第6話

 オーチェンスターから南にある森を抜けると、大草原が広がっている。そこを通らなければイニティウムにはいけない。私は草原の中心でモンスター達を待ち構える──。


「おー、やっぱり居たか」


 突然、後ろから聞き覚えのある男の声が聞こえ、後ろを振り向く。


「アレン!」


 アレンは私に近づき、立ち止まると、人差し指で私のオデコをコツンっと突く。私は両手でオデコを押さえながら「何ですの!?」


「一人でモンスターの大群を相手にするつもりか? 危ないだろ。俺が手伝ってやるよ」

「え……良いですの?」

「前に助けてやるって言っただろ?」

「──ありがとうですの」


 アレンには正直に言えないけど、どれだけの大群が押し寄せてくるのか分からなくて、心細かっただけに助かりましたわ。


 そう思っていると更に正面から「メリル様」と、私を呼ぶ声が聞こえてくる。視線を向けると何と! エリック王子様と大きな木箱を背負った商人の青年が、こちらに向かって歩いて来ていた。


「エリック王子様、どうしてここにいらっしゃるの!?」

「恥ずかしい話なのですが……貴女と離れてからも貴方の事が気になってしまい、色々と話を聞いていたら、貴女の出身や状況が分かってきて……居ても立っても居られず、城から抜け出して来てしまいました」

「まぁ……そうだったのですの」


 商人の青年は木箱をドカッと勢いよく地面に下ろすと「私は王子殿下から話を聞いて来ました。戦いに使える物をたっぷり持って来たので使ってください!」


「お二方とも、ありがとうございますの。でも、危なくてよ?」

「大丈夫です。覚悟の上で来ていますので」


 エリック王子様はそう言って、青年はコクリと頷く。


「分かりました……では宜しくお願いしますわ」

「はい!」


 ※※※


 それから数分して、モンスターの大群が森の方から現れる。隣町が襲われた時なんて比べ物にならない程だ。


 私の左側に居るアレンは、一歩前に出ながら鞘から剣を抜くと「来やがったな……大活躍してメリルに出来るところを見せてやるぜ!」


 続いて右側に居るエリック王子が、一歩前に出て、鞘から剣を抜き「いや、俺が大活躍してメリル様に良い所を見せてやる!」


 最後に後ろに居る商人の青年が「いや、俺がメリルお嬢様をサポートして守って見せるッ!」


 これだけのモンスターの大群を見ても、三人ともやる気満々ですわね。まったく……。


「どの殿方も、私を好きなようで宜しくてよッ! でも……」と私は言って、アレンとエリック王子より更に前に出る。


「誰よりも活躍するのは、私でしてよ!」と言うと、腰に手を当て「お~……ほっほっほっほ」と、高笑いをした。


「えぇ~~~ッ!!!」


 三人同時に驚きの声を上げものだから、私は思わず笑みが零れる。


「良い反応ですわね~……さぁ、みんな行きますわよ!」

「おぅ!」

「はい!」


 私とエリック王子様、そしてアレンはモンスターの大群に向かって駆けだす──。


「エリック王子様、アレン。私が先に行くわ。あなた達は巻き込まれない様に止まっていて」

「何をするんだ?」と、アレンは不思議そうに首を傾げ、立ち止まる。


「見てのお楽しみですわ!」

「お気をつけて」

「はい!」


 ゴーレムとの戦いで、私は大分、レベルアップした。それに商人の青年が持ってきてくれたマジックウォーターのお蔭で、存分に本気が出せる!


 私は二人より前に出て、両手を地面に向ける。


「行くですわよ~……」


 魔力を両手に集中させ、「──アイス・リンクッ!!」と、一気に解放した。地面があっという間にアイススケートリンクへと変わっていく──。


「すげぇ……何だよこれ」

「美しい……」


 二人の驚きの声が聞こえてくる。だけど──。


「これで満足してもらっては困りますわ。これからが本番ですわよッ!」


 私はマジックウォーターを飲み干すと「アイス・ブレードッ」と、靴の裏にフィギュアスケートの刃を作る。


 そしてモンスターの大群に向かって、滑っていく──モンスターは頭を使っているようで、直ぐには攻撃をせず、私を囲むように移動している。


「おい、メリルッ。何をやってんだ、囲まれるぞッ!!」


 アレンの心配する声が聞こえてくるが、大丈夫。これも作戦のうちですわ


 ──モンスターが私を完全に包囲しているタイミングで、私はモンスターに掌を向けた状態で、両手を広げる。よしよし、近づいて来ましたわ──。


「今ですわね! 必殺……アイス・トルネードッ!!!」


 私はモンスターの中心でスピンをしながら氷魔法を放出する──すると、モンスター達は、たちまち氷の像と化していった。


 ──そろそろ大丈夫そうね……私は魔法を止め、アレンとエリック王子様が正面に来るようにスピンを止める。そして二人に向かってピースをすると、「エクセレ~ント」


 二人は嬉しそうに笑顔を浮かべ、親指を立てる。私は氷の上を滑り、二人に近づいた。


「エリック王子様、アレン。私は氷の上を滑りながら、こうやってモンスターを凍らせいきますわ。凍らせた後はリンクは解除するので、二人は止めを刺していって下さる?」

「はい」

「了解」


 ──こうして私達は連携してモンスターをバッタバッタと倒していく。モンスターのレベルは高くなかったので、直ぐに数えられる程度まで減らすことが出来た。問題は目の前の巨大なレッドドラゴンだけだ。


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