第15話 ノーベル平和賞・反骨精神・マウンテンゴリラ・ボストンバッグ・銀行強盗
「ノーベル平和賞も賞金もらえるんですね」
Nがそんなことを言ってくる。
お前がノーベル賞をもらえるようなことはまずないから安心しろと言いたい。
「今の相場だと9,000万円くらいになるみたいですよ!」
権威ある賞を宝くじみたいに言うなと思うが、まぁ一般人からすればその程度かもしれない。
Nに対してそんなことを言っても、仕方ないが。
ノーベル賞などは、反骨精神を発揮して、賞金など目もくれないような人たちに頑張ってもらいたいものだ。
「9,000万円あればマウンテンゴリラが買えるんですよね! 欲しい!」
確かに相場相当ではあるが、買ったところで自宅では飼育許可が下りないだろう。
しかしなぜマウンテンゴリラ。悔しさはあるが、想像できないので聞いてみる。
「なんでゴリラなんて欲しいんだ?」
「ダメですよ先輩。乙女の秘密です! エッチ!」
なんだこいつは……
ゴリラが欲しいとか言われたら普通は理由を尋ねるだろうが。
しかもエッチとはなんだ。
尋ねられたくないなら最初から言うなと言いたい。
唖然としながらNを凝視していると、チラッとスマホに目をやって、何事もなかったかのように報告してくる。
「銀行の前で、ぺったんこなボストンバッグを抱えている人が周囲を気にした感じで二時間くらいウロウロしてるみたいです」
俺も平静を装って返す。
「何か気になる点でも? 別に待ち合わせか何かだろう。まさか銀行強盗とでも言いたいのか?」
この日本で銀行強盗を実際やることはオススメできない。
ただでさえ割の合わない銀行強盗を、オリンピック前でピリついている日本でやるなど、掴まえて欲しがっているようにすら見える。
という、ある程度ものを知っている大人なら想像できそうなこととは裏腹に、実は日本でも毎年数十件程度は銀行強盗が起きている。
報道される、されないは別にして、だ。
「いえ、その人の持ってるバッグが私のバッグにそっくりだったんです」
……どういうことだ?
「そっくりというか、多分私のバッグなんですよね。ロゴのところがちょっと血で汚れちゃってて落ちないんです。だから先日捨てたんですけど……」
「ちょっと見せてみろ」
そう言ってNのスマホを見せてもらうと、白地に黒い飛沫がデザインされたボストンバッグを持つ男が映っていた。
ロゴを確認しようと思ったが、飛沫のデザインがうるさすぎて確認できない。
「どこにロゴが?」
「もともと真っ白だったんですこのバッグ。良い部位だけ持って帰ろうと思ったらちょっと染みちゃって」
「何をかは聞きたくないが、染みたと言うよりもうこれで殴り殺してるよなコレ」
「まぁ無くはないですけど……」
あるのか……
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