第5話 コロシアム・ゲートボール・熱中症・パンツ一丁・恥じる
「先輩。コロシアム、好きですよね?」
後輩のNがいつものようによくわからないことを言ってきた。
ゲートボールのルールを覚えるのに忙しい俺は、そんなNを華麗に無視する。
競業企業5社による、恒例の球技大会が、今年はゲートボールだという。
本来俺は無関係だったのだが、主将に選ばれていたうちの部長が熱中症で倒れてしまったため、代打にということだ。
「先輩! 聞こえてますよね絶対! コロシアム!!!」
ルールブックの向こう側からちょっと怒り気味の表情を刺してくるN。仕方ない。
「あぁ聞こえてる。だが特別コロシアムに思い入れはない」
「先週の休みにコロシアムが出てくる映画を観たんです」
話を聞け。というか働け。
「剣闘士試合の映画だったんですけど、いい大人がみんなパンツ一丁で真剣に戦ってるんですよね」
パンツ一丁なのは不正防止と試合が長引かないための措置だ。こいつは一体どこに食いついているのだろうか。
そも、ボクシングやプロレスもパン一ではないか。
「そこで思ったわけです。今度の球技大会は、皆さんパンツ一丁でやられてはいかがでしょう、と」
「馬鹿か」
おっとつい声に出してしまった。
「でも、普段見られない上司の乳首とかが見えるわけですよ!」
「誰が見たいんだそんな物を。そもそも、社長も観戦されるんだぞ」
「うちの社長は多分そういうの好きですよ!」
確かに否定できないが、他社との関わりもある。
というか、いい大人がパンツ一丁でゲートボールに勤しむなど、社会的に抹殺されても文句は言えないだろう。
ハラスメント社会を舐めてはいけない。
それと女子の部はどうするんだと問いたい。セクハラと取られそうだから口には出さないが。
「そもそもゲートボールとか見たことないですし、どこで盛り上がったらいいかよくわからいんですよね」
一理あるが、スパークなどは盛り上がるのではないだろうか。
ちなみにスパークとは、自分の打球をフィールド上の相手球に当てた後、自球の横に相手の球をくっつけて、自分の球越しに相手の球を吹き飛ばす気持ちのいいやつだ。
実際まだやったことはなく、想像の域を出ないのだが、多分気持ちいいハズだ。なので教えてやった。
「ほほー。なるほど。確かに先輩のタマを思いっきり弾き飛ばせば盛り上がるかも知れませんね。タマを」
「おい昼間からやめろ」
いつも元気いっぱいに意味不明なことを吐いているが、シモネタも行けるのか……
Nは恥じることなどあるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます