませんな♪」


 アカネが大まかにロボットについて、正気に戻ったウコンから教わった上でガンテツの言葉に答えた。


 「なるほど、新しい変化の術と言う事ですねがんばります!」


 チグサは知識はないがガンテツの言葉をすんなりと受け入れた。


 「キジー、これでも読み書き算盤と勉強は得意だから頑張るよ~♪」


 キジ―も、素直に答えた。


 「ロボにはまだ苦手意識が消えませんが、大将の為ならやってやりますよ!」


 ウコンも太郎の為にロボになる術を覚えると宣言した。


 「よし、みんなやる気になったようだし順番に稽古を付けて行くぞ♪ まずは、ロボシフトの術で変化した後の合体の要となる坊主からだ♪」


 ガンテツが合体の事を考えて、太郎からロボシフトの術を教えると宣言。


 「わかりました、がんばります!」


 太郎も気合を入れる、かくして戦隊達は自身がロボットに変化するロボシフトの術の修行に入ったのであった。


 「まずはブレイブシフトで変身せい、そこからロボシフトじゃ!」


 ガンテツに自分のシフトチェンジャーを改造してもらった太郎、説明を受けて自分お軍配型の変身アイテムを手渡される。


 「はい、ブレイブシフト♪」


 太郎がシロシフターへと変身した。


 「良し、そこからシフトチェンジャーに気力を溜めてロボシフトと叫べ!」


 「うおおお、ロボシフト!」


 ガンテツの指示に従い、シフトチェンジャーに気力を込めるシロシフター。

 気力がフルチャージ状態になった事を示す、シフトチェンジャーが金色の光を放った所で叫んでみた。


 だが、シフトチェンジャーがボンと大爆発をすると同時にシロシフターは全身がカチコチの石の塊と化してしまった。


 「……な、なんじゃと! ぼ、坊主! しっかりせい!」


 ガンテツが叫ぶ、彼にもなぜこうなったのかが理解できなかった。


 「……な、俺! 固まっちまったのか?」


 意識の中、シロシフターから太郎の姿に戻っていた。


 言われた通り行ったのに、何故そうなったのかわからず太郎は混乱した。


 「お前、焦って力を必要以上に入れ過ぎたんだよ? お前、自分の力を知らなすぎるんだよ」


 太郎の前に現れたのは、額から一対の長い金の角を生やした太郎だった。


 「……お前は、俺の力?」


 太郎が自分に問いかける。


 「そう、別人格とかじゃなくお前の力の具現化♪ 地球で、変身し出来なかった頃よく使ってた感情の力だよ♪」


 もう一人の太郎が微笑む。


 「母さんが殺されてから三年か? 辛いよな、こう動けないのって」


 もう一人の太郎が続ける事で太郎は思い出す、地球で母が怪人い殺された時を。


 「ああ、あの連続放火事件で母さんが殺された時みたいに動けず守れず間に合わないなんてもう嫌だ!」


 太郎が想いを叫ぶ、中学の時高熱で寝込んでいた時に悪の組織の怪人による連続放火事件に太郎は巻き込まれた。


 怪人が隣家に火を付け、様子を見に外に出た太郎の母を惨殺し太郎の家にも火を放ったのだ。


 「……すまねえ、お前が寝込んだ熱は力である俺が目覚めたせいだ」


 角の生えた太郎が謝る。


 「だけど、お前が目覚めてくれなかったら俺も死んでたし戦えなかった! これからは、自分の中に力がある事を意識して戦う! だから、この固まった状態を一緒にぶち破ってロボシフトしてくれ!」


 太郎が自分の力に頼む。


 「わかった、一緒にぶち破るぞ太郎!」


 角の生えた太郎と太郎が一つに重なる。


 「ロボシフト!」


 意識の中でもシロシフターになった太郎が、闇の中で拳を振るうと闇の中にひびが入り彼の意識は白い光に包まれた。


 それと同時に、外の世界でも石化したシロシフターが轟音と共に唸りを上げて大爆発を起こした。


 「ぼ、坊主~~っ!」


 更なる異変にガンテツが叫ぶ、大爆発で起きた煙の中から現れたのは通常のシロシフターの手足を肥大化させて胴体を角ばった重装甲にした感じの二メートルほどの白い人型のロボット。


 ロボシフトの術により、ロボシフター形態となったシロシフターであった。


 「ロボシフター、参上! 何かデカくなったけど、ここからまた皆と合体でデカくなるのか~?」


 ウィンウィン関節部から工藤恩を鳴り響かせて自分お体を動かして見せるロボシフター。


 「……ぼ、坊主! まったく、驚かせおるわい」


 ガンテツは胸を撫でおろした。


 「皆と合体の時って、どうなるんだろう? 変形とかするのか、うお! 手足が曲がる! 何か、畳まれるっ!」


 ロボシフターの形態から、更に手足が曲がって大きなメカメメカしい桃のように変形するロボシフター。


 「うお! 何だこれ、手足がまた固まって動けねえ~~~っ!」


 合体時のコアとなる桃モードに変形したせいで、また動かなくなってしまったロボシフター。


 「何ともしまらんのう、これから先が思いやられるわ」


 それを見て呆れるガンテツ、予想外のアクシデントが起きたもののまずはコアとなるシロシフターがロボシフトの術を成功させたのであった。


 「やばい! 一旦戻らないと動けない、シフトオフ!」


 ロボシフターから、シロシフターに戻った太郎は手足が動かせることに安堵する。


 ブレイブシフターズがロボを手に入れる道のりは、まだまだ遠かった。

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