§ 3ー3  10月2日   箱の中の絶望



--天体パンドラ--



 空気はない。窒素も酸素も二酸化炭素もほとんど遭遇そうぐうしない旅。地球を旅立って3か月近く。冷たく孤独な兵器たちはようやく出会えた。存在の意味を与えられた相手に。心など無くてよかった。寂しいと思わなくて済んだから。そして、あなたを壊すためにここまで来たのだから……



 多くの人が忘れかけていたルードヴィヒ作戦の始めり。最初に辿たどりついた一団は重力に引かれ、大気に焼かれ、凍える冷気を切り裂き、一瞬触れ合う。


 パアァァ!


 そのうちに秘めた感情のすべてが弾けたように、閃光が広がる。追いかけるように熱をまとった風が吹き抜ける。雪も氷も大地も吹き飛ばし、溶かしながら。


 みな、同じだったのだろう。長旅を終えた破壊兵器たちが次々と感情をはじけさせる。相加そうか相乗そうじょうした破壊力は星を震えさせた。形を作る殻に穴をあけ、さらにそこに降り注ぐ。弱った星の内部に入り込み、流体のマントルの流れを爆破でさえぎっていく。身体に巡る血液の流れがさえぎられたら生き物がどうなるか容易に想像がつくだろう。

 また、星に深刻なダメージを与えた兵器の残滓ざんこうは、空を稲光いなびかりともない黒に染め、星にある全てのものを汚染した。


 この攻撃が、パンドラが1回24時間で自転するごとに繰り返された。計10回に及んだ無悪意な無邪気な破壊。地軸がくるい、止まり掛けのコマのようにふらふら回る。


 星は死にかけていた。


 しかし、回転が弱まり地殻に深刻なダメージを受けてもパンドラの歩みは変わらなかった。地球と衝突するのがまるでであるかのように……


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