第二章:ブラックテイルの影編
第6話 勇者のお仕事
「ボス~? 本当に人助けとかするの?」
新たに仲間となったキジーが太郎に尋ねる。
「私は太郎様の御心に沿います♪」
アカネが笑顔で宣言する。
「私は、元人間ですから複雑ですけど酷い扱いを受けても頑張ります」
チグサが意を決した表情で告げる。
道中で通り過ぎた小さな宿場町で、宿に人外お断りと拒絶されたショックが彼女には尾を引いていた。
「正直、大将以外の人間はあまり興味がないでっす♪」
ウコンもはっきりと、自分の気持ちを言い切った。
「キジ―も、正直に言ってボス以外の人間は嫌いかな♪」
キジ―も人間へのネガティブ発言をする。
「……そうか、気持ちは仕方ないが人間じゃなくて俺に力を貸してくれ」
人間ですら、人間同士で好きだ嫌いだと争うのは太郎も知っている。
だが、これからこの世界の人達とも関わる必要がある以上は自分達と人々との間でトラブルを起こすのは回避したかった。
「うん、キジー♪ ボスやファミリーの皆の為に頑張る♪」
キジ―がそう言って同意した。
「本当に人間も誰もピンキリ過ぎですよ、まあ大将の為なら♪」
ウコンも太郎の為にと納得する。
「ブラックテイル打倒の為なら、ある程度は耐えます」
チグサが語る。
「前の戦争の件もあり業腹ですが、こちらから歩み寄ってあげましょう」
アカネもそう言って自分を納得させる。
そうして、ブレイブシフターズ達は街道を進み野を越えてこれまでは避けて来ていたちゃんと機能している人間の村へと向かった。
「あれ? あの村は何か周囲を壁で囲ってるな、見張り櫓もある」
太郎が立ち止まって村の外観を見てみる、そこは周囲を木の壁で囲っていた。
「私が犬になって、偵察をいたしましょうか?」
チグサが太郎に提案する。
「いや、ここは全員纏まった方が良いかも?」
太郎がその提案を止めて思案する。
「大将、ヤバいです! あの見張り櫓の鐘に妖魔探知機能付いてます!」
ウコンが遠視の術でやぐらを確認して焦った。
それと同時に櫓の鐘が自動的に警鐘を鳴らし出す。
「妖魔じゃ~~っ! 妖魔が出たぞ~~~っ!」
「出おったな! やっちまえ!」
「権兵衛どんの仇じゃ~~っ!」
鐘の音と共に、村の中から槍や鍬で武装した農民達が飛び出してきた!
「太郎様、下知を♪」
アカネが笑顔で太郎に指示を乞う。
「わかった、皆殺さずにやっつけろ!」
太郎が命じる。
「ヒャッハ~♪ 大将のお許しが出ましたよ~♪」
ウコンが熊手の先を帯電させて、かなり弱めた雷を農民達へ向けて放出する。
「ヘイヘイ悪いヒューマン共、ブレイブシフターズに跪け♪」
キジ―がパンパン銃から弱めの風圧を発射する。
「アカネとチグサは俺の直衛、金棒や苦無はヤバいし」
太郎の言葉に二人は微笑んで従った。
数刻後、ブレイブシフターズ達は村の制圧を完了してしまった。
「……こ、降参します! い、命だけはお助け下さい!」
「
村の中心に全員集まり正座した農民達が土下座で太郎に命乞いをする。
「ああ? 家の大将が妖魔使い? 聞き捨てなりませんねえ?」
妖術で眼鏡をかけたウコンがキリリと眼鏡を光らせる。
「おいヒューマン? キジ―達の愛するボスに対して、何て事言いやがる!」
キジ―がキレる。
わかっていない太郎に、チグサが耳打ちで妖魔使いと言う悪人の存在を教えた。
「待った、二人とも! 俺の為に怒ってくれてありがとう♪ 俺達は、そっちの言う悪い妖魔使いでも悪い妖魔でもないから」
太郎がウコンとキジ―を宥めると、二人は笑顔になる。
「こちらにおわす桃園太郎様は、新たなオーガの王にして当代の変身勇者! 人助けに世直しに悪党退治に怪物討伐と勇者修行の旅の道中である! 控えおろう!」
アカネが時代劇の従者の如く叫べば農民達は平伏した。
「……と言うわけで、村長さん? 襲われたから迎え撃ったけど、俺達は敵じゃないし何か退治して欲しい悪さする奴がいるんだよね?」
太郎が村長に尋ねた。
「……ははっ! 左様でございます勇者様、実はこの村は度々あちらの山を根城にする妖魔共に襲われておりまして作物を奪われたりと被害にあっております」
村長が村の状況を語り出す。
「わかった、あんた達は運が良い♪ 俺達がその山の妖魔を退治するぜ♪」
太郎が妖魔退治を引き受ける。
「では、ウコンさんは村の方々の手当てを♪」
アカネがウコンに指示を出す。
「え~? こいつらのけがを治して、また襲われるのは嫌ですよ?」
ウコンが村人の手当てを渋る。
「大丈夫ですウコンさん、そんな恩知らずは私が容赦しません!」
大人しかったチグサが、頭部を獣化して凶悪な表情で牙を開いて見せる。
「お前ら、ボスの優しさを踏みにじると私達が怖いからな?」
キジ―が最後に脅かすと、村人達はブンブンと首を縦に振った。
「……悲しいけど世の中、思いを通すには力を示して行かないといけないのか?」
太郎は溜息をついた、太郎としては不本意だが村人達をわからせ場を収めた。
ブレイブシフターズは、自分達が倒した村人達をウコンの術で手当てしてから妖魔達の住む山へと向かった。
そして、件の山の麓に辿り着いた一行は早速ブレイブシフトで変身した。
「ブモ~~~~! 妙な奴らめ、この山に何の用だ~~~?」
ブレイブシフターズの前に現れたのは。黒い牛の頭を持つち質素な着物を着た妖魔だった。
「我ら異世界戦隊ブレイブシフターズ、貴様が村を襲う妖魔か?」
シロシフターが牛の妖魔に尋ねる。
「あ~~~っ! あんた、もしかして
キシフターが妖魔を見て叫ぶ、知り合いらしい。
「知り合いでしょうか、殿?」
アカシフターが首をかしげる。
牛王の方は、キシフターの声を聞いて震え出した。
「……ぶも! ま、まさか黄色い仮面のお前はウコンか? 封印はどうした!」
牛王が、巨大な鉈を虚空から取り出して中段に構えるも明らかに動揺していた。
「そっか~♪ まだ悪さしてたんだ、じゃあ容赦しなくて良いな♪」
キシフターが帯電させた熊手を構えて突っこみ、容赦なく牛王をぶっ叩く・
「ぎゃ~~~! た、助けてくれ!」
抵抗空しく鉈を落として電撃を浴びる牛王。
「皆、こいつは牛が変じた奴だから食えますよ~♪」
キシフターが叫ぶ。
「ヒャッハ~、肉だ~~~♪」
ミドシフターも突っこみ、銃を撃つ。
「では、鍋にして村人達に振舞いましょう♪」
アカシフターも仕留めに加わる。
「ん、この獣の臭い? ご主人様、他の妖魔も来ます!」
アオシフターが感知する。
「よし、それは頼んだ!」
シロシフターが頼むとアオシフターは駆け出す。
「あれ? アオはどうしたんだ」
ミドシフターが抜けてアオシフターを追いかける。
「鹿狩りですよ、鹿の妖魔の群れが来ます♪
アオシフターが無数の青い子犬形態に分裂して現れた鹿の妖魔達の首に噛み付いて行く。
「皆~♪ 鹿の妖魔も出たよ~~♪ 肉の祭りだ~~~♪」
ミドシフターがが叫び、空を飛んで射撃して行く。
「よし皆、なるべく山を荒らさずに敵を倒そう!」
シロシフターも鹿の妖魔退治に加わる、そうしてブレイブシフターズにより妖魔達は制圧されたのであった。
「……ふむ、なるほど~? 私が封印されてから、この山を根城にあの鹿達を使って人間の村に悪さをしていたと?」
ウコンがふん縛った牛王を尋問する。
「そ、そうだ! 伝説の大妖魔である、あんたに喧嘩を売ったのは悪かった! 勘弁してくれ!」
牛王が命乞いをする。
「駄目だ、今まで村の作物荒らしてきた分お前が村人達の糧になれ!」
太郎がシフトチェンジャーで、牛王の頭を殴り止めを刺す。
「……おお、勇者様! そ、その牛の妖魔です!」
村に戻った太郎達を出迎えた村長が、アカネが担いでいる牛王の骸を見て叫ぶ。
「じゃあ、他にも鹿の妖魔の骸もあるんでどうぞ♪」
太郎が言うと、仲間達が鹿の妖魔の骸をドサっと放り出す。
「見たかヒューマン共♪ これがブレイブシフターズの力だ♪」
キジ―が胸を張って自慢する。
「それじゃあ、こいつらは譲るのでそちらで勝手に加工して下さい♪」
ウコンが告げる。
「……よ、宜しいのですか勇者様? このような獲物を沢山いただいても!」
村長がウコンの言葉に驚く。
「はい、俺達も手伝いますので料理をしたら食わせてくれれば結構です♪」
太郎が答えると、村長は土下座をして礼を言った。
「あ、ありがとうございました! では早速、村一同で支度いたします!」
村長が村全体に、宴の宣言を叫び村人達を集める。
そして、ブレイブシフターズと村人達で妖魔の肉の精肉祭りが始まった。
「皆の者、勇者様達を讃える祭りじゃ~~~!」
アカネの調理指導と村人の監視の下、術を使い出来た肉を巨大な鍋で煮込む。
「熊鍋に告ぐオーガの伝統料理、
太郎の隣に寄り添い芋煮の入ったお椀を差し出すアカネ。
「……お、おう? 俺の故郷にも、同じ料理があるんで驚いた」
太郎は、東北のご当地グルメを異世界で食えるとは思わず驚いていた。
「大将、私も食べさせ合いっこしましょう♪」
ウコンもお椀を持って太郎の元へとやって来る。
「皆さん、考える事は同じですね♪」
チグサも同様に芋煮を持ってやって来た。
「ボス~♪ キジ―は、ボスの膝の上で食べさせて欲しいよ♪」
キジ―も最後にやって来る。
その光景を見た村長は驚いた。
「ゆ、勇者殿は本当にそのお共の方々と絆を結ばれてるのですか?」
村長は、自分の見ている光景が信じられなかった。
「我らは皆、太郎様の妻ですので♪」
アカネが笑顔で村長にドスを利かせる。
「そうそう、私達から大将に惚れこんでるんです!」
ウコンも同意する。
「私も、最初はご恩からですがその内にご主人様が好きになりました」
チグサも語る。
「キジ―も、ボスの事が好きだよ♪ さあ、ファミリーの時間だから話は後で!」
キジ―が手を羽にして村長に向けて振る。
「な、何と奥方様達でしたか! 失礼いたしました!」
村長は自分が虎の尾を踏みかけた事に気付いて去って行った。
「いや、お前らなあ? まあ、今回もありがとう♪」
太郎は仲間達に礼を言いつつ仲間達にサービスをした。
結局、ブラックテイルの情報は村では掴めなかったが太郎は少しだけこの世界の人間の暮らしと事情を知ったのであった。
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