第508話 いっそ滅べ
ロニ・マルカル。
水色の魔物はそう名乗って私、迷宮管理者ネアに頭を下げる。
魔物……違う。
極々弱体ではあるが『迷宮核』だ。
『わたくしはロニ・マルカル。『時箱宮』という迷宮の核主であります』
震える声が滴り落ちていく。
ジソウグウ。
属性は水に寄り気味な気配だなぁという感想ですね。
そして、その水色はネイデガート・ロサ少年と色を同じとしています。
「ロサの男の子の契約迷宮?」
『はい。わたくしに赤子であるよりも生き抜けると語ったロサの末弟の言に従いました』
……。
ロサの末弟。
コレは亡くなったロサの前当主の弟のこと。三兄弟でやたらと暗躍していたフシのある末弟である。
とても『また貴様か』という気持ちになりますよ。
育てたのは真ん中のトーラス・ロッサ。ニーソの父親である。ついでに言えば『ネイデガート・ロサ』を入れ替えたのはこのトーラス・ロッサ。現ロサ公爵代行である。
えー。
先代ロサ公爵弟二人に裏切られてるのー?
仲悪かったの? それ以上にダメな人だったの?
「なんで?」
素朴な疑問ですよ?
ロニ・マルカルは顔を上げることなくしばらく沈黙ですね。カシャンと金属音がして気配が増えます。(人払いというか、迷宮主払いというかをしてました。奴ら威圧かけますからね)
『迷宮管理者が存在しなければ『国』と契約なされている迷宮が対抗者によって破壊され尽くす可能性が減るからですよ。迷宮を管理する管理者が変更されるだけでしたら迷宮自体は残り、迷宮の活動方向性が変更されたとしても土地全体が死滅することはないでしょうから』
園長が淡々と語りますよ。
死滅?
『迷宮核の破壊で『ケモノの国』は死滅したという記録はとれていますし、ロサ家が不穏な情報を流したのなら『ロサ公爵家の言葉』である以上、帝国の中枢は重き判断となるでしょう』
帝国ってたぶん、政治向きなことを得意としないロサ家の迷宮管理者(及び神子)の保護者役ですよね。
『岩山の国』におけるメディエラ婆の家系が正しく『石膏瓦解』の迷宮神子の家系であり、クルール様達王家が本来それを擁護する形のように。いわゆる、この世界におけるよくある形態な訳だ。
帝国は奴隷の売買を禁じているけれど、非人は存在する。
国が労働先を斡旋し借金を返させる仕組みと言われているが、その間、基本のステータスカードを取り上げる。いわゆる借金奴隷である。
その間、なんの権利もなく諾々と従わざるを得ないわけである。コレが表にも知られている借金奴隷。
帝国における身分の高い非人は皇帝の妃である。それに倣うように貴族の妻もである。隷属契約には魔力を要するみたいですけど、貴族って基本魔力高めだから。
皇帝の妃として召しあげられたその日に貴族としての身分も人としての身分もすべて取り上げられて皇帝に仕える。とされている。
愛も身もすべて捧げると言えば聞こえはいいが、皇帝が望まなければ意思を維持することも許されないのが妃だということだと聞いた。
妃自体は非人ではあるが、侍女や傍付きは実家の意志を持つので勢力争いはあるんだとか。
嫁ぐ時に使用人に嫌われている妃は最悪だとか、そんな情報が入ってくる。
で、そこで生まれて魔力や才能で分別された皇子様や皇女様がロサ公爵家に非人として嫁いでこられるわけである。
『ネイデガート・ロサ』のお母様は皇帝家ではないとのことですし、学都における恋愛結婚であり、『前ロサ公爵』に嫁いだ皇女様は迷宮隷奴として繋がれたとか聞いて眩暈を感じたモノです。
だって、時に借金奴隷達の気晴らしに使用されるなどと聞くとかなり嫌な気分になります。
非人であり、奴隷である。
だから『交配実験』を行っていく。
魔力や存在値が強い子供が下層の者から生まれるというのなら、子をつくらせて高位の者が触れるに叶うように育てよう。
確かに帝国皇家を含む各王家はまさに『交配実験場』なのかもしれませんが、個人的にはちょっと気分が悪いですよ。
まぁ、『帝国はロサ家共々滅べばいいんじゃない?』と言いたくなるくらいに。
そこはやはり『私』が、あの子がどう決めていくかなんでしょうが、様子がこれっぽっちもわからないのがもどかしいです。帝国の迷宮達はさくさく契約下に置いているようですけど。アドレンスの方には来ませんからねぇ。
元々のこの世界の子達にとっては『あたり前』の常識のようで、私が否定することは違うのでしょうね。
口にする機会があればもちろん好ましくないと思っているとお気持ち表明ですけどね!
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