第3話
襲撃事件は終結し、エリカお嬢様は何とか命を取り留める。話によると町の方も私が頑張った甲斐があって、壊滅状態までは防げたとの事だった。だが、1つ問題が起きる。
自分の部屋に私を呼び出したお父様は、顔を顰めて「メリル、話は聞いた」と言った。
「襲撃事件の事ですの?」
「あぁ……カリムは昨日、メリルが侵略したいと言ったから、メリルのためを思って犯行に及んだと言っていた。他のメイドも、そんな話を聞いたことがあると言っている」
お父様は睨みつけるかのような鋭い目つきで、私をジッと見つめる。
「お前を疑いたくはなかったが、こうなってはお前を疑うしかない。私は父として責任を取り、お前を領土から追放することに決めた」
──追放される事よりも、実の娘を信用してくれなかった事がショックで、開いた口が塞がりませんわ。まぁ──。
「宜しくてよ」
「せめてもの情けだ。食料や金は用意してやる」
「結構ですわ。今までお世話になりました!」
私は深々と頭を下げると、部屋を出る──自分の部屋に向かうことなく、そのまま屋敷を出た。
裸一貫、ぶらり旅ですが……不安というより、どんな冒険が待っているか楽しみでドキドキが止まりません事よ!
※※※
私は港町に行って、道中、モンスター退治の御礼で貰ったゴールドで船に乗り、お父様が治める土地から遠く離れた土地へと移動する。土地が変われば当然、モンスターの強さも変わる。
色違いというだけで、見掛けは全く同じなのに、たった一匹のオークに、私は苦戦を強いられていた。
「アイス!」
オークの足元に魔法を放ち──やっと足を凍らせる。続けざまに魔法を放ち、手……体……頭と凍らせ──全身を凍らせた。
「ふぅ……何とかなりましたわ」と、安心していると、ピキッパキッと、氷にヒビが入り割れていくのが目に入る。
「まずいですわ! アイス・シールドッ」
咄嗟に氷の盾を作り、オークが持っていた槍を防ぐ──が、弾かれた槍が私の肩を貫いた。
「チッ……しくじりましたわ」
私は魔法で槍を凍らせ、氷のナイフで切り離す──そうしている間、何故かオークは呻き声をあげた。
何事ですの!? と、視線を向けると、冒険者のアレンが止めを刺してくれていた。アレンは私に向かってニコッと微笑むと、オークから剣を抜く。
そして近づき「ほら、回復薬」と、回復薬が入った透明の瓶を投げてくる。私は両手で受け取ると「あ、ありがとうですの」
アレンは私の前で立ち止まり「相変わらず、詰めが甘い戦い方してるな」と、からかってくる。カチンときた私は「あまり調子に乗らない方が宜しくてよ?」と返した。
アレンは「はっはっはっ」と、豪快に笑いながら、私に背を向け、森の奥に向かって歩いていく──。
アレンは確か、A級の冒険者。最高ではないけど、凄い冒険者だ。茶色のツンツンヘアーに、切れ長の目……ゲームとかに出てくるような凄いイケメンで、同じぐらいの年齢だから、恥ずかしくなって、ついつい反抗的になってしまう。
そう思いながら見送っていると、アレンは急に立ち止まる。
「──お前はそのままで良いよ。また俺が助けてやるからさ」
「え!? なッ、何ですの、行き成り!?」
アレンは答えることなく、また森の奥に向かって、歩いて行ってしまった。
まったく……本当に何ですの? からかうのもいい加減にして欲しいですわ! でも……アレンの言葉が嬉しくて、内心ちょっとドキドキしてしまいましたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます