第171話 ほのぼの陽気から一転...不穏な魔ノ国!
部屋の窓を開けると、外から気持ちいい風が、フワァッと部屋の中に流れ込む。チュンチュンと鳥の鳴き声がして、気温もちょうどいい暖かさでぽかぽか陽気である。
「久しぶりに、のんびりしている気がするなぁ。ゆっくり手紙を読む時間が取れるなんて1年振りくらいかな?」
ヘルミーナから貰ったコーヒーを飲みながら、学園の友達から送られた手紙を読むアレク。
「みんな元気そうだな。今頃、みんなは何してるんだろう?学園にもう1度通ってみたいな...」
陛下から学園を早期卒業扱いにするから、復興の手助けやポーション作りに力を貸してくれと言われたのだ。
1年前は、助けになるなら、それでいいかと思っていたアレクだったが、いざ学園から離れると寂しいもので、もう1度通いたいと思うようになってしまったのだ。
「今頃、学園に通っていたら、各国選抜対抗戦と個人戦の時期なんだ。3年を差し置いてセト、レオナード、ランス、エリーゼが選ばれたとか凄いよな。それに、レオナードは個人戦にも出場か。俺も出たい〜」
ちなみに、1年前の対抗戦は、アレクの抜けた穴をスローとレティが見事に埋めて優勝したのである。
「3年からでいいから復学できないか、陛下に進言してみようかな。強くなったみんなと戦ってみたいし。それにマンテ爺も、出られたら面白いだろうな。ねぇ〜マンテ爺も出たいよね?」
マンテ爺は、ベッドの上でまったりとうつ伏せで寝そべっている。
「うむ。ワシも、暴れてみたいわい。小童共が、どれだけ強いのかも気になるしのぅ」
「だよね。テイムか召喚士対抗戦とかあったら楽しいのに。学園じゃなくても出来ないか、陛下に聞いてみよう。散々こき使われたし、強気に攻めてみようかな。アハハハ」
「おもしろそうじゃのぅ。玉座の間で、ワシは大きくなって加勢なんてどうじゃ?ワシとアレクを怒らせるとは、いい度胸をしてるな貴様!なんて言うのもおもしろそうじゃがな」
「アハハハ、そんなことしたら前代未聞で歴史に残りそうだけど、斬首刑になるよ。そうなったら、マンテ爺に乗って他国におさらばってね。まぁ、父上と母上と兄弟に迷惑をかけられないから、そんなことは出来ないけどね」
マンテ爺も、寝そべりながら「フッ」と鼻で笑うのであった。
トントントン
「アレク様、旦那様がお呼びです。執務室までお願いします」
「はい!今行きます。マンテ爺は、ここで待っててね」
「わかったんじゃ。寝て待っとるわい」
ドアを開けるとセバスがおり、執務室に案内をされる。
トントントン
「旦那様、アレク様をお連れ致しました」
「入ってもらいなさい」
ヨゼフの入室許可が下りたので、アレクが中に入る。すると、商人のランドとパスクとスペイビズがいた。セバスは、「それでは、私は失礼致します」と言い、ドアを閉める。
「おぉ、アレクよく来てくれたのぅ。アレク座りなさい。ランドすまんが、もう1度、さっきの話をここにいる者に話してくれんか?」
「はい!わかりました。先日、コーヒーを魔ノ国に買い付けに行った際に、とある噂を耳に致しまして、なんでも王国に戦争を仕掛けるというものでした。噂ではあったので、お伝えするかしないかで悩んだのですが、もし本当であれば一大事だと思い、1番信用のおけるヴェルトロ伯爵様にお伝えしに来たという訳です」
まさかの戦争という言葉が出てきて驚くアレク達。
「父上は、戦争について何か魔王様からお聞きしていますか?」
パスクが、元侯爵であるスペイビズへと尋ねる。
「いや、俺がいた時には、そんな話はなかったな。俺が去った後に決まったのだろう」
「1年前にあのようなことがあったにも関わらず、また戦争とはのぅ。すぐに陛下に知らせねばならん。アレクよ、すまんが転移を頼めるかのぅ」
「父上、分かりました。いつでも言って頂ければ転移出来ます」
アレクが、任せてくれという感じで答える。
「スペイビズ、すまんが魔ノ国について教えてくれんかのぅ」
「わかりました。伯爵。わかる情報は、全てお伝えします。まず戦争になると、15万の兵が動員されます。その中で、四天王が存在しますが、戦争には参加せず魔王様を護衛しています。しかし、アレク様などが戦争に駆り出された場合、必ず四天王が現れると予想します。そうなれば、戦争は激化して、罪なき人族や魔族が大量に犠牲となるでしょう。ですが私は、疑問に感じていることがございます。魔王様は、理由なく戦争を引き起こす方ではありません。必ず何かしら理由があるに違いありません」
スペイビズは、立ち上がって真剣な顔でヨゼフに訴えかける。
「15万とな...考えとうないわい。じゃが、陛下には、そう伝えよう。しかしのぅ、まだ確定ではない。先走って行動せんようにのぅ。では、解散とする」
ヨゼフが解散と言うと、信じられない様子のスペイビズは、頭を抱えながら出ていく。その様子を心配するパスクは、スペイビズに寄り添うのであった。アレクは、出来れば戦わずして事態を収拾できないかと思うのであった。
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