第4話 自動販売機・出世魚・天然樹脂・ドライカレー・事務
うちの会社の自動販売機は、闇が深い。
というのも、自社の試作品が9割を占めるせいなのだが、新製品がチャレンジャブルに過ぎる。
なぜ飲料用自動販売機に将棋セットやブリの刺身盛り合わせがセッティングされているのか。
俺はブリを無視し、1割の勢力として生き残っているお茶を買う。
「先輩、イワシも出世魚だって知ってました?」
後輩のNだ。業務以外でも最近よく話しかけられている気がする。
「マイワシな。カエリの煮干しとか好きだぞ」
なぜか悔しがるN。どうやらドヤりたかったらしい。
「そんなことよりなんでお茶だけ買ってるんですか! ブリのお刺身盛り合わせも買ってくださいよ!」
もしかしてブリの発案者はNか。
この自動販売機で売れた自社製品は、商品の発案者に即時マージンバックされる。
本社にしか設置されていないが、自販機は20台以上あるため、短期間の採用でも、当たればかなり稼げる点に、夢が広がる。
現に、ロングランしているみたらし団子の売上は、一日20,000円くらい売上げている。
発案者には破格と言える、売上の20%が支払われるため、俺はみたらしだけで月に100,000円程稼いでいることになる。
おいしい。
実際にはマーケティングも兼ねているらしいから、社外へマーケティング依頼する費用を考えると安くついているらしい。
だが、それでも20%はやりすぎだと思う。
そういう下地もあって、弊社の自販機戦争は過激の一途をたどっている。
「そういえばN、琥珀の件はご苦労だったな」
おれがみたらし成金だとは知らないはずだが、念の為話題をそらしておく。
「ありがとうございます。アレは運もよかったですねー」
天然樹脂の化石である琥珀を、粉末状にしてドライカレーに混ぜて売り込むというアイデアを提案したN。
某社の新製品コンペで、海外では常備薬としても琥珀は重宝されていることを説き、N独特の謎の説得力を発揮し、コンペを勝ち取った。
最近のNの活躍はめざましく、誰も事務職採用だとは思わないだろう。
面接で彼女を見た俺が、集合場所を間違えさせたんだが、そのまま特殊超常課の研修を受けてしまったことが、彼女の隠れていた能力を発揮するきっかけだったことは間違いない。
研修終了後、彼女に転部を勧めたのは会社としては正解だった。数々の成果が物語っている。
頭の中がちょっと狂っていることと、なぜか俺によく絡んでくることは想定外ではあったが。
「自販機に活けイワシ突っ込んだら売れませんかね?」
どうやって食うんだよそれ。
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