第529話 雑学入手(鑑定について

 おっさま方のお見本戦闘を見ながらちょっとボーゼンとしているガジェスくんとネアです。

 タタンさんはタタンさんはゲオルグさんを連れてギルド、及び組合の日常業務を始末しに戻られたんですよ。本当に何事ですか?

 翌朝には戻ってくるそうでそれまでは冒険者ギルドのギルド長のおっさまと商業ギルドの元ギルド長(引退中)と宿屋のおじさまが戦闘訓練をつけてくださるそうです。

 十五階層を攻略したのはゲオルグさんですからガジェスくんは十六階層は些か荷が重いはずなんですよね。

 十五階層で私達は何もしなかったわけでもないですが、まぁなんというか十五階層の魔物との戦闘もガジェスくんと一対一、ちょっとタタンさんや私の補助付きで魔力切れギリギリ寸前戦闘になっていた状況ですから十六階層は無茶だと思いますよ?

 戦闘の魔力余波を浴びることは魔力成長の足しにはなりますが、まぁ、なんというかおっさまたちの戦闘風景は暑っ苦しくておなかいっぱいって感じですね。

 筋肉乱舞を称賛する趣味はありませんからね。褒め称えたら調子に乗る方が多いというのも経験から承知してますとも。……その方が扱いが? いえ、その扱いをして機嫌を損ねるとそれはそれで面倒くさいことになる予感しかありません。

 世の中理不尽だと思いますね。

 朗らかに笑って「さぁ、若人の番だ。やってごらん」じゃないんですよ。

 もう少し十五階層で戦闘を繰り返すべきだと思うんですよ。

 え?

 私はフロアごと焼き尽くすことも凍りつかせることも自在ですよ。ええ。

 やったら「とりあえず、ガジェス。イケるとこまでいってみようか」って私の存在を軽くスルーしてきたんですが理由がわかりませんね。

 ……迷宮主の大鯨が無茶苦茶喜んで『YES』『はい』選択肢を出してくるので無言で欄外を殴って『拒否』の意志表示は忘れません。

 隙あらば選択肢出してくるのやめてほしいです。

 うっかりタップを狙ってくるものじゃないと思うんですよね。

 夕食は宿のおじさまが腕をふるってくださったのでうっきうきですよ。

 食材の採取や鉱石の採取は楽しいですよね。

 ガジェスくんに冒険者ギルドのギルド長が指導している側で商業ギルドの引退じぃさまが私に採取のコツやおすすめを指導してくれますね。

「感知系のスキルや能力に頼り過ぎず探すことも大切なんだよ。経験で増えた知識は鑑定や感知スキルを増強していくからね」

 一般的には鑑定スキルは本人が見知った知識を引き出して行う鑑定と、本人が自認しかねる叡智の宝珠という道具からの記録引き出し鑑定があるそうです。

 叡智の宝珠は主にいろんな迷宮の奥に設置されており、その迷宮が持つ記録だと言われているそうです。

 それ、正体は迷宮核じゃないですかね?

 だとするとたぶん、大元の叡智の宝珠が存在しそうですね。じぃさまによると鑑定結果に誤差が出ることから叡智の宝珠は複数あるようですし。

 思わぬ雑学入手ですね。

「わかる知識があっても使いどころを学んでいなければ無駄となるさね。お嬢さんは能力が高いようだから下手にバレれば利用される。隠すことも覚えた方が良いだろうね」

 ふむ。

「つまり。制御を覚えましょう?」

 じぃさまは「ははっ」と軽く笑ってから真顔で「その通り」と応えてくださいましたよ。

 さすがタタンさんの元上司様ですね。

 いい人です。

 筋肉厚めで暑っくるしいおっさま三人衆のひとりですが。

 若手の育成してくださっているんですからいい人なのは間違い無いんですけどね。

 冒険者ギルドのおっさまは「十六階層なぞらーくしょうぞー!」などと高笑いしながらガジェスくんの戦闘指導と安全確保に余念がありませんよ。

 あれは正直なところうるさいです。

 安全区画で食事準備していた宿のおじさまが「うるせぇ」とおっさま殴って黙らせていたのでほっとしましたよね。

 他の人もうるさいって思う案件だったようです。

 生きてますか? ガジェスくん。


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