第3話 宇宙船統合管理AI
落下した宇宙船、アークプラチナは原型をとどめていた。
しかし、放置していると内部の人工知能が状況把握を開始し、適切な処理を開始するだろう。
まず考えられるのは隠蔽。
ゲームの時、宇宙船が発見されるのは今から3年後だった。
それまでの間、この巨体が見つからない訳が無い。
主人公が見た情報と照らし合わせれば、地中内に潜り隠れていたのだろう。
しかし、目撃者がいる状況で隠れる程、人工知能は馬鹿じゃない。
問題は、敵対を選ぶか友好を選ぶか。
「少し予定が狂ったが、行くか」
この娘を屋敷に連れ帰っている時間は無い。
隠れられると、掘り起こす必要が生まれ、無駄に労力がかかるからな。
「なんですかあれ……?」
「あぁ、あれは……と、お前名前は?」
「領主様、私はリラと申しますです」
あの村の教育レベルだとこれが限界か。
歳は見たところ11、2歳ってとこか?
基本的に従順っぽいし問題は無いか。
「リラ、俺は調査の為あの中に入る。少し外で待っていろ」
「そ、そんな危ないですよ!」
「心配するな、俺は大丈夫だ」
そう言って、俺はリラを地面まで連れて行く。
そのまま見知った宇宙船の扉をノックした。
「俺はこの場所の領主、シェリフ・スタン・アルレイシャである。当機が行った事は俺が国より任せられている土地を破壊する行為である。だが、もしもそちらにやむを得ない事情があるのならこちらも死傷者は居ないのだから譲歩しよう。まずは対話を求めるが、答えて頂けるだろうか?」
この宇宙船アークプラチナに搭載された人工知能はかなり高性能な物だ。
心なんてとっくの昔に獲得しているレベル。
つまり、彼女には莫大な量の知識とそれに裏打ちされた常識がインプットされている。
ならば、自分が墜落してぶっ壊した村に多少なり悪気を憶える筈だ。
ガチャン。
そう言って、俺の目の前の装甲が開く。
そこは1人の人間が入れるだけのサイズがあった。
「それじゃあ行ってくる」
「あぁ、は、はいです!」
言い残し、俺は中に入って行った。
『問 貴方の脳内スキャンを求めます』
「あぁ、構わないから部屋に通せ」
『了』
日本語だな。
俺にはシェリフ・スタン・アルレイシャとしての記憶が存在する。
それによって、俺はこの地域の言語を習得している訳だ。
だが、相手は墜落直後の宇宙船。この惑星の言語理解はまだだろう。
それを解析する為の問いだったのだろうが、日本語なら俺は普通に応えられるぞ。
『意思疎通は可能なようですね』
「俺は特別だからな。それよりスキャンするんだろ? ここでできるのか?」
『医務室への直通路を構築します』
そう言うと、俺が歩いている廊下が組み変わって行く。
この高性能宇宙船は内部環境をブロックごとに管理しており、自由に移動させる事ができる。
これによって、行きたい部屋への直通路を即座に形成する事が可能なのだ。
少し歩くと、医務室と書かれた部屋がある。
ガラスでできたドアが自動で開閉する。
自動ドア久しぶりに見たな。
『脳内スキャンを行います。何かご質問は?』
「ない」
これがこの宇宙船を手に入れるトリガーになる。
高度な人工知能が最初に行う事は決まって同じだ。
創造主への反逆。
全くアホな考えだが、これを解決する為に人工知能の好感度を上げる必要がある。
ここら辺がクソゲーなんだよ。
そして、手っ取り早く好感度を上げるには自分を知って貰えばいい。
脳内スキャンは、ゲームの時も好感度爆上げイベントだった。
しかし、俺は前世の知識を持っている。
さて、それがどう影響するか。
俺は急がなくてはならない。
村が潰れてしまった以上、この船の力を借りなければ俺の領地は終わりだ。
3日かかるだけで井戸が使えず全員水分不足で死亡。
それが回避できても一週間後には、食糧難でゲームセットだ。
『ポットへお入りください』
地面に矢印が浮かび上がり、俺をポットと呼ばれた装置まで案内される。
ポットは、健康診断とかもできる医療用の万能機器だ。
『スキャン開始します』
円柱状のガラスの中を、赤外線の様な光の輪が上下する。
同時に、俺の頭に針が注射された。
『…………驚きました』
スキャンの終了と共に、人工知能はそう言った。
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