第489話 強制参加とか最低
ネアは現在エリアボス蛇ぐるみぎゅうと抱きしめ、さきほど得た情報にじくりと苛立ちを感じている。
『ワタクシは『琥珀の塔』観測者です』
知らない管理空間で対面した存在はそう名乗りましたよ。
『ワタクシは観測者にして審判せし者』
全体的に白く、明るい。
『迷宮管理者は互いの在り方を示しあいます』
対面していると言っても声は聞こえど、姿を認識できないという観測者な審判さんはわけのわからないことを語りましたよ。
途中でこれ、迷宮たちがちまちま匂わせていた『オマツリ』の解説だと気がつきましたよ。
『管理者として迷宮を統括し、支配域を競って頂きます』
管理者による陣取り合戦……。えっと、世界を自分色に染めていけ?
迷宮を支配し管理下におけば迷宮たちは管理者のために存在しはじめて管理者のおもいに世界は染まっていく。それは確かにそうだろう。
迷宮が自らの影響範囲と定めた人の生きる場所の変わりざまはアドレンスで知った。
それでも迷宮には個性があってそれが地域差を生じさせていく。それでも管理者の思想の影響は受けるのだろうからわかるのか。
え、やだ。面倒くさい。興味ないですよ?
「興味がないのですが?」
私が欲しいのは私が護れる抱いていられるひと握りです。それだってもうこぼれ落としそうなほどに増えているのですから、これ以上は無理よりの無理です。
『管理者間権限最下位で宜しければそれで。下位者は上位者の命令遵守です』
は?
『最も支配域を得た管理者の意志が反映される。それだけです』
なにを言っているの?
いや、それは了承できない。
『最も優れた管理者に任せれば、ヒトも安らかに生きるでしょう。貴女が優遇したヒトノコも最も支配する管理者の権限下に置かれます。ご承知の程を』
待て。
ものすっごくご承知できません。
『景品となるヒトノコは世界から存在が消えます。世界の誰もかなしみません。貴女も忘れて、迷宮すべてを手放せば管理者から外れますよ』
忘れてしまえ?
すべて手放して忘れてしまえ?
無理です。
「参加人数はわかっているのですか?」
『資格を持つ者は現在四名です。ウチ一人は現在管理迷宮を保持しておりませんので近く参加の有無を確認致します』
つまり、最下位候補は私とソイツ。
ああ、これが迷宮たちの言う『オマツリ』
これはろくでもない。
『不参加となされるのでしたら管理迷宮をゼロになさいますように』
「でなければ強制参加ですか?」
『参加意志があるから迷宮の管理を手放さないと判断いたしますが?』
かみ合っているのかすれ違っているのか掛け違えたボタンのように気持ちが悪い。
「ティカちゃんをかえして」
『あのヒトノコを欲するならば、参加を。迷宮をもって守護させていたようですが、ワタクシの前では無意味でしたよ。もっとちゃんと管理者権限で守護を入れなくては』
イラっとする。
『結果はヒャクトセ、を、経る頃にはハッキリすると望みます』
ヒャクトセって百年!?
気が長くない!?
ん、んん?
もしかして。
「陣取り合戦もうはじまっている?」
『はい』
はいってあっさりこたえてくださいました。
ええ。実にうさんくさい『琥珀の塔』さんでしたとも。
「あーーー! 腹立たしいぃい!」
とりあえず、エリアボス蛇ぐるみを抱き締めこみました。
ティカちゃんをとりかえすには陣取り合戦なオマツリに参加せざるを得ないようです。
「切り取りははじまっている可能性が高いので気をつける必要があるでしょうね」
こーめーちゃんが教えてくれると言うことは。
「ある程度の情報開示が承認されたと言うことですか?」
「はい。よろしければ『玻璃の煌迷』を管理下にお加えください。私どもロサの迷宮はかつての管理者であったロサの血に惹かれます。されど、新たな管理者ネア、わたくし『玻璃の煌迷』は貴女以外の管理下に落ちることを望みません」
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