チート薬学4巻発売中!第949話 絶体絶命の危機と救世主!

道化師達との戦闘が始まってから数時間の時が経った。マルティルのスキルによって何とか善戦しているが、道化師もただ黙ってやられていくほどお人好しではない。


「辺境伯様、敵が特攻を仕掛けてきています。しかも、敵はすぐさま再生し、兵士達だけがやられている状況です」


王都の進行でも見せた捨て身の自爆攻撃を仕掛けてきた道化師達は、どんどんと街の中心部へと歩みを進めてきた。


「今すぐ街の広場まで全員下がり、陣形を整えろ!そして、距離を取り一斉攻撃をするんだ!良いな」


マルティルは、侵攻を許してしまうのは理解しているが、兵士達の命に変えることは出来ないと中央まで引くように命令を下した。そして、薬学神と兵士達は、命令通りに広場まで陣を下げて、道化師が来るのを今か今かと待っていた。


「マルティル辺境伯、私が渡した残りのポーションを全て飲むよう兵士達に伝えてくれ!最後の戦いになるだろう」


「お任せ下さい!残っているポーションを使い、一斉攻撃をする。出し惜しみせず、出来る限り敵を殲滅しろ!俺も、参戦し、敵を葬る!全員頼んだぞ」


薬学神の言葉を聞いたマルティルは、この攻撃が最後になることを理解して、望みの綱であるアレクに託すまでのお膳立てをしようと考えた。


「来るぞ!まず一斉に矢を放て」


建物の屋上に配置された弓部隊が、神力を纏った矢を一斉に道化師達に放った。道化師達は、避ける必要もないかの如く、矢を全て受けて少し歩みのスピードは落ちたものの、じわじわとマルティル達に近付いてくる。


「あいつらを近付けさせるな!魔法が使える者は、出し惜しみせず一斉に放て」


マルティルの命令が下されると様々な種類の魔法が神力を纏い放たれた。そして、道化師達は力の度合いを測るかのように避けずに、わざと食らう。


「マルティル辺境伯、近接が出来る者に、いつでも動けるよう伝えておけ!」


「ハッ!お前達、剣と槍を構えておくんだ!魔法が止んだ瞬間、一斉攻撃をしろ」


槍兵と重装備兵と魔法が使えない一般兵と騎士は、剣と槍を構えた。だが、薬学神のポーションの効力が凄いため、中々魔法攻撃が止むことがなく、そのまま倒し切るのではないかと兵士達は思った。


「攻撃中止!魔法を放っていた者以外は、いつでも迎え撃てる体勢を取れ!」


魔法を放っていた者は勿論、薬学神も息を切らせて、今にも膝を突きそうなほど疲労していた。そして、剣と槍を持った兵士達は、マルティルの言う通り迎え撃つ体勢を取る。


「やったのか!?」


連続する魔法攻撃で、もくもくと立ち込める煙を前に一人の兵士がフラグになりそうな言葉を口にする。すると、煙の向こうからザッザッザッと地面を蹴り歩く音が鳴り響いた。


「気を緩めるな!俺に続いてかかれ!殲滅するぞ」


マルティルは、内心絶望していたが、表情には出さず、微かな希望であるアレクが来ることだけを願い、最後の微かな抵抗を試みた。

そして、煙から出てきた瞬間を狙って、マルティルと兵士達は道化師を切り刻んでいく。


「くっ、再生が厄介過ぎる」


「マルティル辺境伯、伏せろ」


マルティルが手をこまねいている時、再生し起き上がった道化師が、マルティルに襲い掛かろうとした。しかし、薬学神が魔法を放ち道化師達を消滅させる。


「ありがとうございます。魔法を放てる者がいなくなれば終わりか......アレク早く起きてくれ」


マルティルだけではなく、他の兵士達も魔法部隊と連携を取り、なんとか生き残っていた。しかし、またしても道化師は大爆発をし始め、兵士達が倒れていく。その様子を嘲笑うかのように道化師は見ていた。


「もう抵抗はしないのか?やっと無駄だということを理解したのか?」


道化師達の後ろから、更に強い邪悪なオーラを放つ道化師がマルティルに話しかけてきた。


「お前達の目的はなんだ?何故、ここを狙う」


「魔神様の願い!この世界を消す。ここは、その一つに過ぎない。質問は終わり。殺す」


道化師は、マルティルの質問の答えを言い終えると手をかざして黒い何かをマルティルに放った。マルティルは、なす術なく黒い何かに飲み込まれる。


「このまま、侵攻......何故生きている。貴様は誰だ?」


黒い何かの放出を止めた道化師は、このまま街を消そうとするが、マルティルは生きており、更には目の前に知らない人物が姿を現していた。


「地獄の大王ヴィドインだ!貴様の主人である魔神達を過去に葬り去ったヴァンドームの仲間と言えばわかるか?」


姿を現したのは、地獄を執事のウォルターに任せてやってきたヴィドインであった。


「ヴァンドームヴァンドームヴァンドーム......魔神様の敵!殺す!ギャァァァァァ」


「クズが!地獄にも行く権利はない!存在もろとも消してやろう」


ヴィドインは、道化師の言葉に耳を傾けることはせず、マルティル達があれだけ手こずっていた道化師の上位体をあっさりと消し去るのだった。

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