第8話
人数が増えて戦闘は更に激化していく──エリック王子様の弓兵のおかげで、レッドドラゴンの羽は破れ、飛べなくなった様だ。致命傷とまではいかなくても、傷も段々と増えてきている──だけど、こっちの被害も甚大で半数以上が手当てを受けている状態。
早く戦いを終わらせないと、事態は更に悪化してしまいますわ……でも、どうすれば良いですの?
私はレッドドラゴンをよく観察する──ガランさんが付けた頭の大きな傷……どうにか攻撃できないかしら?
皆もあそこを狙っているのは分かるけど、動くし何より高くて攻撃できていない。あ……あれなら、どうにかなりそうですわ。でも……。
「おぅ、嬢ちゃん。どうかしたのか?」
ガランさんが私の横に並び、声を掛けてくる。
「負傷者が増えてきましたし、そろそろドラゴンの頭をカチ割りたいと思っていた所ですわ」
「ほぅ……そりゃ良い。作戦はあるのか?」
「えぇ、ありますわよ。でも、失敗した時に大きな被害が出てしまいそうで……」
ガランさんは大きくてゴツゴツした手を私の肩に乗せる。
「やる前から失敗する事なんて考えるな。成功するものも成功しなくなるぞ」
私はその言葉にハッとさせられる。確かにフィギュアスケートの大会の時に失敗した後の事を考えていたら、出来ていた事も出来なくなった。
「ありがとうございます!」
「あぁ。さぁ、作戦を聞かせてくれ」
「はい!」
私はガランさんに作戦を説明する。ガランさんは腕を組みながら黙って聞いていた。
「よし! 囮役は俺がやってやる!」
「お願いしますわ」
私は両手を突き出し、ガランさんの前にアイス・ウォールを作る。いつもの氷の壁じゃなく、魔力を限界まで詰め込み、盾のように持てる取っ手付きの氷の壁だ。
「ちょっと調子に乗って作ってしまいましたが、持てますの?」
「これぐらい平気だ」
ガランさんはそう返事をしてヒョイと、盾を持ち上げる。凄い……さすが一人でレッドドラゴンに傷を負わせるだけあるわね。
「ガランさん、危なくなったら逃げてくださいね」
「おぅ!」
ガランさんは盾を持って、レッドドラゴンの正面に向かって歩き出す──私はレッドドラゴンに気付かれないよう、ヒッソリと右斜め後ろに向かった。
ガランさんは10メートル程、離れた先から「おーい、お前ら退いてろ! 巻き込まれるぞ! ──お前とお前は縄の準備だッ」と、周りの仲間に声を掛けながら、ゆっくりとレッドドラゴンに向かって歩き出す。
レッドドラゴンはガランさんが近づいてくることが怖かったのか、顔を上げ──大きく息を吸い始めた。
よし! ここまでは作戦通りですわ。わたくしは「──アイスバーグッ」と、足元にハーフパイプのような氷山を作る。
レッドドラゴンがガランさんに向かって火炎ブレスを吐き出した瞬間、私はアイス・ブレードで靴の裏にフィギュアスケートの刃を作り、一気に滑り降りた──。
こんなこと現代世界でもやった事がない。だから──不謹慎かもしれませんが、ドキドキして楽しくてよ~ッ!!
私はレッドドラゴンに向かって、思いっきりジャンプをする──空中でアイス・ブレードを解除して──レッドドラゴンの首を跨ぐように何とか着地に成功した。
すぐさま振り落とさらない様に、ドラゴンの首と私の下半身がくっつく様に凍らせて「覚悟しなさいですわ……」
私は両手を振り上げ──レイピアの様に先端が鋭く尖った氷柱の剣を作る。そして「──アイシクル・ソードですわッ!!!」と、レッドドラゴンの頭の傷を目掛けて、思いっきり、ぶっ刺した。
レッドドラゴンは堪らなかったようで、火炎ブレスを中断し、悲鳴を上げる──私を振り落とそうとしているのか、苦しみのあまりなのか、レッドドラゴンは激しく首を上下左右と振り始めた。
私はドラゴンの首にしがみつき、腕以外の首より下を、ドラゴンの首とくっつくように凍らせて、堪える。まだ戦いは終わっていない……振り落とされません事よッ!
「根性の見せどころですわッ!」
私がそう叫ぶと「おい、お前らッ。投げ縄を投げろッ!」と、ガランさんの声が聞こえてくる。
ガランさん、無事だったのね。良かったですわ。胸を撫で下ろしていると、ロープが飛んでくる。ドラゴンの首に掛かり──そうになるがドラゴンがヒョイと顔を逸らしてしまう。
「まだですわ──アイスッ」と、私は直ぐに魔法を繰り出し、縄を凍らせて引き寄せる。そしてタイミングを見計らい、上半身の氷を解除して──首に通した。
「嬢ちゃん、良くやったッ! おい、皆で引っ張るぞ!!」
「おぉッ~!!」
掛け声とともに皆が縄を引っ張る──暴れまわっていたドラゴンの首が……一瞬、ピタッと止まった。ドラゴンはヤバいと思ったようで、大きく息を吸い出す。
「させません事よッ!」
私は両手を振り上げ「頭をカチ割るには、これがやっぱり一番ですわね!」と、氷のハンマーを作り出す。
そして「──アイス・ハンマーッ!!!」と、アイシクル・ソードが突き刺さった所に、力一杯、振り下ろした!
グイっと突き刺さる感覚がしてドラゴンは──火炎ブレスを吐くことなく倒れこんだ。地響きと共に砂ぼこりが舞う──。
私は自分の体に付いた氷を解除すると、ヒョイっとドラゴンの首から下りる。そしてドラゴンの正面に立ち、右手を腰に当てると、足を肩幅ぐらい広げた。
左手を高々と突き上げ、指パッチンと共にドラゴンの頭に付いた魔法を解除する。すると、噴水のごとくドラゴンの血が噴き出した。
「エクセレーント」
「おぉ……!」
皆の歓声が上がりパチパチパチ……と拍手が聞こえる。私は長い戦いの末、ドラゴンに勝利をしたのだッ!
私が皆の方に体を向けると、正面から会いたくなかった男が、武装した町人を数人、引き連れ、歩いて来ていた。私は構わず皆の方へと向かって歩き始め、黙って通り過ぎようとする──。
「メリル、待ちなさい」
お父様が呼び止めてくるので、私は仕方なく足を止めた。
「今頃、何ですの? 遅すぎて逃げ出したのかと思いましたわ」
「兵を集めるのに手間取ったんだ。すまない」
「それは皆の信頼が、薄いじゃないかしら?」
お父様はぐぅの音もでないのか、黙り込む──。
「そうかもしれんな……メリル、追放しておいてこんなことを言うのは何だが──戻ってこないか?」
その返答はもう決まっている……答えは「遠慮させて頂きますわッ! その言葉に何のメリットも感じませんもの!」
私はそう吐き捨て、お父様を置き去りにして歩き始める──皆の笑顔に迎えられ、私は大きく手を振った。
「さぁ、皆ッ! 今日は料理の美味しいお店を貸し切って、盛大にパーティを開きますわよッ! もちろん、全て私の奢りですわッ!!」
「マジか!? ヤッホー!!!」
こうして私達はパーティを楽しんだ。おかげで王様から貰ったゴールドはスッカラカンになってしまいましたが、構いませんわ! また一から稼げば宜しいのだから……。
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