第507話 怒ってませんから
それなりに思い詰めているっぽいノヴァくんの様子に困った表情で見守るタガネさんとアッファスお兄ちゃんです。そして私はひっそり見守る迷宮管理者ネアで有ります。
アッファスお兄ちゃんはともかく、タガネさんは迷宮達がノヴァくんに反応しない理由を知っていそうなんですよね。
迷宮。
彼、彼女らはバッチリ忖度します。
性格だっていろいろです。
なぜだか私はよく声をかけられていましたが、そうとも限らないものらしいです。
九歳児……アトマちゃんも『回遊海原』のエリアボスとは交流していましたが迷宮主との交流は本人の魔力総量の問題で不可だったそうですし。
十五はこの世界における成人でより様々なことに対して責任を持つことを義務付けられます。
冒険者ギルドでも十五を過ぎれば低報酬系の依頼はよほど品薄でなければ眉を顰められることになります。
低報酬系の依頼は能力の低い子供達のための依頼でもあるからです。他の依頼のついでにこなすことには何も言われませんが専門で低報酬系の依頼ばかりであれば労務所を案内されるそうです。アドレンスを含む帝国以外の国にもこの強制労働所のような場所は存在するそうです。
そのうちのひとつが教会だそうです。
そういえば、スキル教育もスキルを使わない技術教育とかも熱心でしたね。教会。
スキルと魔力を使いこなし、学都でも成績優秀。難があるとされているのが迷宮と交渉ができないというそれだけというかそれが一番の問題だというか、つらいところなんでしょうね。
『私』にとってはおそらく知ったところで困るだけの情報ですよね。
『私』のネイデガートにとって『彼』はあくまで『ネイデガート』のあるべき場所を奪った簒奪者です。立派だと評されれば評されるほどどちらが偽物であるか陰で囁かれ引っかき傷を増やされていくのです。
そこに『彼』の意図はそういえば関係していないのですよね。
こどもたちそれぞれの頑張りと正義がかみ合わないだけで。
きっと『私』のネイデガートは『彼』をただ害意の存在だと知っていたいだろうなと思うんですよ。
『彼』の懸命さやその在り方に気がつけば切り捨て難いでしょうし。……マコモお母さんに対するように妙な怨みで恨んでませんよね? ちゃんと『しかたないこと』も存在することを理解できていますよね?
あ。
けっこう不安ですよ。
私は今『私』のそばにはいません。
いつか力比べはしなくてはなりません。
私は『私』の越えなければならない壁にならなければいけないのです。
世界の基盤になれと望まれるというならば、『私』は世界を、自身の生きる場所の在り方を思考し望まなければいけないと思うのです。
迎え討つ私もまた自身の理想を考えていかなければいけないのです。
とてもめんどくさいし、苦手です。
ええ。めんどくさいですし、ただ死にたくないという思いしかもとはない私です。自身の感情すら理解できている自信なんてありません。
でも。
でも。
こどもが守られる世界がいいのです。
手を差し伸べられる世界がいいのです。
その思いは多分私だけではないのです。
迷宮での決まり事にはこどもを守るものは少なくないのですから。
アッファスお兄ちゃんもタガネさんも小さな子を迷わず助ける人です。だから、ノヴァくんは大丈夫です。
ええ。
学都で迷宮達が口をつぐみつつ、声をかけることがなかった理由がわかります。
そのことが『ロサの後継』としての貴族間で評判を落とし続けたこともわかります。
誰が仕込んだことなのかすら私にはわかりませんし、もうむしろ知りたくない。
ええ。
怒ってませんよ?
相手もわかりませんし、生きてないかもしれません。善意かもしれないですし。
ええ。
でもね。
ええ。
天職の声さんが声をかけてくるようになったのは十歳になってから!
ネイデガート・ロサ少年、ノヴァくんは現在実年齢九歳!
誰だよ。幼児酷使したのは!?
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