第513話 マオちゃんがかわいい

 数日後、アッファスお兄ちゃんがマオちゃんとおしゃべりしているのを確認して安堵に胸を撫で下ろした迷宮管理者ネアですよ。

 今日もマオちゃん可愛いですねぇ。

 鮮やかな蜂蜜みたいな髪もぴぃんとたったお耳も気持ち目尻の下がった大きなオメメもかわいいですよ。マオちゃんは『ネア』が十一歳だった頃より身長は高そうですね。ゆったりめの華やか衣装では体型はよくわからない感じですね。秋衣装だからか露出自他はとても少なめで贅沢かわいいですよ。

 ルチルさんとリリーお姉ちゃんがきゃっきゃと飾り立てる気持ちもわかりますとも。ええ。私も参加したい!

 あまり金属装飾は好きではないようで困ったお顔していることもありますよ。

 貴石や魔石の類は好むようでまるごとキラキラ石を錬金術で整形した留め具がとてもかわいいですね。

 首元には革紐とリボンを編んだ首飾り……クノシーで買った飾りボタンが先端で揺れるようです。

 なんだかまだ身に着けてくれているのがなんとも言えず、ええ。そうですね。嬉しいんだと思います。

 ティカちゃんと一緒にマオちゃんとハーブくんにって選んだ、キラキラした飾りボタンですよね。

 貴石の留め具や魔石の装飾魔具に比べれば存在感も繊細さもたぶん稚拙で劣ってしまう(ルチルさんやリリーお姉ちゃんの技術は卓越していると思ってます)のに、だいじに身に着けてくれているのほんとに嬉しい。

 かわいい首飾り選んでくれていいんですよ! マオちゃん。

 あー、たぶん『私』マーカス家への接触を絶ってますね。ハーブくんがギリギリ誤魔化している感じでしょうか?

 あの弟くんは結構まめまめしそうですからね。手紙とかをグレックお父さんや王都の叔母さまに送ってそうです。

 だから天水ちゃんに情報が流れてくるみたいですし。

 天水ちゃんが『受信権スキル贈与』って言っていたのでハーブくんもあのちゃんねる配信にハマっているんですね。少しだけ意外でした。

 でも、全部かわいいマオちゃんですけど、やはりどんな貴石や魔石の美しさ妖しさにも負けないと思えるのはキラキラしい琥珀のオメメだと思います!

 マオちゃんとてもかわいいです。

 どーして『私』はマオちゃんを愛おしく思えないのでしょうか?

 こんなに可愛くて、私を慕ってくれているのに。

 学都に行けば『私』にどう扱われるのかだけ少し心配なんですよね。

 ハーブくんがいるので大丈夫だとは思いますが、なにやっているのか向こうの情報は流れてこないのですよ。もどかしいです。


『あーーー!!! っふっざけんなや!!!』


 とても怒っているような声にびくりとそちらを振り返ればエリア監視モニターがひとつ開かれており、そこではタガネさんがエリアボス蛇と戯れてらっしゃいましたよ。

 え?

 七階層森林フロア?

 エリアボス蛇、どーして報告しませんでしたか!?

 え?

『アルジかわいい愛デテタ』?

 ありがとう。でも呼んで。

 うん。

 もうちょっと早く呼んで欲しかったよ。

 あ、でもエリアボス蛇はいい子だよ。

 悪い子じゃないよ。


 初期予定から多少の変更はあるとはいえ『蒼鱗樹海』の構成は。

 一階層『地表同期森林型』

 二階層『天然洞窟型』

 三階層『水源地洞窟型』

 四階層『湿地樹林型』

 五階層『湿地型』

 六階層『冬冷森林型』

 七階層『森林型』


 となっており、七階層の森林。

 つまり、タガネさんが今いる位置に迷宮核への接触可能地があるんですよね。

 誰か一人触れたらもっと深部を構築するとおっしゃってました。あのワームが。

 それにしても、タガネさん、単独で七階層到達ですか。

 記録を確認するに警備隊長さんやドンさんまじりのパーティで足を伸ばして四階層の『湿地樹林』で足止めを喰らっていたはずです。

 ……えっと、迷宮成長のためにゆっくり攻略なだけですか?

 あ。

 エリアボス蛇に蹴散らされてる記録が……。分体を倒したところを本体に襲われたらちょっと耐久無理でしょう。あ、イゾルデさん、生かされつつも集中攻撃されてるのですね。

 エリアボス蛇……。

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