第6話 進路選択・フリースタイルラップ・未確認飛行物体・見て見ぬ振り・未確認生物

 進路選択は学生にとって大切なものだと思う。もちろん、人によっては選択すらできない場合もあるだろう。


 ちなみに俺は、文Ⅱに進んでプログラマとして就職した。


 今の部署に異動するまで、それなりに活躍できていたので、必ずしも選択した進路と将来の仕事が一致するわけでもない。


「私は今ならフリースタイルラップを専攻したいですね!」

 

 Nがまた意味不明なことをいい出した。


 話を聞いていると、就職する少し前、ラップにハマって自作のリリックを書きなぐっていたらしい。


 たまには煽ってやろう。


「じゃあちょっと今やってみてくれ」


「仕事中なので無理です」


 真顔で返されてしまった。


 愕然とする。


 今の流れはそうじゃないだろう。


 他の同僚達も苦笑いだ。


「そ、それなら仕事の話をしようか。昨晩報告に上がっていた未確認飛行物体について、何らかの手がかりはつかめたか?」


 おれはため息を付いて、N以外の同僚に報告と推論を求める。


 同僚たちが口々に情報を上げてくる。


 エイリアンクラフトの可能性も示唆してくるが、今回に限って言えば、その可能性は皆無だろう。


 恐らく、と言わざるを得ないが、民間企業のステルス機である可能性が高い。


 先日の球技大会で、ライバル企業であるTB商社が、極小の飛行物体を買い付けたという話を聞いていたのだ。


 報告に上がった場所も、件の企業から直線距離で15キロと近い。

 


 ちなみに球技大会は、うちの会社のダントツ優勝だった。


 Nの異常さが垣間見えるゲートボールだったことを記しておく。



 昨今、ドローンの一般化が進んだことで、こういった未確認飛行物体unidentified flying objectの検知情報は枚挙にいとまがない。


 大きな騒ぎにならないのは、ひとえにお偉方のか、裏付けの取れる物がほとんどだからだ。


 本当にマズイものなら、不思議と耳へ入ってくる。


 世界は広いようで狭いのだから。


 ふと、鼻息を荒くしているNへ目をやってみる。


「私の上方、見えるUFO!、私は情報、上げるFor you!」


 ……下手すぎるラップを小声でつぶやきながら目をキラキラさせている。


 単純にUFO=宇宙人的な発想なのだろう。釘を差しておく。


「恐らくだが、今回のコレはTB商社の高速小型ドローンだと思われる」


 俺の推測を提供してやる。


 Nはショックを受けていた。


「えっ! 未確認飛行物体ってUFOですよね!? 未確認生物がのってるやつですよね!?!?」


 たまに階段の踊り場で反復横跳びをしているのを見かけるが、行動が一般的な人類とズレている。


 俺はお前が未確認生物なのではないかと疑いたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る