出会い編③

 蓮が嬉中に行くまでの道のりは、多くの小学生や中学生で賑わう。ほとんどの子が、友達と楽しそうに話しながら登校していく。それが地域の人にとっても、当たり前の姿だった。

 その中に一人、蓮だけが歩道の隅っこでトボトボと歩いている。周りから見た自分が、健全な中学生ではないことを彼女は自覚していた。

 すぐそばを、小学生の男の子達が駆けていく。その時の彼らの笑い声が、蓮はたまらなく不快だった。元々耳が良いせいで、ほんの少しでも大きい音が頭に響くのだ。

 イヤホンをつけて歩きたいというのが本音だが、校則上そうにもいかないのが辛いところだ。

 学生達の話し声、小学生の笑い声が耳の奥でごちゃ混ぜになって、不協和音を奏でる。それでも耐え続けていると、いつの間にか校門のすぐ近くまで来ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る