第7話 賊物


 俺の領地は枯れ果てている。

 草木は育たず、荒野が続く大地。

 前方には魔族の領土があり、後方の街に行くには数日かかる。


 辺境の貧乏貴族。

 それが俺に対する王国の評価。


 しかし、俺の領地に財宝が何もないのか。

 そう問われれば俺はこう答える。

 腐るほど、眠っていると。


 誰も来ない。

 真面な兵も居ない。

 そんな場所。

 だからこそ、この辺りにはあれがある。


「サーベルだけでいいのですか?」


「あぁ、魔法があるからな。それに火薬レベルの武器なら対して戦力にならん」


 カナリアの言葉に答えながら、俺は目的の場所を見る。

 それは洞穴だった。

 この辺りにはこんな穴が幾つもある。


「あ? 何だテメェ」


 穴の仲から熊の様な男が現れる。

 蛮族、山賊、海賊、盗賊。

 そんな連中。細かく何かなんて知る由もない。


 彼らにとっては、ここは天国の様な場所なのだろう。

 この辺りにはこういう連中が数多く住み着いている。


 小型ドローンで偵察し、大体の数を把握は済んでいる。

 だから、狩り入れの時期だろう。


「カナリア、背中は任せるぞ」


「畏まりました」


 俺の手には光学武器であるライトサーベルが握られている。

 熱線で対象を切り裂くこの武器は、理論上どんな刃物よりも切味が良い。

 そして、切味が消耗する事も無い。


 そして、先日開発されたマジックデバイスが使い物になるレベルになっている。


「身体強化付与」


 呟くと同時にマジックデバイスが起動する。

 最速で術式を構築し、俺の身体に効果を付与した。


「何人の家の前で、悠長に喋ってやがる」


「お前こそ、死人が何を囀るか」


 男の顔が上下に別れる。

 最初の一言目を発した時点で、こいつは斬り殺していた。


「行くぞ」


「はっ」


 俺が全面を勢力し、隠れて背中を狙う連中はカナリアが武装で撃ち落とす。

 銃に剣じゃ勝てない。

 カナリアは更に、サーモグラフィ搭載してるから不意打ちは不可能だ。

 殆ど蹂躙だ。


 魔法を使ってくる盗賊も稀にだがいる。

 しかし、やはり魔法では銃に対抗できていない。

 俺くらい魔力があれば別だろうが、普通の魔法じゃやっぱり科学に軍配が上がるな。


 そのまま進むと、敵の数は減って行き首領の部屋まで来た。

 裸の女が何人か床に転がっている。

 お楽しみの最中だったらしい。


「なんだおめぇ、後ろの女を寄こすなら盗賊団に入れてやっても……」


 いい終える前に、男は首から血飛沫を上げて死んだ。


「あぁすまない。俺は聞く価値のありそうな人間の言葉しか聞きたくないんだ。己の価値を俺に提示できなかった自分を恨め」


 そのまま進むと、宝物庫やそれに準ずる部屋があった。


 盗賊というのは随分貯め込んでいる物なのだな。

 食料、女、財宝。

 色々と見つかる。


 武器を振り上げた物は殺し、挑みかかって来た者を殺す。

 今更、殺傷に感じる所は無い。

 それはきっと、俺の前の身体の持ち主の記憶があるからだ。

 残忍な男で、残虐な男で、無能な男だった。


 だが、その精神は確かに俺に影響を与えている。


 己が意に反する者を斬り殺す。

 それが良い事なのか、俺には判断できない。


「心配ありませんよ旦那様。貴方は大丈夫です。私も領民も、貴方を慕っている」


「俺、なんか言ったか?」


「表情が語っておられました」


「……女は応急手当をして車まで運ばせろ。財宝も回収、こいつらの死体は焼き払っておけ」


「畏まりました」


 制圧が終われば、残りは回収だ。

 人員、財宝は車で運ぶ。

 それ以外の不要な物は焼いてしまえばいい。


 あぁ、全くバカな連中だ。

 自分たちの方から逃げ場のない場所に籠ってくれるのだから。


「誰かに剣術を指南されたのですか?」


「いいや、通信教育しかやってない。けどそうだな。こんな辺鄙な星にもそこそこの使い手は居そうなもんだ」


「探しておきましょう」


 近くに居ればいいけどな。

 賊に教わるなんて御免被るぞ。


「次の財源、おっと盗賊の隠れ家に向かうぞ」


「えぇ」

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