第532話 トルファームの町、頼りになる漢とは?
ガジェスくんの立ち位置はウェイカーくんにとっていわゆる親友な弟分だと思うんですよね。
私、ネアにとってのティカちゃんに近い立場ではないかなぁと思います。
なぜ、ガジェスくんについて考えているかというと旅の雑用係として私に同行するって話に私抜きでなっていったからですよ。
どーして私抜きで話を進めていくんでしょうね。大人たち。
「迷宮主からの影響でしょうね。ネアさんの旅には同行者がいた方がいいという」
まさかの鯨の配慮だった件!?
「ガジェスは国境でのやりとりや書類作業物資調達に関する手続きも把握していますし、複数の迷宮に潜り最低限の耐性そして戦闘力を身につけています。罠も感知できますしね。深層階はまだしばらくは荷が重いでしょうがいずれ。それなりに便利だと思いますよ?」
タタンさんがぐいぐい推してきますね。
「そんなふうに雑務要員してもらう理由がわかりません。ガジェスくんに利点が少ない気がします」
まったく。ガジェスくんの身内ともいうべき大人たちですよね。迷宮主からの思考誘導でもかかっているんですか。
「あのよぉ、嬢ちゃん」
ゲオルグさんがピッと一本指を立ててきますよ。
なんなんですか。
「まず、嬢ちゃんの方が戦闘力が高い。そうだよな?」
そうですね。
「で、嬢ちゃんはけっこう抜けてる」
は?
「ガジェスはこうるさく迷宮での行動や町中での規則を把握したがる」
あ、私以外からも今「は!?」って声がもれましたよ。え、そのまま続行ですか。ゲオルグさん。
タタンさんが実にいい笑顔ですが気がつい……てないですね。
「つまり、嬢ちゃんの抜けた部分を補えるってわけだ。まぁこっちはガジェスに代わる事務員を確保しないとマズいけどなー」
いや、ガジェスくんの利点。
「ガジェスの足りぬ戦闘力を補え、やり過ごすことを優先傾向のある行動以外を知れ、思わぬ経験を積める。若手としては変えのない機会だろう。でないと面白がる引退じじいがついてくるぞ」
宿のおじさまが怖いこと言いますよ。
ギルドマスター(片方は元)がそっぽむいて音の出てない口笛吹いてますよ。
やめて。
「ガジェスが気にするとすればゲオルグの無能事務っぷりだろうが、それこそ人を雇えばいいしな。……ゲオルグをうまくあしらえるような」
ゲオルグさん、なにやら「よせやい、おれは誰とでもうまくやれるぜ」などと寝言をほざいていますよ。しょーがねーな派はいてもアニキだからついていくぜ派は少ない気がしますよね。
……少ない、ですよね?
草原の国ではこれぞ尊敬できる漢とか言いませんよね?
「まぁ、候補はいるねぇ。ゲオルグは苦手だろうがな。これ以上、タタンは貸せんしな」
「は!? わざわざおれが苦手にしている奴を!?」
「オルツォテが学都から戻ると連絡がきとる。修学を終えた後もしばし商店やギルドを渡り歩き経験を積んだらしいようでな」
「げ。ルツテかよ。うぜ」
ゲオルグさん容赦ない感想ですね。
どんな人なんですかね?
「兄さんとタタンさんと歳が近い幼馴染みでね、よくタタンさんに抱きついていた印象が強いかな」
ガジェスくんの解説にちょっと書類を捌くタタンさんを見つめてみます。
清潔な装い、長身。薄すぎも暑苦しくもない程度の筋肉量は簡素で質のいい服に隠れてしまっているけれど、一番のタタンさんの魅力は長毛犬な頭部でしょうか。
ふわっふわのあの頭部はとても撫でたい欲求を誘発しますからね!
ブラッシングしたい。
ただ、タタンさんは年上の異性の方なのでそんな失礼に当たることはできませんけどね。
「ぼくら兄弟にも優しかったし、いい人だよ」
ふぅん。
「……タタンさんとゲオルグさん、どっちが本命とかあったりします?」
オルツォテさんというのが男性なのか女性なのかちょっと判別はつかないんですけどね。
「そーいう話興味あるんだ?」
「人の恋愛や人間関係はちょっと面白いかなと思ってますよ。自分のこととして考えるのは苦手ですけど」
「あー、ぼくも。近場や自分が巻き込まれる恋愛事情はしばらく遠慮したいかな」
「えー。ガジェスくん、よく言うじゃないですか。恋は盲目堕ちるもの。彷徨える愛はすべてを焼き尽くすって」
「言わないよ!? なにそれ怖すぎる」
えー。
そんなことありませんよー。
たぶん。
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