第4話

 とりあえず仕事を探そうと城下町に続く森を歩いていると、物凄い地響きが聞こえてくる。


「な、何事ですの!?」


 私は直ぐに地響きがした方へと向かった──すると、兜が脱げた金髪でサラサラショートのイケメンの兵士が、地面に膝を付いているのが目に入った。後ろには二人の鎧を着た男が倒れている。


 そして正面には──家の高さぐらいありそうな岩の塊、ゴーレムが立っていた。きっと地響きの正体はこいつに違いない。


「いけないですわッ」


 ゴーレムが腕を振り上げ、イケメンの兵士を攻撃しようとしている。私は「アイス・ウォール」と、魔法を繰り出し、騎士の前に氷の壁を作った。


 氷の壁は簡単に壊され、飛び散る。だが兵士は無事で、何とか自分の力で立ち上がっていた。私は近づき「大丈夫ですの?」と声を掛ける。


「あぁ、何とか……」

「私が時間を稼ぎますわ。あなたは逃げて下さいませ」

「いや、それは出来ない。後ろの二人は気絶しているだけだ。殺されてしまうかもしれない」

「では退治するのを手伝いますわ」


 兵士は両手で剣を握り「助かる」


 とは言ったものの……こんな大きいモンスター、どうしましょうか。とりあえず「──アイス!」と、ゴーレムの腕を狙って魔法を放つ。


 ゴーレムの腕は凍った──が、直ぐに砕かれてしまった。


「やっぱり……」


 アイス・ウォールを簡単に壊してしまうぐらいの怪力ですもの、当然よね。私はゴーレムの攻撃を避けながら、ゴーレムの状態を確認する。


 ──よく見たら、小さなヒビが入っている所がありますわね。兵士たちの攻撃が効いていなかった訳じゃない? 


 そうだ! ちょっとあれを試してみようかしら!? っと、その前に……。


「あなた、マジック・ウォーターを持ってないですの?」

「私は持っていないですが、仲間の方なら」

「承知しましたわ。──アイス・ロードッ」


 私はゴーレムの足元周辺の地面を凍らせ、時間稼ぎをすると──急いで兵士の所へ向かった。


「ちょっと失礼ですわ」と、言いながら腰に掛けてあった布の袋から、魔力を回復するマジック・ウォーターが入った瓶を取り出した。


 腰に手をあて、青色をした液体をグイグイと飲んでいく──。


「かっ~! スッキリですわッ! さぁ、準備万端ですわよ!」


 ゴーレムが凍った地面に足を取られたようで、豪快に転ぶ。雷が落ちたかのような音が鳴り響き、地震のごとく地面が揺れるが、何とか持ちこたえる。


 私は様子を見ながら、ゴーレムに駆け寄ると、一番酷い左腕のヒビを目掛けて「アイスッ」と、魔法を放った──。凍った直ぐに魔法を解除して、氷状態を解く。


 ──ゴーレムが起き上がるまで、何度も同じことを繰り返していると、イケメン兵士は疑問に思ったのか駆け寄ってきて「何をされているのですか?」と聞いてきた。


「ふふん! 私の読みが正しければ、もうすぐ凄いことが起きますわよ! 見てなさい」

「はぁ……」


 ゴーレムは転んだことに腹を立てたのか、雄叫びを上げると、こちらに向かって突進してくる。


「散るわよ!」

「はい」


 お互い反対方向へと逃げる。ゴーレムは──イケメン兵士の方へと向かった。


「チャンスですわ!」


 私は左の斜め後ろに向かい、左腕を氷魔法で狙う。


「さぁ、ゴーレムちゃん。そろそろ、あなたの腕はフィナーレですわ! ──アイスッ」


 私はまた同じ場所に氷魔法を当て「からの……解除ッ!」


 私が魔法を解除した瞬間、ゴーレムのヒビが悪化していく──そしてついに、ゴーレムの左腕がモゲて、地面に落ちた。


「エクセレ~ント」


 いまの攻撃でヒビは更に悪化して、胸の所まで来ている。こうなれば後は同じことを繰り返すだけですわ!


 ※※※


 大きなダメージを受けたゴーレムは、攻撃力が衰え、動きも鈍くなる──私の魔法でコアが剥き出しになった所を、イケメン兵士が攻撃し、決着はあっという間についた。


 イケメン兵士が剣を鞘にしまい、私に近づく──。


「助かりました。ありがとうございます」

「いえ、当然のことをしたまでですわ」

「ところで、なぜゴーレムの腕は取れたのですか?」

「凍結膨張ですわ」

「え?」


 イケメン兵士は何のことか良く分からない様で首を傾げる。私も詳しくは説明出来なかったので、それ以上は何も話さなかった。


「ま、まぁ……とにかく助かりました。私はこれで城に戻ります。お礼がしたいので付いてきてください」

「はい」


 私達は気が付いた兵士たちと共に、城に向かって歩き出す──。


「それにしても、お美しい戦い方でした」と、イケメン兵士が行き成り、私を褒める。私は両手で口を覆うと「まぁ! 嬉しいですわ」


「──も、もちろん。あなたも、お美しいですよ?」

「あらまぁ……お上手です事!」

「本気で言っているのですよ」

「え……」


 イケメン兵士は頬を赤めて照れくさそうにしている──この人、私に惚れてしまった様ね。どうしましょうですわ!


「──私の父はこの国の王です。たんまりと御礼をさせて貰いますので、楽しみにしていてくださいね」

「え!」


 私はビックリし過ぎて足を止める。


「王子様だったのですの!」


 王子様はゆっくり足を止め、こちらに体を向けると「はい。申し遅れて、すみません。私はこの国の王子様。エリックと申します」


「まぁ……それは失礼しましたわ」

「いえ、とんでもございません」

「王子様、自ら魔物退治とは素晴らしいですわね」


 エリック王子様は照れくさい様で、後頭部に手を当てながら「あ、いえ。私はこれぐらいしか役には立てませんので」


「ご謙遜をなさらなくても……」


 私達はそんな世間話を交わしながら、ゆっくりと城へと向かった──。

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