第169話 ガントレットの真の力と戦闘狂ノックス!

何故か俺は、師匠に連れられて、ストレン領の街道にある森を奥へひたすら歩いている。何故かって?俺が聞きたいよ。朝寝ていたら、師匠が急に部屋へやってきて「アレク坊、ついて来い」と言うんだよ。しかも、マンテ爺は「まだ寝とるわい」とか言ってついてこないし。薄情者め!まぁ〜そんなこんなで、何もない森を歩かされてるというわけなんだ。ん?誰に語ってるって?知らないよ。語らないと歩いてられないってだけさ。


アレクが一人語りをしていると、ノックスが立ち止まった。


「この先だ。アレク坊、回復ポーションはあるよな?」


「え?あ、はい。常時魔法鞄に500本以上は入れています」


「そうかそうか。なら安心だな。今日は、有意義な時間になりそうだ。よし!先に進むぞ」


アレクの頭の中は、???になっている。一体何をする気なんだろうと。


「そろそろ何をするか教えて下さいよ」


朝から2時間以上も歩かされて、とうとう痺れを切らせたアレクがノックスに尋ねる。


「着いたぞ。ここで、俺と戦ってもらう。昨日話したよな」


着いたぞと言われた場所は、見事に切り拓かれた場所で、木々や石など不要な物が一切ない。しかも、学園にあるような四角い石が敷き詰められたリングらしき物が中央に置かれていた。


「ここは、なんですか!?」


何もない壮観さと森の奥にこんな場所があったことに、ただただ驚くアレク。


「これは、アレク坊が王都にいる間に、作ってもらった演習場だ。更に驚く仕掛けがあるんだ。ほら、壇上にいくぞ」


言われた通りに、ノックスの後を着いていき壇上に上がる。すると、学園と同じように半円の防御結界が張られていくのだ。


「師匠、まさか!防御結界ですか?」


アレクは、頭上を見上げて口を開けて驚く。


「あ〜最新鋭の防御結界だ。1回くらいなら広範囲殲滅魔法にすら耐えるぞ。驚いただろう?」


「師匠...驚きましたが、広範囲殲滅魔法を試すのはどうかと思いますよ。もし、壊れていたら...」


「ガッハッハッハハ、いいじゃねぇか。そんなこと。それより、ガントレットはあるよな?」


ノックスは、隠しているが、これを作った時に、2発広範囲殲滅魔法を放ったのだ。1発目は、耐えたのだが、2発目は耐えきることができずに、辺り一体を吹き飛ばしてしまったのである。その所為で、当たり一面砂地になったのだ。


「はい!ありますよ」


そう言ってガントレットを魔法鞄から取り出す。


「パスクの剣を新調する為に、おやっさんの所に行ったんだけどな。坊主のガントレットは、進化したかと言われたんだ。アレク坊、以前作った時に、進化するガントレットだと言われたのは覚えてないか?」


「言われたような?言われてないような?」


アレクは、完全に忘れていたのである。


「やっぱり覚えてないか...まぁ、おやっさんも一定時間使って魔力を一定量注ぎ込むってことを伝えてなかったらしいから仕方ないんだけどな。1年前のあの戦闘で時間は達成しているはずだから、魔力を込めてみろ」


アレクは、そんな大事な事を今更と思うのだった。だが、進化するガントレットとは気になるじゃないかと思い、ガントレットを填めて魔力を注ぎ込む。結構な量を注ぎ込んだのだが、一切変わる様子はない。


「師匠、まだですかね?」


「俺に聞かれてもわからん!ってうぉっ」


急にガントレットが光り出す。次第に、その光が落ち着くと、なんと灰色だったガントレットが真紅になっていたのだ。


「やっとかよ。ご主人様。俺様をどんだけ待たせやがるんだ。まったくよ〜」


なんとガントレットから声がしたのである。その声を聞いて、アレクとノックスは顔を見合わせる。


「師匠、今確実に喋りましたよね?」


「あ、あぁ、そうだな。喋ったな」


2人は、驚きながらもガントレットを凝視する。


「おいおい、そんな見つめられちゃ恥ずかしいぜ。俺様がカッコイイからってやめてくれよ」


もし、ガントレットが人間なら照れて顔を真っ赤にしているはずだ。それにしても、偉そうである。


「なんか、駄目な物を目覚めさせた気がしますよ...」


「だな。封印して永久に魔法鞄の中に入れておくか?」


そしてアレクは、ノックスの言う通り外して魔法鞄に入れようとする。


「おいおい!待て待て、クソご主人様!なんばしよってくれとんじゃワレ!俺様を使わんかい!おい!そこの大剣使い、本気で斬ってこい。俺様の本気見せたる。クソご主人様、剣で斬りかかってきたら剣目掛けて殴ってみろ」


「師匠どうします?俺は構いませんが。もし、腕が吹き飛んでも治せますし」


「おもしれ~ガントレットなんかに挑発されて逃げるわけには行かないからな。アレクも本気で殴ってこいよ」


ノックスは、目をギラギラさせてやる気満々である。アレクは、腕は再生出来るし、試してみるかとなるのであった。


「クソご主人様は、ただ殴るだけでいいからな。今の潤沢した魔力量なら余裕だぜ」


さっきからクソクソと連呼されてイライラしているアレクは、是非ノックスに、このガントレットを破壊してもらいたいと思うのだった。


「本気だな。ゴクゴク。身体強化。行くぞ」


なんと、ノックスは攻撃力向上薬を飲んで、更に身体強化まで使ったのだ。

アレクも、それは予想外で咄嗟に臨戦態勢を取り、ノックスが斬りかかってくるのを待つ。


「師匠、はや!」


素早さ向上薬を飲んでいないにも関わらず、1年前とは比べ物にならないくらい動きが早くなっているのだ。


「クソご主人様、来るぜ。しっかり俺様を扱えよ」


「言われなくても殴ってやるよ。おりゃぁぁぁ」


そして、大剣とガントレットがぶつかり合う。そして、ガントレットから「ブーストマックス」と言う声が聞こえた。その直後、ガントレットの拳部分が真っ赤になる。すると、ノックスの大剣がミシミシと音を立ててバキーンと折れるのだった。そのままの勢いでノックスの顔面へとガントレットがヒットする。ノックスは、そのまま吹き飛ばされて地面へと叩きつけられたのだった。


「全魔力消費!休眠開始」


ガントレットからは、偉そうな口調ではなく機械的な話し方で休眠開始と言う。そして、ガントレットは、元の灰色のガントレットに戻るのであった。


「師匠〜」


アレクは、焦るようにノックスがいる所へ走っていく。


「師匠、早く飲んで下さい」


「うぅ〜すまない...」


エクストラポーションをノックスの口に入れて飲ませるアレク。あれだけの攻撃を受けて、意識のあるノックスは異常である。


「あぁ〜死ぬかと思ったぞ。そのガントレット凄いな!」


ノックスは、何もなかったかのように、首を捻ってコキコキ鳴らしながら立ち上がる。


「焦りましたよ。まさか、ここまで凄いとは...あ!師匠、大剣を折ってごめんなさい」


「気にするな!これは練習で使う用だ。それより、まだ時間はあるんだ。模擬戦をするぞ」


「え?まだやるんですか?」


「当たり前だ。アレク坊に負けっぱなしは嫌だからな」


本当に師匠は、戦闘狂だなと思うアレクであった。

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