第487話 事務作業の相談
「それ、ネアと交流を持とうとしたんだと思うけど? 感じ悪いけど」
ティカちゃんが肉団子をもちもちした皮に包んだおやつを切り分けながら私の近況報告に意見をくれます。
「ちいさい子を懐かせて評判操作とか、確かに感じ悪いですね」
私、ネア・マーカス、確かに十一歳ですがそう見えないことに定評があります。
「へぇ、わかるんだ。そういうの。でもねー、たぶん最初にネアに声かけた人、キースだっけ? チャラい感じのおにーさんでしょ?」
ぁあ。ティカちゃんたら私をなんだと思っているんですか?
チャラい?
「そういえばチャラい感じだったかも知れませんね」
「最近変に女にいれあげてるって、心配されているおにーさんだと思うわよ? 元々は面倒見のいいおにーさんだって。チャラくて素直じゃない性格らしいけど」
んー。
理解できてない呼ばわりは確かに不快でしたが、どーでもいいですしね。確かに個人的にはあのおねーさんの方が不愉快でしたね。
「それ、私が不快だったのとは関係ないですよ。本人からは謝罪されてませんし、もちろん、言い訳も」
ですから不快なおにーさんのままでいいと思うんです。
「その人本人だって確信はないしね。とりあえず、そんな人たちにいいようにされてなくてよかったかな。ネアは、んと……世間知らずだから」
言い方に淀みがありますね。ティカちゃん、言いたいことは言っていいですよ?
「あー、もうっ! ネアは騙されちゃいやすそうだから心配なのっ! いくら後出しで対処できるからって嫌な思いするのもイヤじゃない!」
黙っていたらぶすっくれながら叫ばれました。
心配と信頼がなんか気恥ずかしいですね。
「ほら、紐付っぽい男の子達にのせられそうになってたっていうし」
ヒモヅキの男の子たち?
「ぅあああ。もう、いいわよ。気にしないで。ネアは自分が世間知らずで騙されやすそうに見える、そう、見えちゃうの! その事実をちゃんと認識しておいてね!」
「ちゃんと関わるなって言いましたから大丈夫では?」
「だいじょばないの! 言っただけで理解してくれるなら人も迷宮も共に相互理解ができるし、国家間に争いの摩擦は起こらないわよ」
えー。
アドレンスはお隣の国とはたぶん仲が良いのでは?
帝国も助けてくれてますし。
「利害関係は損得があるし、理不尽だって多いの」
「うん、そうだとおもう。人が多いと、んとね、少ししんどいなぁって思う。めんどくさいから迷宮で思うがままに突っ走ってどこまで行けるか試してみたいくらい」
「ネア、それはやめときなさい。それに単独迷宮探索はまだ禁止でしょ」
わかってまーす。
ティカちゃんに素直に返事する前にもちもちを口に放り込んで回答を濁すことにしましたよ。
「んもう。ティクサーではネアをわかっていて手助けしてくれる大人が多いから良かったんだけど、ココは違うんだからね」
それはそうですね。
「うん。ティカちゃん、ありがとう」
「ば、バカね。大人しくしておくのも大事だけど、本当に危なかったらちゃんとぶっ飛ばすのよ。いろいろ魔力を抑え込む道具とかもあるって話を聞いてるから」
ティカちゃんはいっぱい心配してくれます。
「うん。わかった」
「ならいいわ。ネアは好きに動けばいいと思うけど、危ないことに近づいて怪我とか私がイヤだし。楽しい友達とかはできた?」
もちもちの皮だけを小さくちぎってティカちゃんがもぐもぐしてます。もちもちだけだと味は薄いのですが確かに食感は楽しいですよね。
「寮の子達とはちょっと仲良くなりましたよ」
ちゃんと交流できてますよ。
講座とかは受講生が安定せずなんとなくこの人いたなって人がちらほら増えてきている程度ですね。
「もう少しだけ周囲に興味持ってほしいようなそのままでいいようなぁ。……あ、そうだ。そろそろ一度学都内にあるアドレンスの寮に行く日決めましょ」
アドレンスの寮……?
ティカちゃんの目がひゅっと冷たい半眼になりますよ。
「忘れてるわね。ネア」
はて?
なにかありましたっけ?
「学都に慣れてきてからでいいから学都内の七番街にあるアドレンス寮、アドレンス王族が学都滞在用の寮だけど、アドレンス国民の援助・管理・えっと外交対応もしているから行くようにティクサーの警備隊長も領主夫人も紹介状くれてたでしょ。王都の偉い人も」
そう、でしたっけ?
「ノーティ殿下も待ってるって言ってたでしょ」
ノーティ……。
誰……ん、覚えがあるような、えっと。
「ぅうん」
「え。忘れてる? めんどくさい子だったけど一応うちの国の王子様だし覚えていてあげなさいよ」
めんどくさい子だった……。
「あ! 弟王子!」
「それ、アドレンス寮近辺では言っちゃダメだと思うからね」
思い出せたー。
うんうん。
いたわー。俺様弟王子。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます