§ 4ー4 12月19日 暗がりの部屋
--神奈川県横浜・某アパート一室--
暗い部屋。自分の部屋がこんなにも暗いと感じるのは、世の中のせいだろうか? いや、高校時代の野球部のコーチに、最後の地方大会の決勝で自分が9回のチャンスに打てずに負けた時に言われた言葉を思い出す。
「結果を受け止めるばい! 誰のせいにもするんじゃなか! 自分のことは自分自身に責任があるたい。今後の人生に、今日があって良かったと思える生き方をすればよかたい!」
そう。だから、この部屋の暗さは自分自身にきっとあるはずだ。そんなことは初めから分かっていた。だけど……
昨晩、母からの着信に出なかった。留守番電話には『元気しとるか? 無理せんでええんだぞ? 胸を張って帰ってこい」と残されていた。帰るにしても、胸を張ることは出来ないよ。腰を落として座ったベッドで、頭を
暗がりに
喫茶ル・シャ・ブランを辞めて1ヶ月。
大学は卒論も提出し卒業することには問題はないが、パンドラによる被害を考えると、そんなものに意味があるのかと疑念を
彩と最後に会ったのはル・シャ・ブランを辞めた次の日。自分が情けなくて、格好悪くて、それでも意地を張って「就職が決まるまでは忙しくなるから会えない」と強がった。メッセージでのやりとりも簡素にすませるように意識した。そうしないと、醜い思いの
やり場のない、どうしようもない、どう考えても行動しても上手くいかない現状に、自分の弱さがふいに表現していることに気づき自分自身に
TVに映し出された黒き魔女パンドラ。
「お前は何なんだよ……。どうして地球に近づく……」
返ってくるはずもない問いかけ。部屋の片隅に置いてある
明るい日差しの元、楽しむためだけのボールと言葉のキャッチボール。今より純粋だった彩への恋心。遠い昔に感じたが確かにあったそのリアルが、雲間から差し込む
ポタッ……ポタッ……
顔の真下のカーペットに丸い染みができた。なんだ? と疑問の後に自分が涙を流していたことに驚く。そして、気づいてしまった。
それが、真っ直ぐで、自由で、自分らしく過ごした
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