第170話 ヘルミーナへのプロポーズ大作戦!

商業ギルドの一室、机には大量の書類と最近、他国で流行っていると言われるコーヒーが置かれていた。その書類の山と向き合いながら、今日も仕事をしているヘルミーナ。

時間として一刻2時間は過ぎていただろうか?体の凝りを解す為に、立ち上がったヘルミーナ。すると、向かいのソファーにアレクが座っていたのだ。


「えっ?いつからいたの?」


「結構前かな?ヘルミーナが、真剣に仕事をしていたから、邪魔しちゃ悪いし待ってたんだよ」


「そうだったのね。待たせてごめんなさい。それより、また転移して来たんでしょ?」


この1年間、アレクは仕事の合間を見つけて、何度かヘルミーナに会いに来ていた。ヘルミーナも、1年前の王都襲撃以来、忙しくなってしまったので、こうやってアレクが転移して会いに来ないと、なかなか会える機会もなかったのだ。


「へへっ、だってヘルミーナに会いに来たくなったからね」


「もう〜アレクったら、いつもそれなんだから」


このように言ってはいるが、本当はヘルミーナも会いたいと思っており、内心嬉しいのである。


「ちょっとだけ時間を貰えるかな?大事な話があるんだ」


アレクが、急に真剣な顔になったので、なんの話だろうかとなる。もしかして、振られてしまうのではないかと少しだけ考えてしまうヘルミーナである。


「えぇ...良いわよ。どんな話かしら?」


そうヘルミーナが言うと、アレクはおもむろに立ち上がって、小さな箱を取り出し片膝を突く。


「ずっと一緒にいよう。俺と結婚して下さい」


本来ならもっと凝ったような、プロポーズをした方がいいのだろうが、前世においても現世においても、一切そのような経験がないアレクは、シンプルに気持ちを伝えることにした。


「・・・・・アレク、本当に私でいいの?平民の行き遅れた女よ」


「お互いを支え合って、一生を遂げることの出来る相手はヘルミーナしかいないと思っている。だから、一緒になろう」


アレクは、ヘルミーナの言葉に対して、一切迷うことなく気持ちを伝えるのであった。


「アレグ〜嬉じいぃぃ大好き」


ヘルミーナは、感動のあまり泣きながらアレクに抱く。

暫く泣き止まず、抱き着いたまま、アレクは背中を擦る。


「そろそろ、落ち着いたかな?それで、返事を聞きたいんだけど...」


「はい!よろしくお願いします」


ヘルミーナは、笑顔でアレクの顔を見てプロポーズの返事をするのだ。


「これを、左の薬指にはめるね。愛する女性を一生大切にしたいって意味と婚約した証にお互いがはめる物なんだ」


パチパチパチパチパチパチ


気付かない間に、ヘルミーナの部下が部屋にやってきていたようで、プロポーズの瞬間から最後まで一部始終を見られていたのだ。


「グスン...おめでとうございます。ギルドマスター」


「うわぁぁぁん、やっとですね。おめでとうございます」


「私も、早くいい人見つけなきゃ。おめでとうございます。マスター」


部下達が、ヘルミーナに対して、祝福の言葉を投げかける。


「えっ?えっ?え〜〜あなた達いつからいたのよ?」


泣いて喜ぶ部下とニヤニヤしながら見る部下に、驚くヘルミーナ。


「全部見られちゃったね。ちなみに結婚式は、叙任式が終わってから行う予定だからね。言っていなかったけど、この度、伯爵になります」


「ちょ、ちょっと、アレク、なんでそんな大事な事を今言うのよ。伯爵ってことは、伯爵夫人になるってことよね?私、頭が痛くなってきたわ...」


アレクが、貴族になるのは、まだまだ先だと思っていたヘルミーナは、まさかのことに驚くのと同時に、私に務まるのかという不安に駆られていた。


後ろでは、部下の女性達が、玉の輿だとか伯爵夫人羨ましいとか色々騒いでいた。


「大丈夫だよ。俺も伯爵になって何をしたらいいかわからないしね。それよりも、側にいてくれるだけで支えになるから」


「アレク...わかったわ。私も覚悟を決める。そうと決まれば、ギルドマスターを辞めるわ」


アレクは、ヘルミーナの発言を聞いて後悔をする。


「ヘルミーナ、ごめん。ギルドの仕事をすっかり忘れていたよ。勝手に結婚を決めてしまってごめんなさい」


「えっ?いいのよ。そろそろギルドマスターを辞めるつもりだったから。それよりも、アレクと結婚できる方が幸せだもん」


その言葉に、後ろではキャーと悲鳴が上がる。アレクは、そろそろ仕事に戻りなよと思うのだった。


「あなた達、仕事は大丈夫なの?後で確認するわよ」


そう言うと、先程までの盛り上がりから一転して、大急ぎで自分の仕事に戻っていくのであった。


「ヘルミーナも大変だね。お疲れ様」


「いつものことよ。アレク、指輪嬉しいわ。本当ありがとう。でも、指輪を贈るなんて聞いたことないけど、どこかの国の風習なの?」


「それはね...」


その後アレクは、転生したことや前世の話をした。その中で、指輪を贈る風習の話もするのであった。

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