第172話 陛下の執務室に直接乗り込むアレクとヨゼフ!
屋敷のホールに、見送りの為、カリーネとノックスとパスクとスペイビズが集まっていた。
「すまんが、留守の間、屋敷を頼んだぞい」
「貴方、大丈夫よ。こんなにも強い人達がいっぱいいるんですもの」
「もし、陛下に魔ノ国のことを聞かれましたら、私でもパスクでもいいので、すぐ呼んで下さい。なんでもお答えします」
カリーネとスペイビズが、返答をする。それから、ノックスもパスクも、ストレン領と屋敷を任せろという感じで頷く。
そして、魔ノ国が戦争を仕掛けてくる可能性があることを陛下に伝える為、ヨゼフとアレクは、王城へ転移するのであった。
「父上、着きましたよ」
初めての転移に、少し恐怖したヨゼフは、目を完全に瞑っていたのだ。そして、着いたにも関わらず、全然目を開けようとしないので、アレクが声をかけたのである。
「おっ!?おっ!?もう着いたのかのぅ?転移とは、凄いものじゃな...あっという間じゃわい」
目を開けると、城門前に着いていたのだ。
「凄い便利でしょ。もし、母上とデートで、遠出したい時は言って下さい。どこへでも、連れて行きますから」
「ホッホッホ、それはありがたいんじゃ。いつか、お願いしようかのぅ。では、そろそろ行くかのぅ」
「はい!父上」
そして、門番がいるところまで歩いて行く2人。
「すまんが、陛下に取り次いではくれんか?国家の一大事だと伝えてほしいんじゃ」
門番に、貴族証を見せて用件を伝える。
「ヴェルトロ伯爵様、何か王印が捺された物をお持ちでしょうか?只今、謁見のご予定がない方をお通しすることが出来ないようになっております」
緊急だと伝えているのだが、どうも事前に許可がない者は、貴族であろうと陛下と会うことはできないようだ。
「国家の危機に関わる情報を持って来てきておるのじゃが、通しては貰えんかのぅ?一度、宰相様にヴェルトロが王国の危機を知らせに来たと伝えてくれんか?」
「申し訳ございません。決まりですので、事前に謁見の許可をお取り下さい」
「父上、一度帰りましょう。それから、俺に任せては貰えませんか?」
「うむ。迷惑をかけたのぅ。事前に謁見許可を取ってまた来るとしよう」
「ヴェルトロ伯爵様、大変申し訳ございません。1年前に、あのような事件があってから謁見許可が厳しくなっておりまして」
門番は、頭を下げて謝るのであった。
「構わんぞい。アレク、行くとしようかのぅ」
そして、アレクとヨゼフは、何故か笑顔で城門外に向かうのであった。
「父上、もしかすると捕まる可能性がありますが、俺の案に賛成してくれますか?」
「当たり前じゃ。王国の危機を知らせてに来て、捕まるならそれまでの国じゃわい。今すぐ、陛下のいるであろう執務室に転移をするんじゃ」
てっきり、少しは躊躇するかと思いきや、案外ノリノリで賛成するヨゼフ。捕まらない確信でもあるのだろうかと思うアレクであった。それに、転移で城に乗り込むこともわかっていたようだ。
「では、父上掴まって下さい。転移します」
ヨゼフは、アレクの肩に手を置く。すると、次の瞬間その場から2人は消えるのであった。
「やはり、一瞬じゃのぅ。陛下、王国の危機をお知らせしたく、アレクの転移でやって参りました」
「うぉっ!なんだ!?ってヨゼフにアレクか!驚いて心臓が止まるかと思ったぞ。して、王国の危機とな?今すぐ説明せよ」
転移してきたことに驚きはしたものの、流石、国の最高支配者というだけあって、切り替えが早く、すぐに真剣な顔付きになるのだ。
「まだ確証はございませんが、贔屓にしている商人から、魔ノ国が王国へ戦争を仕掛けようとしている噂を耳にしたそうです。ですが、魔ノ国の元侯爵であるスペイビズ曰く、魔王が理由なく攻め入るはずはないとも言っておりました。もし、本当に戦争となれば一大事だと思い、失礼ながら転移で直接会いに来た次第でございます」
それを聞いた陛下は、意外にも驚く様子を見せないでいる。
「やはりか...すでに1年前、密偵から似たような報告が上がってきておる。しかし、警戒はしておるのだが、兵を集めておる様子が一向に見受けられんのだ。その所為で、余もどうしたものかと手をこまねいておるところだったのだ」
1年前から情報があったにも関わらず、兵を集めることすらしてないとは、どういうことなのだと思うアレクとヨゼフ。
「本当によくわかりませんね。一度、何か理由を付けて大使を派遣するなどは、如何でしょうか?」
「大使派遣は、今検討中である。これまで、国としての付き合いが皆無であった為、何を理由に派遣するかで悩んでおるのだ。今後、もし進展次第では、もしかするとアレクの手を借りる可能性が出てくる。期待してよいか?」
アレクはこの時、また「はい」と答えそうになったが、ノックスの言葉を思い出して踏み止まる。
「陛下!私はこの1年、国の為に身を粉にして働きました。13歳にしてです。もう疲れました。ですので、もし何か命令される場合、条件として、来年の3年次復学を希望することと当分の間は、法衣貴族のままでお願い致します」
自分の気持ちを、全てではないが、陛下に伝えたアレク。
「余に対し、要求すると申すか?」
「はい!もし気に入らないようであれば伯爵の地位もいりません」
真剣な顔で訴えるアレクを睨みつけるかのように見る陛下。しかし、段々と破顔していき、次第には大笑いしだす。
「ブッハハハハ、良い良い!余に、ここまで意見をした者はおらぬ。アレクの条件を飲もう。それに、他国に逃げられても困るからな」
「陛下、お戯れが過ぎますよ。あまりアレクを苛めると本当に他国へ逃げてしまいます。それに陛下、エリーゼ王女様に嫌われますよ」
エリーゼという言葉を出した瞬間、「ヴッ」と痛いところを突かれたという顔をする。
「ヨゼフよ、それを言うでない。余の1番の弱点ではないか。それと、アレクすまなかった。余は、時折アレクを13歳の子供ということを忘れてしまうのだ。なんでも熟しよるからな。本当に申し訳なかった。余を許しては貰えぬか?」
まさか、最高支配者から謝られると思っていなかったので、アレクは驚いてしまう。
「陛下、謝らないで下さい。もう少しお手柔らかにお願いしたいだけです」
「ブッハハハハ、わかった。お手柔らかに、こき使わせて貰おう」
陛下は、笑いながら冗談ぽく発言する。それを聞いたアレクとヨゼフも思わず笑ってしまうのだった。
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