CHAPTER.1 滲んだ天色(ニジンダアマイロ)【天体衝突1年前(春)】

§ 1ー1  モノローグ①  生田颯太



--生田颯太・夢の中--



 曇天の湿った薄い光は見えるもの全ての色を隠す。それは、世界が一様にしてはかないのか、はたまた、自分の目に鉛色のコンタクトをはめているからなのか。いつまでこんな世界が続くのだろう。


「落ち込んでばかりもいられないよな……」


 物心ついたころにはすでにあった家の近くの公園のベンチ。膝に手をつき座り、両手の指を互い違いにして握る。視線はくすんだ地面にぽつりと置いてきぼりにされた草臥くたびれた運動靴をぼんやりとらえ、心の吐露とろをぽつりと漏らす。


「あれからもう3カ月か……。大学の後期テストもボロボロだった。理由もあれやこれや考えてみたけど、どれも当たってるようで、でも間違ってるようでスッキリしないのが、ここまで引きづっている理由なんだろうな……」


 いつか答えを教えてもらえる日がくるのだろうか? でも、たとえ教えてもらっても、その答えが本心かどうかも分からない……。その答えを知ったところでもう意味がないのかもしれない。けど……


「明日はライブもあるし、2週間後には大学も始まる。もう散々いろいろ考えた……考え尽くした。うん! もう考えるのは止めよう」


 心機一転。こういう気持ちのとき、女の人は髪を切ったりするのかな。少し吹っ切れ、ひとりぼっちの運動靴から目を放し、ベンチの背もたれに体重を預ける。


 顔を上げた。


 気づかなかったよ。白黒の陰影だけの世界でも、儚げな白い梅の花が咲き、桜の蕾が色づき始めていることに。


 もう春なんだな……


 まだ曇った景色の中、その目には少し色づき始めた薄紅色が確かに映っていた。


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