出会い編④

 8時20分。大きく開かれた門の中に中学生達が吸い込まれていく。蓮もその中に紛れて学校の敷地に足を踏み入れた。

 今日から新しい学年になるからか、いつもよりも一段と、周りの生徒が晴れやかな笑みをたたえていた。蓮は、その波にすでに乗り遅れている気がして、ふっと目を伏せた。

 どこへ行っても、何をしていても、彼女には居場所がなかった。どう足掻いても、無意識のうちに周りと一線を引いてしまう自分がここに居た。

 逃げ出すことは、許されなかった。

 新しいクラスは、正面玄関に貼り出されている。蓮は、誰とも目を合わせないように、真っ黒な瞳をただ地面に向けて歩いていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る