ネア十一歳の夏です
第491話 私のすること
ネア・マーカス十一歳夏、とある迷宮の海階層満喫中です。
「クソ寒いんだけどぉおおおおおお!!!!」
みっともない鳴き声は今回のパーティメンバーのひとりひとつ年下のニーソです。鳴いても暖かくはならないので鳴き止むとよいでしょう。
「燃やしてあげるー?」
「死ぬからやーめーてー!」
赤毛の我が弟くんを抱きしめている虎獣人のマトラさんが気楽に周囲に炎の壁をつくりだしています。
「えーっと、フリ?」
「んな訳ないでしょ!! エセしょたぁああああ」
弟くんの言葉にニーソはとてもうるさく騒ぎますよ。
私や弟くん、マトラさんそしてものすごく影の薄いサクはスキルのおかげでさほど寒さを感じていないのですが、スキルきゃんせらー(弟くん談)のニーソはもっこもこの厚着饅頭(ニーソ談)です。歩くより転がった方が速そうですが運動能力は高めらしいので問題ないそうです。戦闘力はないんですけどね。
なんだか弟くんとニーソはよくわからない言葉でやり取りをしているんですよね。
「ちーとぷれいしたかったぁ!」と鳴くニーソに「スキルきゃんせるちーとでは?」と弟くんが言い、「効力がうすぃいい! メシうまとか知識ちーととかもぉ!」と鳴き返してますね。
弟くんはメシうまちーととやらを実践していたのでは?
「それなりの味の料理が迷宮の魔物を倒せばドロップする時点でメシうまチートなんて価値薄だし、知識チートは文明文化生活習慣にうまく噛みあわせないとアレだしねぇ。元の知識に対する理解力とこちらの世界においてうまくやるための応用力も求められるからね。あ、家柄チートは勝ち組では?」
スキルは使えなくても魔具は有り余る行き場のない魔力で使用可能ですしね。
「ぅっさい。どーせ私の知識なんて元々読みかじっただけの半端なモノですよーだ」
薄ぼんやり覚えているニーソはこんな感じだったかなと疑問符が浮かぶのですが、むこうも私には思うところがあるにはあるようなのに緊張感というか、とてもあけっぴろげな対応をしてきますよ。
異世界転生は主人公に相応しいチートがあるべきだと何度も説明されたので、何度も「ニーソが主人公ではないだけでは?」と答えておきました。「悪役令嬢は嫌ぁあ」と毎回頭を抱えては弟くんに「悪役令嬢張るならスキル不使用分野で同年代の誰よりも優秀くらい望まれるんじゃ?」と追い込まれていました。
「ティカちゃん、誘わなくてよかったの?」
トロちゃんがその辺りの魔物を一掃していくのを見ながらニーソが聞いてきます。
「ティルケにはまだ休息が必要です」
「うーん、そうかなぁ?」
「記憶編纂を抵抗したからニーソは疑問を持っているだけでしょう」
『豊穣牧場』の迷宮核ぶん殴って調整させたというのに拒否。最近は『腐海瀑布』産の食材が多かったとか……。たぶん、スキルきゃんせらーが効果を発揮したのでしょう。
「え? 兄様も記憶編纂効果なさそうだけど?」
「対象と接触の過多による影響もありますよ?」
「うん。兄様いつのまにかティカちゃんとお友達になってたみたいで。ティカちゃんいい子だもんねー。わーかーるー」
『腐海瀑布』との繋がりが切れている現在、弟くんは手伝ってくれますが、ままならないことが多くて、対応し切れないことが多くて、非常に困ります。
とりあえず、この迷宮の迷宮核をぶん殴りにいきましょう。
そうしましょう。
それがいいです。
そう、そうするしかないでしょう。
「寒いですしね。とりあえず、迷宮核をぶん殴って屈服させましょう。きっと、それがいいです」
「うっ、ネアさんが会話を成立させる気が全くない!」
それがどうしましたか。ニーソ。
私は迷宮管理者。
四人目なのか、はたまた想定外の五人目なのか?
だって私は『腐海瀑布』や『玻璃の煌迷』に入ることはできても管理権限は弾かれる。
私の内に『私』はいない。
そんな勝手な真似、私は認めない。
外の知識が使えるなら、使わせてもらわなくては。
ニーソも弟くんも敵には渡してはいけない。
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