第912話 道化と化したルシファーと能力黒蟲!?

地獄のゲートオブヘルから出てきたのは、ハットとステッキが特徴で、黒い衣装を身に纏った若い男だった。


「ふわぁぁぁ。よく寝た。ふ〜ん!鼻を刺すような臭いやつが三人。それに、忌々しい神力を持ったやつが一人。レオちゃん、どれを倒してほしい?」


門から出てきた男は、辺りをキョロキョロと見渡したあと、レオの方を振り向いて尋ねた。だが、そんな話しを待つようなルシファーではない。男が振り向いた瞬間、猛スピードで背後に迫ってきた。


「地獄の力を模した生物にしては、節操がない。それに、今レオちゃんと話してるんだよ。ちょっと、邪魔だな」


男は、器用にステッキで迫りくるルシファーの体を1回転させて、ステッキの先でルシファーの体を突いて吹き飛ばした。ルシファーは、何が起こったのか、把握することが出来ず、されるがまま吹き飛ばされて城の壁にぶち当たった。


「で、どれを倒せば?」


「今吹き飛ばした人は、操られてるのです。サンジェルマンなら殺さずにどうにか出来ますよね?あとは、上空にいる二人はノックスさんにお願いしているので、目の前に集中してください」


「殺さずに......う〜ん?難しい。廃人になってるかも。まぁ、私の知ったこっちゃないか。それに、上空のメインディッシュを味わえるなら、それで構わない」


サンジェルマンは、ニヤニヤ笑いながら上空を見る。既に、ルシファーなどどうでもよく上空の二人にしか目がいっていない。


「クソ〜、我をバカにしやがって!絶対に許さんぞぉぉぉぉ!我の全力の前に、ひれ伏すがいい」


ぐぁぁぁと奇声を上げたルシファーは、筋肉が肥大化して、更に恐ろしい見た目へ変貌した。そして、フシュ〜フシュ〜と口から変な呼吸音を鳴らしながら、サンジェルマンに迫る。


「メインディッシュは、まだお預けか......にしても、気持ち悪い!近寄らないでくれ」


サンジェルマンは、ステッキを突き出して、ルシファーを止める。しかし、先程とは打って変わって、胸に当たっているステッキの先がプルプルと震えだし、ポキっと折れた。


「へぇ〜、模した分際の割におもしろい。ふ〜ん?私を侵食しようとするのか。じゃあ、逆に侵食し直したらどうなるのか......試そうか」


サンジェルマンは、ルシファーの体を殴る。しかし、一切のダメージはなく、そのままサンジェルマンの拳から黒い何かが侵食し始めて、サンジェルマンの拳は赤黒く変色した。

だが、サンジェルマンは気にすることなく、新たに生み出したステッキで、ルシファーを殴り散らかす。


「......我の体に何をしたのだ!?ゔっ、なんだ?この力は......ぐぁぁぁぁ」


ルシファーの赤黒い体は、半分以上が黒く変わり、肥大した筋肉も元に戻り、苦しみ始めた。


「最後の時を楽しむといい。私の力が、いずれ全てを飲み込む。レオちゃん、時間が経ったら解決する」


「サンジェルマン、凄いよ!凄い凄い!でも、サンジェルマンが操るから元には戻らないのではないですか?」


サンジェルマンの飲み込む発言を聞いたレオは、ルシファーと同じ結果になるのではないかと感じた。


「レオちゃん、よ~く私の地獄の力を見たらわかる」


「う〜ん?え!?何?あの、虫みたいなの」


一見ルシファーの体は、黒く変色しているように見えただけだったのだが、レオが地獄の力を目に集中し凝らしてよく見てみると、黒く虫のような物が大量に集まって蠢いていた。


「私の能力は、黒蟲。相手を飲み込み生かすも殺すも自由。あの模した力を消し去れば、黒蟲は勝手に体から離れて、元の生物に戻る」


レオは、サンジェルマンの本当の力を知らなかったので、黒蟲の能力を聞いて、思わず息を呑んだ。





サンジェルマンが、ルシファーと戦闘を繰り広げている頃、ノックスは二人に何も言わずに、レオが指を差した上空に飛び上がった。


「やはりお前だったか。ルシファーは、じきに消滅するが、それでいいのか?」


「久しぶりだな。ルシファーなどタダの暇潰しの道具に過ぎない。壊れたところでどうでもいい。それより、俺よりも遥かに弱い人間が、一人でノコノコやってきてよかったのか?」


以前、アレクとノックス二人で、弦馬に挑んだが、軽くあしらわれている事実があるので、弦馬に舐められた態度を取られてしまう。


「ルシファーも、可哀想なやつだな。これが、人類をこけにしていたやつの成れの果てとは。フッ、舐められたのは、久しぶりだな」


ノックスは、獣神から習った神力を体内に巡らせる技を発動した。そして、ノックスは一瞬で弦馬の背後を取って大剣を振りかざすのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る