第511話 依怙贔屓万歳
「で、どないしたいん?」
「え」
「迷宮巡りで契約条件は満たされとるんよな?」
「は、はい」
「迷宮とロサの、次期の坊ちゃんとは円満っつーことなわけや」
「えん、まんなんですか?」
「円満やろ。氾濫や暴走は起きとらんし、迷宮の応えが分かり難いだけやわ。っくだらない。結果だけ見とったら問題なんぞ見当たらへん。あー、問題っつったら問題やわなぁ」
「問題……」
「坊ちゃんが『できとらん』としょーもなそーにしとったらあほどもも調子乗るわ」
「え、でも! 迷宮の応えを聞くことができないんですが!?」
「代行のおっさんもやん」
「おっさん……」
「あのおっさんもロサの血統には違いないんやろ? それとも迷宮の応えが聞こえんのはロサの血統やないっつーならあの元気いっぱいのおじょーちゃんもやなぁ。むしろ、迷宮に嫌われとるやろ」
「ニーソレスタですか? いえ、彼女そこまで嫌われているわけではないと」
「ぁん? 迷宮の応えは聞こえへんのやろ。じゃあなんで決めつけれるんや?」
「叔父上も、ニーソレスタも迷宮を知っているから」
「ぁあ? 意味わからんわ。坊ちゃんと同じに迷宮の応えを聞くことができへん同士やろ」
ちょっと意識を外していた間にタガネさんがいきなりノヴァくんを追い詰めていましたよ。
ロニ・マルカルもモニターガン見中ですよ。
『どれほどの魔核投入すればあの愚者を廃せますか?』
ロニ・マルカル。迷いのない声でタガネさんを排斥しようとしないでください。その時はノヴァくんも一蓮托生ですからね。
だいいち、
「タガネさんは愚者ではないと思いますよ」
ええ。ネアはタガネさんの善性を信じてますよ。
そりゃあ多面性がないなんてこと言いませんけどね。
タガネさんって基本的に幼い子供を保護しようとするタチのようでいい人ではあるんですよね。
「あとこれは配信ちゃんねるではないですからね?」
ただの現在進行系の観察モニターですからね?
悔しそうに俯かれましたね。
ロニ・マルカル。ノヴァくん過激派ですね。
「タガネさんは強いと思うので排除は労力高いと思いますよ?」
タガネさんはのらりくらり柔軟性も高いですし、あと、今ならもれなくアッファスお兄ちゃんの危機もついてくるので絶対しませんからね?
え?
個人的依怙贔屓は当然行いますよ?
私は『私』と私が優先ですよね。
ネアとしてはノヴァくんを気にはしますが優先度は低いんですよね。
当然、ノヴァくんの優先度アトマちゃんよりは低いです。
「おっちゃんもな、知らん相手の聞いたこともない関係者への気持ちや企みなんぞわかるわけあらへんやろ」
ぴらぴらとタガネさんは手を振っている。
「それも、そうですね」
ノヴァくん納得していいの? 納得ポイントだとは思うけど。
「せやろ? 胡乱な確かやない噂やったら知っとってもな、ほんまのとこはわかり難いもんや。わかっとることは、……」
タガネさんが答えを渋りますね。
「わかっていることは……?」
「迷宮はロサの子を意識せざるをえんのやろなぁ。どう転んでも重要な位置におるんやろ」
「重要?」
「やから、減らそうと権力者は暗躍するんやろなぁ」
減らそうとする?
「どう、いう?」
フッとタガネさんが表情をゆるめてノヴァくんの髪をぐしゃぐしゃにしますよ。誤魔化すつもりですよ。誤魔化していくつもりですよ!?
「まぁ、これも噂や。噂。それもうまぁ調べれるようになりゃええ。がんばりぃ」
タガネさんの言葉にロニ・マルカルがうつむいたまま拳を震わせている。
「ロサの子を意識して?」
ちらりとバティ園長を眺めれば『わかりませんが?』という表情で首を傾げてらっしゃる。
『そうですね。古い迷宮だけがロサの血脈に反応するのだと思います』
ロニ・マルカルがロサの子に反応するのは古い迷宮と解説くれましたよ。
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