第504話 愚かさとは
「愚かですね」
マコモおかあさんがキツいですよ。
『吾の吾子を腐すが愚……』
あ。
「おはなし中はお静かにするお約束ですよ。ダンコアちゃん、よろしくお願いしますね」
吾様はダンコアちゃんを娘としては扱っている過保護なお母様で魂による結びで繋がる私にもちょっと過保護を発動します。が、感覚基準が違い過ぎるため私自身の身も危険なんですよね。なんというか、悪気なくすり潰されるというか、この場合この世界ごと壊してもまったく悪いとは思わないであろうということでしょうか?
「愚かですね。かの方が正しいでしょうに」
「いえ、その時はもれなく私もこの世界もすり潰されます」
ダンコアちゃんも加減を間違えた吾様に跳ねられ(事故)、その心配のまままだ息のある状態ですり潰されて身と魂が分離すると同時にぐずぐずになった身は飲み込まれたそうです。そんな記憶を維持したままダンコアちゃんになったらしく、吾様と『親子』しやすくなったそうです。
私という吾様にとっては異物もついているくらいがちょうど良いそうですよ。
吾様は……親と思うにはちょっと障壁が高過ぎて難しいんですよ。とりあえず、『子』の身体的生死には拘らない方なので。
「ええ。迷いなくこの世界を不要と判断なさるでしょう」
とても困る。
グレックお父さんやマオちゃん、アッファスお兄ちゃんとリリーお姉ちゃんのしあわせ生活が壊れてしまう。
だから、それは阻止しておかないといけないと思うのですよね。
「愚かですね」
って!
マコモおかあさん三回目なんですが!?
「事実です。自身を愚かでないとは申しませんがおまえは愚かです」
いささか劣化した尾を軽く捌き、キツめの視線で見つめられます。
「おどおどしない」
「あ、はい」
視線を彷徨わせかけた私をマコモおかあさんは即座に注意します。
ヒトの視線はあまり好きではありません。
「おまえは愚かです。利害関係と言いつつ、おまえ自身の利益を放棄することが愚かであると理解していない」
は?
利益放棄なんてしていませんよ!?
「わたくしは、わたくしが、もっとも求める事は確かに娘です。産まれる以前より定められた拘束は外を知らなければ幸福の箱庭。それを壊されたからこそ、わたくしは行動を起こす必要が有り、協力契約に首肯したのです」
あれー?
対等な契約でしたか?
「互いに娘を守るという前提はありましたし、当時の残存魔力も行動に差し出せる対価もあるのです」
あ、はい。
契約内容に不備不公平があったとしても誤差の範疇と言う事ですね。
なぜかマコモおかあさんがものすごく疲れた感じで息を吐きましたよ。そしてなんだか微妙な眼差しを感じます。そう、あのティカちゃんが時々むけてくるアレに近いですよ!?
なんだというんですか?
「おまえはおまえが大切だと思う者達に幸福であれと望むと言いましたね」
あ、はい。
「おまえはおまえが守りたい者を守りたいと言いましたね」
あ、はい。
だってティカちゃんやマオちゃん、ルチルさんにオルガナさん。フェンネルさんだってとても親切でよくしてくれました。ものごとを教えてくれる町の老人も警備隊の隊長さんや隊員さん、イゾルデさんなんかも理不尽さはあれど私自身の能力向上に尽力してくれました。
私はこの世界で阻害されることなく、大切にされました。一部『私』を排除しようとする動きは有りますがそれ以上に守ってくれる存在が多いと思うのです。
だから私は『私』の場所を守りたい。
すべてを守れなくても生きていく場所はとても大切です。
破壊されないよう立ち回る必要はあるのです。
「おまえは本当に愚かですね」
私の様子を見つめているマコモおかあさんが本当にしみじみと言うんですが、そんなに繰り返し言われるほどネアは愚かなんですか!?
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