第533話 なぜこうなった旅の仲間

『潮騒の国』

 大陸の南東端にある半島な国です。

 国が管理している……契約している迷宮はひとつ。

 存在する迷宮はみっつ。

「みなぞこの国は……そうですね。『渓谷の国』に近い国と言えますね」

 エイルさんがめんどくさそうに解説くださいますよ。

 ついでに言えばエイルさんが指さす先は壁のむこう大海原です。潮騒の国の解説ではないようです。

 アッファスお兄ちゃんによると渓谷の国も国民以外奴隷か客人という一種の鎖国国家。みなぞこの国もそうだということでしょうか?

「まず、水中呼吸、水中移動が出来なければ都市部には入れません。気泡街はありますが移動には基本水中歩行に水流活用移動になるので魔力が切れた地上住人は死にます」

 ハッキリキッパリおっしゃいますね。この美少女(推定三桁越え)。

 ええ。現在『潮騒の国』の宿でくつろぐ私ネアは旅の同行者がなんとなく増えたことに疑問を抱くべきだと思っています。

 エイルフィールさんは『みなぞこの国』を故郷とする水臣族(みおみぞくと読むそうです)の方でお役目を終えて帰国する途中だったそうです。

 お役目を聞いたらあっさり「王宮宝物殿から国宝を盗んだ盗賊の処刑と国宝奪還ですね。呪いの痕跡を追うだけの簡単なお役目です」と教えてくださいました。

 簡単なお役目?

「部屋とってきましたよ。あの、水系のスキルないんですがぼくはついていけない?」

 不安そうなガジェスくんですよ。別に置いて行ってもいいんですけど。

「適切な魔道具があるはずだから探せばいい。資金は迷宮で稼げるしね」

 不安そうなガジェスくんをアッファスお兄ちゃん(既婚者子持ち)がにこりとなだめていますよ。いざとなればきっとリリーお姉ちゃんから錬金術を駆使した便利魔道具が届くんだと思います。

 リリーお姉ちゃんとアッファスお兄ちゃんの結婚によりルチルさんとオルガナさんの仲がリリーお姉ちゃんの後押しによって急接近中だとかくぅ実物を遠くから見守りたいですよ。

「みなぞこの国に至るには水中行動も重要だが、たどり着くには一般的な迷宮十階層以降でも活動できる魔力が必要。余裕で行動できると判断できる人は大概ちょっとの一手間でなんとかなるわ」

 ガジェスくんをチラ見しながらエイルさんもなだめてくれています。つばひろの三角帽子が可愛いんですよ。真珠の飾りが特に!

 やわらかそうなれぇすのブラウスに合わせているのは赤茶色をした革の幅広ベルトというかボディスとかいうのかよくわからない鎧なのか、ただのオシャレなのか悩ましいのは私の無知ですね。ええ、無知ですのでつい、革装備でれぇす傷みそうだなと呟けば「防擦防水防汗対策はしてるわよ」と返されました。綺麗ですもんね。手入れも維持も力を注ぎますよね。納得なのです。私がそんな感じで納得しているとついでとばかりに気が向いたらブラウス作ってくださるそうですよ。エイルさん、自作でしたか!! 

 いや、びっくりしました。

 え。

 もしかしてそのちょっと踵の高いショートブーツもお手製だったりします? 貝殻の内側みたいな光沢が綺麗ですよね。


「装備品は基本自作よ。リエリーもガンガンきたけど、あんたもなのね」

 え。

 それはもう。

「妹分ですから!」

 リリーお姉ちゃんには敵いませんけどね。

 胸を張っておきましょう。

 えっへん。

 なんかですね。みなさん私がネアなんですよね。

 本当の私が『妹分なネア』であるべきだと私は考えていますのでちょっと、ええ。ほんのちょっといいのか罪悪感も伴って悩ましいですよ。

  


 うれしいんですけどね。


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