第527話 『回遊海原』中層
十三階層までは実に順調に到達。
その後ゲオルグさんが露骨に「これ以上は無理だって」とあからさまに手を抜くという暴挙にでましたよ。ブチノメスぞとブチ切れたのは私、ネアではなく、商業ギルド事務員のタタンさんでした。
さすがタガネさんのおともだちですね。
ゲオルグさんも反論負けてませんが。こう、自分の戦力の無さを力説するのはどうなんでしょうね?
「クソ兄ィ」
ガジェスくんが捻り出すような呻き声を洩らしているのでよろしくはないようですね。
「この辺りからは魔物の硬度も速度もアガんだよ。馴れてるタタンとは違うんだよ」
ゲオルグさんが愚痴りつつ水と槍での中長距離攻撃と近接体術は流石に安定の経験高さを感じます。十三階層に到達した途端に回避行動が増えるのは露骨すぎると思うんです。ええ。ソロパーティではないのでそこそこ補助もありますし、通常の迷宮探索より休憩での回復率も高いですからかなりワザとらしいかと思います。
ガジェスくんの真空波とかで近接してきた魔物は吹っ飛ばされていたりしますしね。
使用数が増えれば身に馴染みやすいらしく、ガジェスくんの戦力はかなり上がったようです。
「魔力枯渇する連戦は少しきついけどね」
なんて苦笑いしながら魔力自体は潤沢そうなゲオルグさんを睨んでますよ。
そうですね。
ゲオルグさんも魔力枯渇するくらい頑張ればいいんですよね。だって、迷宮核の間まで到達可能なタタンさんが補助に入っているんですから。
「十四階層で三度の魔力枯渇ですか。基礎魔力の鍛錬が些か不足していたようですね。もう少し先に安全区画がありますから頑張りましょうね。ガジェス」
タタンさんは厳しいですがやる気のあるガジェスくんにはまともな助言者でありたいようですね。
「おい、タタン」
「なんですか。ゲオルグ」
「武器がやばい」
「はい?」
「手持ちの武器がやばい刃こぼれとヒビが入った」
ゲオルグさんの告白にタタンさんが沈黙します。パーティメンバーの視線はゲオルグさんの武器ですね。
「なんで、武器強度適正低めの物使ってるんだよ。深層階目指すって知ってただろ!?」
「愛用武器なんだよ!」
ガジェスくんがゲオルグさんを怒鳴りつけ、堂々とゲオルグさんは応えてみせます。愛着のある武器はいいんですが、じゃあ、せめて強化や手入れをしっかりしといてほしいですよね。
気のせいかも知れませんが予備も持ってなさげな気がしてしまいますね。
フッとタタンさんが息を吐きます。
「安全区画で応急処置をしましょう。予備の武器は一応所持しています。使い捨てで色々試してみるのもいいでしょう。もちろん、ゲオルグだけでなくガジェスもですよ」
パーティメンバーの全員がどの距離からの攻撃手法も持っているのだし、いろいろ試していくことで魔力増強戦力狂化……強化をはかりたいらしいです。タタンさんは。
少し先の安全区画を『清浄』で快適にし、ガジェスくんには美味しく魔力回復と短時間睡眠での基礎力回復を促していましたよ。タタンさんが。
枯渇したあとは一度眠っておいた方が魔力の容量が増えたり、操作性が良くなったりするそうです。
一旦、情報を遮断することが重要だとか。
いろいろあるんですね。
ええ。いろんな武器が並べられましたが、私が愛用するのは槍ですよ?
あと遠距離スキル攻撃です。
身体に魔力を通して殴るといい。なんてゲオルグさんが笑っておっしゃるんですが、まずお試し的にゲオルグさんを殴るのがいいでしょうか?
こう、手のひらに意識を集中してまっすぐにゲオルグさんのおなかあたりを狙って。
拒否されたんですが、試させてくれてもいいんじゃないかなとガッカリですよ。
安全区画には魔力回復、体力回復促進が『清浄』後は発動していました。
綺麗に使ってほしいところですよね。
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