第547話 『グルメット迷宮』

「明日は食材迷宮でいいんじゃない?」

 エイルさんの一声でクリームパンをおやつに買い込んで『潮騒の国』の食材迷宮『グルメット迷宮』にきたネアたち一行です。

 この『グルメット迷宮』は地上一階層から四階層までは王室御用達迷宮で一般人立ち入り禁止だそうです。つまり一般冒険者は五階層からのスタートとなります。

 入り口で入場手続き。

 パーティ人数の登録、出入り口での優先買取ドロップ品の開示リストの確認。五階層から十階層までのおおまかな調査地図(有料)魔道具である遮光ゴーグルの販売とレンタル。入場料は一パーティ銀貨一枚。高い気もしますがすぐ稼げるそうです。稼げない人はむしろ入るなという扱いらしいですよ。

 入場のピークは過ぎているらしく受付の人がゴーグルをとてもすすめてきました。理由は教えてくれませんでした。受付の人もエイルさんもゴーグルは持っていた方がいいとオススメですので小金貨一枚で買取りしましたよ。いくつか外装に種類があったのでがっつり顔半分をおおう仮面タイプのゴーグルです。視界がちょっと暗くなりますね。

 どちらかと言えば面白半分のコレクション気分での購入でした。間違いなく必需品でしたが。

 迷宮ドロップ品って思わぬ物があって面白いです。遮光以外の機能としてヒトの体力と魔力の全体値からの減少値(おおまか)がわかる機能がついてました。

 赤と青の棒が黒く染まっていく仕様のようです。迷宮から出てきたパーティの人が半分くらい黒かったですからね。

 数値も見えたら面白かったと思うんですがそこまでの機能はないようです。

『グルメット迷宮』五階層はとりあえず淡いピンク主体の目に痛い迷宮でした。淡いピンク主体で濃淡複数のピンクで構築されたピンク空間。ついでにどこか蜂蜜とかふかし芋かという感じの甘さを含む香りが……。

「おなかすきそうですね」

「ゴーグルつけて。魔物も保護色で一応は五階層だから」

 アッファスお兄ちゃんが促してきたので上げていたゴーグルを装着して周囲を見回しますよ。

 このゴーグル小金貨一枚のメイン機能、もちろん遮光ですがただの遮光で小金貨一枚は高い。生物の耐久度がわかる機能と『グルメット迷宮』に限ってらしいですが採取物スポット(名称表示有り)ガイド機能がついているんですよ。

『砂糖』のスポットと『果実』のスポットを早々に発見ですよ。『砂糖』スポットに出ている棒は半分くらい黒いですね。

 よーし、『砂糖』採っちゃうぞ。

 ピンクの桔梗みたいな花をむしれば、花の形をした『砂糖玉』が採取されますね。形がかわいいです。見えている棒の黒い部分が伸びますね。三回ほど採取するとこの『砂糖』の採取ポイントは崩れました。リポップ待ちになったようです。

「砂糖玉ってかわいいですよ」

 振り返ると魔物と戦っていたらしいアッファスお兄ちゃんがにこりと笑顔をくれました。

 ネア、知ってます。これ怒られるやつですよね!?

「迷宮内は当然魔物が徘徊しているのは理解しているね?」

 もちろん、知っています。

「はい」

「事前情報は集めているけれど、俺たちこの迷宮ははじめてだね?」

「はい」

「ネアは基本採取者ではあるけれど、まずは周囲を確認し、役割りをそれぞれが納得してから行動するのがいいと思うんだけど、どうかな?」

 はい。

「先走ってごめんなさいでした」

 魔物は確認しておくべきでした。

 アッファスお兄ちゃんとエイルさんならこなせると判断してしまった部分はあります……ね……。あ。

「ごめん! ガジェスくん!」

 忘れてしまっててごめん!

「ここで謝られるのは正しいと思うんだけど、ちょっとよりダメージがおおきいね」

 力なくわらうガジェスくんにしっかり謝りましたよ。「ほどほどに」とアッファスお兄ちゃんがとめるまで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る