第548話 グルメット迷宮五階層

 食材迷宮である『グルメット迷宮』は基本ドロップは食品、もしくは調理関連魔具の類になるそうです。

 調味料用の保存壺とか、醸造壺とか万能包丁(大人の身の丈ほど)とか火元のいらないお鍋とかだそうです。火を使わないけれど火力調節機能はあるそうです。火力調節は弟くんがこうるさく言ってたアレですね。たぶん。

 魔物からドロップした保存壺に採取した砂糖玉を入れながらドロップ品おもしろいと思っているネアです。

 あと、他の冒険者パーティも見かけるんですが、ピンク色でふわふわきらきらした迷宮内に小汚いおっさんうろうろはとても違和感です。

 『グルメット迷宮』はフロア分けをされていないフルオープンフロアで階移動のポイントと点在する安全区画だけがちょっとズレている迷宮のようです。『環礁迷宮』はフロア分けされてましたからちょっとした特色差異というやつでしょうかね?

「グルメット牛は綺麗事じゃ勝てねぇんだよ!」

「牛の群れ舐めんな!」

 ふわふわピンクの背景におっさん達って違和感あるなー。小汚いから『清浄』かけたいけど、怒られるやつだよねー。と、眺めていたらおっさん達に叱られました。

 おっさん達も実際のところはピンク空間はちょっと居心地が悪いそうですよ。せめて本人達小綺麗ならましではないかと思うんですけれど、そういう物でもないらしいです。綺麗すぎても魔物に警戒されるんだそうです。それ言い訳じゃないんですね。

「牛の群れは勢い凄いから。男衆に囲ってもらってアタシらが遠距離センメツすんだよ。ヨソモンはちょいとはなれてな」

 チームプレイの邪魔は良くないとエイルさんが私の腕をひきますよ。

 団体で行う狩りの邪魔をするのはよくないですし、少し距離をおいた場所で見学させてもらうことになりました。センメツの邪魔をするのよくないですからね。

 男衆の方々が環を響き合わせて(たぶん気合い入れと牛への煽り)思うより強い勢いでなだれ込んでくる大型魔獣牛の群れの突進を阻みます。

 何人か吹っ飛ばされているんですが牛の進行方向が少し揺らいだところに遠距離からの攻撃スキルが飛び、へこたれないおっさんが力強く牛を煽って誘導していきます。ちょっと勢いがすご過ぎて現場にいたら暴走してそうな自分を理解します。離れているのは正しい判断でした。

 おっさん達に誘導された牛の群れの先頭が落とし穴にかかりなだれるように消えていきます。

 迷宮内では死んだら死体残りませんものね。つまり、群れすべてが落ちちゃうんでしょうか?

 転落したのはおそらく群れの半数でしょうか?

 群れの後半にいた牛達はなんとか踏みとどまって冒険者達に喧嘩を売っています。一部の牛さんが逃亡を計っているようですね。落とし穴向こうからは荷物拾い担当と思われる人達が牛のドロップ品を引き上げています。生肉とか、ミルクとかチーズとかが入手できるそうです。燃やせば高確率でハム等の加工肉がドロップするのでここからは遠距離魔法スキルが飛びかうそうですよ。派手ですね。

 ちなみに牛さんもピンク色してます。おっきいんですが、なんとなく丸っこくてピンクです。

 なまくらな武器なら圧し潰す。そんな牛さんですがピンクでかわいいです。

 この五階層、魔物も全部ピンク色なんですねぇ。

 そういえば、アッファスお兄ちゃんたちが対応した魔物もピンクのネズミだった気がしますね。

 待機中のお姉さんが教えてくれるには牛だけではなく豚や鹿、羊なんかもいるそうです。全部ピンク。

 ピンクばかりなのかという表情をする私達にお姉さんはピンクばかりではないと他の階層の色を教えてくれましたよ。ええ。六階層は水色だそうですよ。

 で、六階層には水色の牛さんがいるそうです。

 えっと、もしかして出没魔物はカラー違いの同種が出るんですか?

 え。

 ちゃんとランク差はある?

「水色ならあんまり目に痛くないかもですね」

 さっさと次の階層に降りましょう。

 でも、牛狩り見学はすっごく楽しかったですよ。

 人が、少なければ、私もセンメツ狩りしたいですよね。

「チームプレイってすごく盛り上がりますね!」

「うん。不特定多数と連携して同一対象に向き合うのって達成感も凄いし、しんどくても楽しいんだと思う」

 ガジェスくんが綺麗にまとめてくれますよ。




 誰かと連携する?

 私、そーゆーことしたことがあったでしょうか?




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