第910話 同じ時空で蠢く二つの出来事!

アレク達が、コルンの救出に向かっている頃、船をあらかた消し去ったデストロイとオレールの下に連絡が入る。


『デストロイとオレール、ルシファーが他国の人間を操ったようだ。多分だが、他国の兵か船が攻めてくる可能性があるな。来たら頼めるか?』


『ん?ルシファーと対峙中ですか?かなり説明を端折りますね。こちらは、任せてもらえれば大丈夫ですので、ルシファーを完全に消滅させてください』


いつもと話し方が、少し違うノックスに、すぐ気づいたオレールは、早々に通信を切った。


「そう言うことらしいので、早急に船を沈めて他国の様子を見に行きましょう」


「いいじゃねぇか。関係ねぇやつらだから、ぶち殺して構わねぇよな?」


デストロイは、殺したい衝動にかられているというよりも、自分達が舐められている現状に苛立ちを感じていた。


「操られていないのなら、殺して構いませんよ。殺られる覚悟があるから殺りに来ているわけですから。しかし、操られているなら自分の意思ではないので無力化してください。その辺りは、私より地獄の力と神力を備えたデストロイの方が見分けられるでしょう」


反対するだろうと思っていたオレールから、肯定的な言葉が出て、デストロイは驚く。


「まさか、お前からその言葉が出るとはな。地獄の力を多少流せば、すぐ見分けがつくが、手当たり次第じゃねぇのが面倒だな。しゃあねぇか。で、行くのか?船は破壊したけどよ」


デストロイとオレールは、話しながらも船を破壊しており、ズラリと綺麗に並んでいた船は、ものの見事に消え失せていた。


「そうですね。少しお待ち下さい。ジキタリスに確認してみましょう」


オレールは、敵がどこから侵入してくるのかが、わからない状況なので、分身体が色んな場所に潜伏しているジキタリスに聞こうとする。


『ジキタリス、分身全員に連絡してほしいのですが、周辺諸国の動きを探ってもらえませんか?動きがあった時点で、私とデストロイに連絡をください』


『畏まりました。分身体から報告が行くようにしましょう。私は、今から玉座の間で大立ち回りがありますので』


ジキタリスの分身体が、本体から連絡を受けて一斉に国境へ移動を開始した。


「ジキタリスから連絡が来るまでは、街を見張っておきましょう。この国に、義理はないですが、市民が危険になる可能性があるのは頂けませんから」


「仕方ねぇな。付き合ってやる。その代わり、時が来たら無茶苦茶にしてやるからな」


オレールとジキタリスは、残っている船がないか確認したあと、リグリスの街の上空に向かって飛んでいくのだった。





ノックスとレオは、ルシファーの戯言を一通り聞いたあと、ノックスは双剣を取り出してバルサークの体を切り刻んだ。


「ぐはぁ!話し終わったばかりで、いきなり切るやつがあるか!この人間が死んでもよいのか?」


双剣で、ノックスに胸をX切られて、ルシファーは胸を押さえながらうずくまる。そして、ゆっくりと胸を押さえて立ち上がるルシファーは、苦しそうにしていた。


「バルサークとは昨日初めて会ったしな。どうでもいい。それに、嘘は休み休み言え!お前の力があれば、再生も容易いだろ?なんだ?再生すら出来ないのか?」


「ブッハハハハ、嘘は通じんか!だが、お前も嘘が下手であるな。無実の人間を見殺しにできんことは、我がよく知っておるからな」


ルシファーは、大きく深呼吸をして、Xに切れた傷からシュ〜っと音が鳴り黒い煙が出て傷が治る。


「ノックスさん、いきなり何をやっているのですか!?」


「力が、どこまであるのか調べただけだ。治らなければ、ポーションを使えば問題ないしな。それに、死なない程度に切ってる」


ノックスは、ルシファーの残滓の力がどれほどのものかを探るためにわざと傷を負わせた。そして、回復する瞬間を見て、ノックスは何を思ったのか、ニヤリと笑った。


「これで我の力が消えておらんことがわかったであろう。いずれ、リグリスも周辺国も我の支柱に収めてやる!このように、我は何度でも復活できるのでな。今我を葬り去ろうと同じ結果になるぞ」


「アッハハハ、何を焦ってるんだ?さっきの回復を見ると本来の力ではないように感じたぞ。それに、今回は俺がやるわけじゃないからな」


ノックスは、今までのルシファーとの戦いの最中、ルシファーの傷の再生を何度も見てきているので、さっきの回復の仕草を見るに、無理をしているなって感じた。それに、今まで以上に言葉を交わすルシファーに、相当の焦りが見えた。


「何を言っておる。我は、忠告しておるのだ。それに、我が怖くなって我との戦いに逃げようとしているではないか」


「逃げるか......一度負けた相手に言われるか。まぁ、そう思いたきゃ思えばいい。だが、ある意味こいつのが俺より厄介かもな」


ルシファーの挑発に一切乗ることはなく、レオの背中を押して前に出して戦えと言うのだった。

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