第516話 お茶会は青い食器で
テーブルには青い陶器のカップにカエルが出した蜂蜜たっぷりカフェオレが満たされ、猪肉の紅茶煮が薄く削ぎ落とされてお茶請けとして供されています。蕎麦で作った焼き菓子も添えてあります。あと、パラライズプリンも。
「食器オシャレやのに野戦味溢れる不思議な茶会やん」
野戦味ってなんですか。野戦味って?
「あー、道具はシャレとんのに限界料理のっとるわーって感じでなぁ」
限界、料理……。
「いや、肉は好きやで。肉はがっつりいけてええよな。ただ、綺麗に蒼く染めた焼き皿で供されると場違い感があるもんや。せやな。食器はたかが食器やもんな」
タガネさん、自分に言い聞かせてませんか?
見た目はそうですね。素朴で色目は灰色と茶色と茶色ですね。飲み物も茶色ですねぇ。
「ネアちゃんは管理者のケンカにどうマジんの?」
削ぎ落とし肉を一枚、噛み下しタガネさんが問います。
「そうですね。管理下迷宮を強化しつつ、防衛専門でしょうか?」
だって、面倒臭いですし。
「うっは、面倒そうやの。わかるけど。で、ティルケじょーちゃんはどないするん?」
ティカちゃんについては現状『私』の動きを見守っている感じですよね。
面倒臭がっているのを責められているわけではないようです。
「学都の『ネア・マーカス』が『むこうがわ』に向けて対策をたてているのでは?」
とりあえず、明らかに危険を伴う相手を下しておくのは大切なことだと思います。私は『私』を攻めませんし。
「それはそないなんやけどね。ネアちゃんは『迷宮』とヒトの関わりをどう見とる?」
「相互成長のための共生相手では?」
基本的に生きる継続年数が多くなる迷宮の方が自身を上位と捉えがちですが、ヒトという魔力流動循環存在が無ければ迷宮自身の維持も難易度が上がるため、本来、上位も下位もない、相互必須の存在だと思っていますね。
迷宮という一強だけでは生存維持できないというのはきっと絶妙な均衡なんだと思われます。
「せやな」
「ヒトが一方的に寄生していると語るにはヒトがいない迷宮が弱体化していく説明ができませんから」
ヒトの存在を下とみたいなら、ヒトなしで迷宮を拡張強化できなくてはいけないでしょうと私は思うんですよ。
出来ていないという情報だけ集まっているんですもの。
「あー、まぁせやな。迷宮神子とか特異なヒトデナシをつくってもあくまでヒトはヒトやしな」
ヒトの枠はあやふやで、あえて語るなら『迷宮の外に生き、迷宮を渡る存在』でしょうか?
迷宮は、そうですね。『不動の存在』でしょうか?
迷宮はそこにあるものですからね。迷宮核や迷宮主は動くことはありますが、自身の迷宮から長くはなれるにはいくつもの条件があるみたいですし。管理者は迷宮自身ではないのでその束縛はないようですが。
でも、迷宮との関係が良くなければ長くはなれていると離脱されることもあるそうですよ。そこは信認とか信用とか愛着というやつですかね。と考えていますよ。
天職の声さんの心は不明ですが。
何事にも例外特異例はつきものですね。ええ。
ところでティカちゃんのおはなしからそんなおはなしに?
「あー、なんつーか、言いにくいんやけどな」
タガネさんの歯切れが悪いですよ?
「迷宮神子とは違う『迷宮のノロイゴ』という名称が存在するんやわ」
縁起悪そうな名称ですね。
「それはケンカん時に『景品』『賞品』に選ばれた人物が複数の管理者に求められた時に生じるらしいんやわ。正しくその『本人』を取り戻すには他の管理者の下にある『一部』を勝利を持って取り戻さなければならないツー奴でな。ヤル気ない管理者のそばから選ばれやすいんよ」
は?
え?
つまり、私がやる気がなかったからティカちゃんが選ばれた。とおっしゃる?
あの自称中立進行係そこまで説明してませんよね?
……私がちゃんと聞いていない可能性は……たぶんありますね。とりあえずティカちゃん取り戻して安心してましたし、勝負事に関しては『私』がヤル気有りでしたので大丈夫とタカをくくってましたよね。
ええ。
「大海むこうの迷宮管理者のおじょーちゃんがティルケちゃん気に入って確保しとるツーのが、まぁ問題なわけや。がんがんに魔力を注がれると魂の改変が起こるさかい、ヒトに戻れんくなるんよ」
なにしてくれてるんですか。
海むこうの迷宮管理者ぁあああ!
「ノロイゴは迷宮並に寿命と存在値が特殊化するんでなぁ。カタぁつけるんやったら早い方がええんよ」
言いに来るのが遅いのでは!?
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