CHAPTER.4 旧態依然な灰緑(キュウタイイゼンナハイミドリ)【天体衝突3ヶ月前(冬)】
§ 4ー1 モノローグ④ 喜多見蜜柑
--喜多見蜜柑・夢の中--
フワフワと陽だまりのような温もりだけは微かに覚えている。いつのことか、そこが何処なのかも分からない。けど、確かに誰かがそこにはいた。一人は顔の輪郭もボヤけて、誰なのかは分からない。もう一人は見たことのある顔。しかし、その人は今はもう見ることのできない優しい表情を浮かべている……
その店は時間の流れが
その店には毎日、多くの人々が
若い女性は頭を
この店が私は大好き。不細工な動物たちの置物。ねじ曲がった針がチクタクチクタクと追いかけっこする柱時計。色とりどりの流れが止まった砂時計。店内は人も物も色も音もざわついている。こんな店内なのにひとときを求めにくるのは、窓から見える外が
でも、私には白い老紳士と熊さんが、いつも一緒にいてくれる。2人がいつも見守ってくれる。だから、私も2人に負けないように力になりたかった。私が好きな、このひとときを提供する店も、もっと好きになるように色んな物を
ウオオオォォォーン!
外から
一人、また一人と席を立ち、サッサッと早足で暗がりの外に出ていく。働いていた店員さんも後ろ髪を引かれながらも出て行った。
残ったのは白い老紳士と熊さんと私の3人。誰もいなくなった大好きな店。静けさにふと涙が
私は2人の表情に安心した。
そして、3人で暗がりが濃くなる外にゆっくりと歩み出す。
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