第528話 雑談が主体ですよ
私、ネアとガジェスくんが扱い慣れない武器と戯れている間ゲオルグさんは棍を与えられて「一回魔力枯渇まで頑張ってください」とタタンさんに脅されていましたよ。
あまり人のいないフロアなので可能だそうです。
なんだかんだいってもこの迷宮『回遊海原』で利用者が多いと言える階層は初心者向け一階層。ここには十歳から十四歳くらいまでの若年層や戦闘職ではなく町で定職を持つ技術者商人の人が体力増強を目的として利用しているそうです。安全優先という奴ですね。
実力をあげたい冒険者は十階層近辺でまず実力をあげたり、良いスキルギフトのドロップを狙うそうです。
ゲオルグさんが到達階層十三階層だった理由はちょっと人気階層から奥であり、混雑していないからだそうですよ。
で、深層階まで行こうというパーティは国内パーティ(固定)で十パーティほどいるそうですが、一部は王都留置きだったり、王室騎士団や兵団所属だったりで現在トルファームに居るのは三パーティ程度だそうです。
たまにギルド長パーティが間引きに入ってはいるそうですが業務に差し障りない間引きなのでやはり間引きが足りていないそうです。
火塩草の間引きは足りているそうですが。
ところでギルド長パーティってなんですか?
実は一般的だったりするんでしょうか?
ギルド長パーティの主戦場は二十五階層あたりだそうですよ。いえ、そんなことは聞いていませんが?
あ。
なるほどです。
「組合の偉い人であるゲオルグさんはせめて二十五階層行けるようになっていろという上からの要求という奴ですね。出世!」
「いや、ちげぇよ!?」
ゲオルグさんが盛大に否定しますよ。
え。
違うんですか?
「あまり違いませんねぇ。水は重要なので『水』関連のスキル保持者は優先的に強化すべきですからね」
「あの、僕は……」
「ガジェスは事務作業できますし、将来有望ですからね。今は多様な経験を出来るだけ安全に積めるために底上げをしておきたいんですよ。もちろん、勝手な押し付けですからトルファーム以外に骨を埋めるとおっしゃってもかまわないんですよ。レサーマル王家の姫のひとり。ツァトマ姫の付き人への報酬のひとつとでも思っていただければ」
「あ。タタンさ、……様の方がいいんでしょうか?」
ガジェスくんが戸惑ったように問えばタタンさんはゆるく耳を動かしましたよ。
「今まで通りで結構。数いる王弟のひとりに過ぎませんよ。王族なんてごろごろいますからね」
「王侯貴族は基本嫁多いもんな」
「問題なく王家の王族と名乗るには母の家柄やよっぽどの個人能力が必要なんですよ。私はこの獣人としての外見で資格無しとされていますから王家に相応しい教育も受けてはいないんです。マジで」
ゲオルグさんが「はー、ちょい羨ましいー」と空を仰ぎながらこぼし、タタンさんがうざったそうな仕草で「面倒なだけですよ」と流していますよ。
大人二人の会話にガジェスくんはちょっと反応に困っているような微妙な表情でなにやらもごもご言っていますがよくは聞き取れませんね。
ふむ。
「見守ってくれるよい大人に見守られていますね」
「どーしよーもないところがないとは言えませんけど、よい兄ですね」
ちょっとそっぽをむいたガジェスくんの耳が赤いように思えたのでたぶん、照れ屋さんですね。
守ってくれる大人がそばにいてくれることは実によいことだと思います。
悪い見本にもよい見本にもなって判断材料になってくれるということでしょうから。
ああ。
きっとガジェスくんは。
「お兄さん大好きなんですね」
「はぁ!? 何言ってんだ!? すっげぇ文句ばっかり言ってくるぞ。ガジェスは」
ゲオルグさんから異論が思いっきりでましたよ。
「好かれたかったらちゃんとかっこいいとこ見せろよ。バカ兄貴」
これ、売り言葉に買い言葉って奴ですよね。
気楽に言い合える家族っていいなぁとうまく振る舞うことができない私なんかはそう思います。
好き勝手言うって意外と怖いものですから。
十五階層ボスはゲオルグさんが単独討伐してちょっとは弟の尊敬を稼ぎ、魔力枯渇でぶっ倒れたゲオルグさんを背負って安全区画に移動するタタンさんに「できるじゃないか」とぼやかれていました。
仲良しさんですよね。
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