第549話 集団狩りにはマジれない?

 戦闘を担当していたおっさんのひとりズルカさんが「邪険にして悪かったな」と声をかけてきてくれました。

 アッファスお兄ちゃんが代表して問題はないむねをお伝えしております。だってたぶんアレですアレ。『回遊海原』の一階層初心者育成も兼ねた狩りであるということは想定されるのです。

 おそらく冒険者ギルドに登録したばかりの見習いさんたちはドロップ品拾いをしているのでしょう。牛及び他の魔物が消えた場所で子供達が拾い作業に従事していますからね。

 混ざっている大人は護衛を兼ねているのかもしれません。ここは一階層ではなく、五階層ですしね。

「初見、外部の冒険者が集団狩りに参加希望することはあまりねぇんだ。迷宮の様子見がてらドロップ拾いのクエストを受けるヤツらはそこそこいるけどな。参加したいならドロップ拾いか打ち合わせに参加するか紹介者がいるかだな」

 ざっくり聞くところのによると紹介があってもドロップ拾いか盾からのはじまりになるそうです。盾?

 誘導する流れから外れる魔物を流れから逃がさないのが盾のお仕事だそうです。

 アッファスお兄ちゃんが得意そうですね。

 あ。「ネアにはむかないね」ってしみじみ納得しな……、なんでガジェスくんもエイルさんも同意しているんですか?

 ネアだって、ネアだって盾役はできると思うんですよ? たぶん。

「過剰な火力で一部を流れに維持できても過剰だからその後ろで分散すると思うんだ。魔物たちも危機判断するみたいだからね」

 アッファスお兄ちゃんが言いますが、確かに迷宮によって魔物の判断基準は違うんだよね。

 ネアの迷宮の魔物たちはどう考えても自由意志が強すぎますけどね。

 ……猫系魔物の素っ気ない振る舞いはええ、ご褒美だと思います。

 ええ。

 ウチの子、かわいいでしょうっていう自慢だと言えます。

 あ、エリアボス蛇をぎゅっとしたくなりますね。エリアボス蛇からはもちろんダメです。圧死してしまいます。

「魔物の狩り方でもドロップ品は変わるからな。特異な狩り方をするって話のある嬢ちゃんはマズいって話よ。分配の予定が崩れすぎると困るんでな」

 昨日のおっさんパーティにいくらか情報をもらっていたようですよ。

 エイルさんが自分をちょっと指差ししてますよ?

「水臣族との共闘も経験ないな。技の影響範囲が想定しがたいのは同じだな。ドロップ拾いや回復人員を守りきれない状況を生じさせる可能性は五階層での狩りではギルドとして容認できないってことになってる」

 あー、見習いさん囲っているからですね。

 つまり。

「次の階層なら!」

「まぁ、フロアは全焼させないでほしいし、集団狩りは今日はやるって聞いてないからそれぞれがパーティ単独活動している。他の冒険者の活動妨害はしないように」

 なんか、警告を受けた気がしますよ?

 ズルカさんは今回の集団狩りのまとめ役(複数いる)としての発言だそうです。

 アッファスお兄ちゃんとガジェスくんによると集団狩りは定期的に行われており、ギルドに参加募集が出ているそうです。

 ガジェスくんによるとやっぱり初心者育成の一環ではあるようですよ。

 実力と行動の読めない余所者を参加させるのは難ありってことですかね?

「知ってたんなら最初っから参加申し込みしろっつー話だが、にーさんたちが嬢ちゃんたちに集団戦参加は難しいって判断したんじゃないか? わかってない若いのも多いからな」

 うっ。

 アッファスお兄ちゃんの判断力もガジェスくんの気の回しっぷりもズルカさんの発言を肯定している気がします。

「まぁ、気は荒い方ね」

 薄く笑ってエイルさんが帽子の角度を調節していますよ。

 そこで威圧されたら私が団体狩り参加希望が流れていくような気がするんですけど!?

「向いていないんだから諦めておきなさい。トロさにイラつくことになるわ」

 ん?

 気性が荒いって私ですか!?




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