第2話

 それから数日後──優雅にティータイムを楽しんでいると、慌てた様子でメイドが部屋に入ってくる。


「メリルお嬢様、大変でございます!」

「どうかしましたの?」と、私は返事をしてティーカップをテーブルに置く。


「隣町が、モンスターの襲撃にあってます!」

「何ですって!」


 私は直ぐに立ち上がり、メイドに近づく──。


「直ぐに応援に向かいますわ! 馬車を用意して」

「でもお嬢様、お逃げになった方が……」

「私は大丈夫ですのよ。早くして」

「わ、わかりました。直ぐに準備いたします」


 ──私はメイドが用意してくれた馬車に乗り、直ぐに隣町に向かった。隣町はエリカお嬢様のお父上が治めている領土だけど、黙ってなんていられない。


 お節介と言われてしまえばそれまでだけど、こちらまで被害が及ぶかもしれないし、何より自分の力が役に立つなら、助けてあげたいですわ。


 私が隣町に着く頃には、隣町は既に半壊していて酷い有様になっていた。青のスライムの他に、色違いのスライムやゴブリン、オーク等、この辺に生息しているモンスターがウヨウヨと徘徊していて町を壊している。


「なによこれ……」


 って、ボサッとしている場合じゃないですわ。早く、町人を助けなくては!


 私は町に広まる火を消したり、モンスターを凍らせたりしながら、奥へと進んでいく──。


 どうも、おかしくてよ……奥に進んでもモンスターを統率しているような知性の高そうなボスが見当たらないですわ。


 ボスが居ないのに、これだけのモンスターが一気に襲撃してくるなんて今まで聞いたことがないし……となると、誰かが仕組んでモンスターを解き放った? ──まさか!!!


 私は直ぐに、この町の領主様が住む屋敷に向かって走り出す──私の考えが正しければ、領主様が危ないですわ!


 屋敷に着くとノックもせずにドアを開け、中に入る。すると「キャーーー!!!」と、女性の叫び声が聞こえてきた。


 目の前に血の付いた剣を持ったカリムの後ろ姿が見える。カリムの前にはエリカお嬢様が立っていたが、鮮血を流しながら倒れてしまった。


「カリム……あなた何をしているの!」

「ちっ……」


 カリムは舌打ちをしてこちらを振り向く。


「思ったより早く、来てしまったのですね」

「これ、全てあなたがやったの!?」

「えぇ、あなたが止めると言うから、“お嬢様の為”を思って、私一人でやりました」

「ふざけないでッ! もう……久しぶりに頭に来ましたわッ!!」


 私は床に掌を向け「アイス・ロードッ」と、魔法を放ち、床を凍らせる。


 カリムは私の魔法の効果範囲を知っている様で、自分の足元を見ながら不気味に微笑んだ。


「クックック……床を凍らせて、私を転ばせようとしたのですか? 残念でしたね」


 後ろを振り向くと、「では、私はあなたが弱った所で、また来ます。そしてあなたにトドメを刺し、英雄となって、この土地の領主になってみせますよ」と言って、奥の部屋の方へと歩き出した。


「逃がさないですわッ!」


 カリムと私の間には走っただけでは追いつかない距離がある。でも大丈夫ですの!


「アイス・ブレードッ!」


 私は両方の靴の裏にフィギュアスケートの刃を作る。そして凍らせた床を一気に滑り出した。


 床を凍らせたのは転ばす為じゃなく、この為ですわッ! ──まず最初にエリカお嬢様に近づき、斬られた部分を凍らせ止血する。


 私は残念ながら回復魔法を使えない。だからせめてこれで時間を稼ぎたい! 


 続いて油断しているカリムの背後に近づき、足元めがけて「アイス・ロードッ!」と、魔法を放つ。


 カリムの足元があっという間に氷の床になり、カリムは豪快にすッ転んだ。私はジャンプをして一気に距離を詰めると──起き上がろうとするカリムの顔を跨いで着地した。


「ヒィィィ……」


 私はビシッ! と、カリムを指さし「逃がさないと言いましたわ」


「お嬢様、どうか命だけは……」

「何をおっしゃってるの? もちろん命は取りませんわ。だけど──」


 私は魔法でカリムの頭を凍らせ、床とくっつける。


「頭を冷やして反省して、この出来事を償いなさいですわ!」

「は、はい……」

「ふぅー……」


 さてと、早く治療薬か治療できる方を探さないと──。


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