第7話 退治屋ブレイブシフターズ
「さて、これからどうします大将?」
街道を歩きながらを歩きながら、ウコンが太郎に尋ねて来る。
「できれば一度、皆でまともな温泉とか風呂に入りたい!」
太郎は正直な気持ちをぶちまけた。
「お風呂ですか、気持ち良いですねえ♪」
お嬢様育ちのチグサが同意する。
「……湯ですか、この間の村にはありませんでしたね」
アカネが芋煮をした村を思い出す、結局あの後で太郎達は夜の内に村を出た。
あの村の中に太郎達が泊まれる場所がなかったのと、村人に寝込みを襲われるのを警戒してだ。
「ならキジ―が飛んで、温泉でも探そうか?」
キジ―が魅力的な提案をする。
「いやいや、風呂じゃなくて私達の次の行き先ですよ大将?」
ウコンがツッコミを入れる。
取り敢えず道からどいて、脇の草むらに集う一同。
「敵については、頭目と幹部の名前しかわからなかったんだよな」
太郎が、ワルジーの悍ましい研究資料の中から見つけたブラックテイルの情報。
それは、ワルジーの恨み言日記に書いてあった名前のみであった。
「時計兎、帽子屋。卵男に笑い猫が幹部で頭目が女王と五人ですね」
チグサが瞳に憎しみを燃やす。
「敵の城も不明、太郎様は神域のようなどこかの異界に隠されてるとお考えです」
アカネが太郎と話した事を述べる。
「本当、隠れてる悪党を探すのって面倒くさい!」
キジ―の言葉に皆頷いた。
「わからない事が多いと、こちらの動きようもないですよ?」
ウコンの悩みはそこだった、できればさっさと倒したい気分であった。
「まあ、あっちもこちらが狙ってるのはわからないだろう? そこが狙いだ♪」
太郎が笑顔で仲間に語りかける。
「なるほど、だから諸国を巡り関係の無い妖魔退治をするのですね♪」
アカネが何かに気付く。
「私達も、相手を騙しながらその影を探して潰すって事でしょうか?」
チグサも太郎の意図に気付いた。
「表向きには、退治屋として世直しや人助けをしつつ敵の影を探るですか?」
ウコンも狙いに気付くが面倒臭げな顔をして太郎を見つめた。
「相手を騙してやっつけるんだねボス♪ 楽しそう♪」
キジ―がいたずらっ子な笑みを浮かべる。
「まあ、そう言う事だ♪ と言うわけで皆、芝居を打ちながら退治屋をやろう♪」
太郎が仲間達に提案する。
「ふ~む、それで行きましょう考える事は多いですがね?」
ウコンが妖術で眼鏡をかけたOLみたいな姿になり計算を始める。
かくして、異世界戦隊ブレイブシフターズの世を忍ぶ仮の姿として退治屋仕事の支度が始まった。
「今度は、宿場町かな? 宿はわからないが風呂と飯は欲しい」
太郎達が辿り着いたのは山間の宿場町であった、 街道を挟んで通りの左右に店が並ぶだけの街並みではあったがそこそこ旅人達で賑わっていた。
「大将、ここは妖魔感知の鐘はありません♪」
ウコンが術で探った結果、妖魔連れでも行けると判明した。
「私、最初から犬になります!」
チグサは意を決して、子犬の姿へと変化して太郎に抱きかかえられた。
「チグサ、い~な~♪」
キジ―がチグサを羨ましがった。
「それでは、一休みと参りましょうか?」
アカネが呟き一行は宿場町に入った、入ってすぐに銭湯は見つかった。
「はい、男二人に女二人に犬一匹ね? 支払いはお先で」
番台の店員が事務的に処理する、太郎とアカネは男湯へウコンとキジ―とチグサは女湯に別れて入浴した。
「いや~、貸し切り状態で助かりましたな~♪ 眼福、眼福♪」
アカネは幸せそうに微笑んだ。
「俺は、正直ドキドキだったよ!」
太郎は恥ずかしさで、顔が赤くなっていた。
「アカネ先輩、羨ましい! 私も男に化けてれば!」
ウコンが失敗したと悔しがる。
「今度はキジ―と一緒に入ろうね、ボス♪」
キジ―は何も気にしていなかった。
「ワンワン♪」
再び太郎に抱きかかえられた子犬に化けた状態のチグサは、何を言っているのかわからなかった。
風呂を済ませた一行は、素材屋へと向かった。
「いらっしゃい、見た所退治屋さんっぽいけれど買取かい?」
入った素材屋の店主の中年男性が一行を、退治屋だろうと見て聞いて来た。
「まあ、そんな所です♪ 買取をお願いします♪」
太郎がシフトチェンジャーから、ドサドサと倒した妖魔の骨やら臓物やらを出して見せた。
「ひいっ! な、生は新鮮すぎるだろ! 臓物は薬壺に漬けたのを出してくれ!」
店主がビビりながら何とか店の奥へと持って行き、金といくつかの薬入りの容器を持ってくる。
「ほらよ、店の掃除代と臓物何かの薬壺代込みで銭はこれだけだ!」
店主が素材の代金と、入れ物をくれた。
「あ、ありがとうございます」
太郎は申し訳なさそうに礼を言った。
「後ろのお仲間も、この坊ちゃんに色々教えておいて下さいよ?」
店主に文句を言われ頭を下げ、一行は素材屋を出て行った。
「ウッキ~♪ お金も入りましたし、ごちそうでも行きませんか大将♪」
ウコンが手に入った金の小判を見てはしゃぐ。
「あれ、お金が光り出したんだけど!」
太郎が驚くと、小判が光って宙に浮かび上がり光の粒となって弾けて全員のシフトチェンジャーに金等に吸い込まれた。
「ふむ、稼ぎは皆で分配せよとの思し召しでしょうなあ」
ヤチヨの仕業だろうと感心するアカネ。
チグサもワンワンと同意らしい発言をした。
「おう、儲けるのは難しいですねえ? 大将、増やすなら私に一口乗りません♪」
ウコンが太郎に誘いを持ちかけた。
「駄目だよウコン、そう言うのは自分の稼ぎでしなきゃ!」
キジ―が真面目な顔でウコンに注意した。
「……う、家のパーティーが金銭管理はきちんとしていて良かった」
太郎は仲間内で金銭トラブルが起きなくて安堵した。
ひとまずの金の割り振りが終われば飯だと、一行は騒がしい飯屋と静かな飯屋を見比べて静かな方の飯屋へと入った。
「なあお前、知ってるか? この先の山の中で、妖魔が出るって?」
「うんや、知らねえ? どんな妖魔だ?」
「それがなあ、山の中さ歩いてたら突然明かりがついて屋敷があってな?」
と、店内で聞こえてくるのは、旅人の話し声。
どうやら旅人達は、道中で聞いた妖魔の噂をしているようだった。
「運が良いな、今夜の宿はそこにしようか♪」
太郎が安い漬物と握り飯を食いながら、仲間達に提案する。
「良いですな、宿場の宿より居心地がよさそうです♪」
アカネが同意した。
「妖魔も退治出来て、宿も素材も取れれば一石二鳥ですね♪」
ウコンも笑顔で同意する。
「それじゃあ、ブレイブシフターズの出番だねボス♪」
キジ―が笑顔でサムズアップをした。
飯屋での軽食と情報収集を終えた一行は、皆でウコンの雲に乗り妖魔の潜む山へと降り立った。
「おや、旅のお方ですかな?」
太郎達が降り立つと、周囲に濃い霧が立ち込めて彼らを包みこむ。
そんな霧の中から、提灯をもった使用人風の青白い肌の髷を結った男が現れる。
「そうだが、あなたはどなたですか?」
太郎が男に尋ねた。
「私はこの先のお屋敷で奥方様にお仕えしておりまして、皆様のようなお方をご案内するようにと申しつけられております」
男の方は、太郎に胡散臭い笑みを浮かべて答える。
「かたじけない、では皆でご厄介になろうと思う」
太郎はそう言うと仲間達と、怪しい男について行った。
男に案内されて付いた場所は、山の中にはありえない立派な御殿であった。
御殿の門が開き、中からは十二単を纏った美しい黒髪の女性が現れて固まった。
「ほう? 私達の力に固まってますね大将♪」
ウコンが獲物を見つけたとばかりに凶悪な笑みを浮かべる。
「ボス、こいつから人間の血の匂いがするよ! ギルティだね♪」
キジ―が笑顔でジャッジした。
「狐の臭いがします、人を食べた妖魔はご飯にせず素材にしましょう♪」
チグサが笑顔で苦無を構える。
「では殿、下知を♪」
アカネが笑顔で太郎に問いかける。
「良し♪ 皆、ブレイブシフト!」
太郎の叫びと同時に全員が変身した。
「ば、馬鹿! こいつら皆大妖魔と退治屋じゃないか!」
固まっていた女が慌てだす、だが遅かった。
「我ら退治屋、異界戦隊ブレイブシフターズ! さあ、退治の時間だ♪」
シロシフターが軍配を振ると同時に、何処からか武装した狐達が襲って来た。
「ふん、カナボウファイアー!」
アカシフターが金棒から、真っ赤な炎を噴き出して狐達の動きを止める。
「……狐の皮は、良い素材♪ クナイスラッシュ!」
アオシフターが素早く動いて、手下の狐達を切って行く。
「アカ! 私達の今日の宿なんだから、燃やしちゃ駄目! エアショットだよ!」
ミドシフターが、空気弾を発射して消火して行く。
「おのれ! あんたら妖魔じゃないか!」
狐の女が、薙刀を振るってキシフターに突っかかる!
「はん♪ 私は、今後はお金の為に人間は大事にするって決めたんだよ♪」
キシフターが熊手で薙刀を受けて、狐をからかう。
「うん、理由はあれだけどありがたいよ♪」
シロシフターが、男に化けていた狐とチャンバラをしながら叫ぶ。
「人間に毒されてるんじゃないよ、恥知らず!」
狐の女がキシフターに叫び、口から紫色の瘴気を吐き出す。
「人間の男に惚れたら世界が変わったのさ♪ 息が臭いよ! クマデスパーク!」
キシフターはどこ吹く風と、熊手から電撃を流して狐女を倒した。
「お、奥方様! お、おのれ~!」
主人を殺された男の狐が激昂する。
「悪いが、退治させてもらう! グンバイスマッシュ!」
シロシフターが狐男の刀を弾き飛ばしてから、シフトチェンジャーを思い切り振り下ろして叩き潰した。
「退治は終わったが、御殿は消えてしまったな」
戦いが終わって、変身を解いた太郎が見たのは狐達の大量の骸と人の頭蓋骨の山が転がる野原であった。
「……殺された人達は埋めてあげましょう、ご主人様」
チグサが人骨を見て憐れむ。
「あらら、今回も野宿ですかねこりゃ?」
ウコンが溜息を吐く。
「まあ、昼間は湯に浸かれただけで良しとしましょう♪」
アカネは銭湯での事を思い出して微笑みながら、チグサを手伝う事にした。
骨の弔いを終えて次の日、狐の骸も素材屋で換金したブレイブシフターズは宿場町を立ち去り旅を再開したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます