第911話 レオの特殊な能力とあの二つの影!
レオは、ノックスから物理的に背中を押されて前へ押し出された。
「え!?こんな急にですか?わ、わかりました......やりますよ」
レオは、焦った顔をしていたが、振り返ってノックスの顔を見た瞬間、やれと言わんばかりの顔をしていたので、渋々やることにした。
「フッ、ブッハハハハ、お前も落ちたものだ。こんな何の力もないガキを見殺しにするとはな。だが、我も大事な子供達を殺され、腸が煮えくり返っておるのだ。そのガキを憂さ晴らしに、じわじわと甚振ってやろう」
ルシファーは、黒いモヤを出して、レオに向けて放った。そして、黒いモヤはレオの全身を包んで飲み込もうとする。
「ブッハハハハ、やはり甚振るには惜しい。その若い肉体を我が頂くことにした。まずは、我の従順な下僕にしてな。どうだ?お前の仲間が抗うすべも無く無力に堕ちていく様は」
ルシファーは、本当に手を出さないノックスの様子と素直に黒いモヤに飲み込まれたレオを見て、これでもかとノックスに言葉の攻撃をしかけた。
「喜んでるとこ悪いが、こいつはお前より上位の存在だぞ。地獄の力を真似ただけのお前と違ってな」
「ノックスさん!挑発はやめてください!僕、初陣なのですよ。確かに、まがい物の力は気持ち悪くて堪らなかったですから、ノックスさんの真似ただけの力は間違いではないですけど」
ノックスの挑発でレオを見ていなかったルシファーは、いつの間にか黒いモヤが消えて何も変わった様子のないレオに驚いてしまう。
「ど、どういうことなのだ!?何故平然としておる。それより、我の力がまがい物だと!地獄の力に匹敵する我の力をバカにするでない!」
レオの平然さに驚きながらも、あとに引けなくなったルシファーは、強がりを見せた。
「地獄の力を何もわかっていないのですね。貴方のそれには不純物が混じりすぎています。今まで何人の人間を死に追いやったのですか?地獄の力とは、そもそもそのようなことをして手に入れる物ではありません」
「一度、運良く正気を保てたからと調子に乗るでないわ!お前などいらぬ!死ね」
ルシファーは、先程よりも濃いモヤの槍をいくも出してレオに向かって放つ。
「地獄の
以前のような弱々しいレオは存在せず、自信に満ち溢れた顔をしていた。
そして、ラヴァーナが出す門以上に禍々しいオーラを放った巨大な門が出現して、ルシファーの槍はレオに届く前に消失した。更に、門の扉がゆっくりと開き、暗黒の門の中から真っ黒な煙が漏れ出す。
「我の攻撃を消し去っただと......それに、なんだ?その門は......」
強がっていたルシファーだが、門の禍々しいオーラを前に後退りしてしまう。
「僕特有の力です。常時僕から地獄の力を吸収する代わりに、こうやって力を借りることが出来るのです。ちなみに、地獄の力を操る者は、貴方の常時力は漏れ出しません。だから、まがい物なのです」
レオは、さぞ当たり前のように言っているが、地獄の力を操れる者でも上位の存在でなければ、力を隠蔽することはできない。しかも、レオのように特殊な力に目覚めるのは、極稀なことなのである。
「黙れ黙れ黙れ!あの方達に、復活させて頂いた命なのだ!こんなところで、殺られるわけにはいかぬ。もう許さん!我の本当の力を味わうがいい」
ルシファーは、わけの分からないことを話したあと、禍々しいオーラを放つ鉱石のような物を取り出して口に含むと、そのままゴクリと飲み込んだ。すると、ルシファーの体は赤黒く変色をして目も真っ赤になり全身に血管が浮き出て化け物と化す。
「おいおい。バルサークの原型がなくなっちまったぞ。もう殺すしか手はないか......」
「待ってください!まだ手はあります!それより、ノックスさんはあそこで見ている二人組の警戒をしてください。ルシファーよりも、厄介なやつらのようです」
レオは、上空を指差してノックスに敵がいることを知らせる。だが、ノックスは一切気付きもせず、上空を見上げてもまだ視認することすらできない。
「俺には、何も感じないが、警戒はする。それから、ルシファーはレオに任せるぞ」
「はい!任せてください!そろそろ寝坊助なあいつも起きるでしょうから」
レオが、話し終えると、門の中から人影が見えて、黒い靴が現れるのだった。
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