第483話 夕食前の雑談時間は心地好く
たっぷりと食材を拾い、それでも日帰りで迷宮を出た赤煉瓦パーティです。学都の迷宮では階層移動の踊り場に『子供おかえり道』ができるのです。他の国の迷宮にもその傾向はあるそうですが、迷宮によってはないこともあるんだとか。あとは安全区画から出れなくなるかも多いらしいです。
ジーネさんの手腕で学生ギルドからの事前クエストを完了し、物納で割りのいいクエストもいくつか完了させます。
「この成果は各自の学生カードに紐付けられて個人評価される。受講料の割引や対象講座の増加とか迷宮の紹介とかいろいろあるかな」
分配された現金収益を持って『赤煉瓦』に帰るんですが、道々魔道具屋に消えかけるニエナさんを引き止めるのにわたわたするハメになったネア・マーカスです。買食いに走りそうなマリアちゃんはジーネさんにお任せです。
たくさんの穀物袋に肉、お魚等の食材がいっぱいですよ。
「すごく、たくさんだぁ」
積み上げられた穀物袋にマリアちゃんの目がキラキラしていますよ。
小麦粉袋があるとグラシィもにこにこですよ。
「製粉の手間がかからないのは助かりますね。素材で他の素材との交換も考えてですが、報酬として皆さまに三食お弁当を提供することは可能ですね。期待していてくださいませ」
不足するようなら事前に伝えてくれるそうです。
少女四人で今回の素材量なら軽く一年分になるそうですよ。元々夕食代は寮費に含まれていますし、マリアちゃんに至っては食費の追加出しているのでその中で補うのは変わらないそうです。一応リクエストは多めに聞くそうですが。
お野菜や果物も採取しましたしね。キノコとかも。
「ニエナ、調薬に使いたいならまた出かけること。今回の採取物は全部寮の食材にするから」
ジーネさんの言葉にニエナさんが目を潤ませてますね。
「さぁ、皆さま。荷物はこのグラシィに任せて身綺麗になさってくださいませ」
そうですね。お風呂して着替えますよ。疲れましたし、おなかすきました。
団らん室に夕食前のおやつとお茶が準備されていたのでソファで寛いで待つことにします。手にはきのこの本。読みながら夕食待ちですよ。
えーっと、緑宝茸、緑宝茸っと。
「おやつ、おやつ。つまみ食いおやつ」
楽しそうにマリアちゃんが来て、その後ろにニエナさんとジーネさんも来ましたよ。
「ぁあ、アーマリアさま、髪濡れてますよ」
「えー、すぐ乾くよ。手入れめんどいから切ったんだもん。母様が金切り声あげてうるさかったけど、らくちーん」
ニエナさんはマリアちゃんのお家が治めている領の出身だそうでマリアちゃんのことをさま付けなんですよね。基本的には呼びかけてませんけど。
マリアちゃん的には「ウチの領民優秀ですごいよね」だそうです。ジーネさんに「優秀な領民は保護してこその領主家よね?」と聞かれていい子のお返事していたので良い領なのではないかと思います。
「兄上様たちのどちらかが継ぐからボクは武官として領を助けるんだー」
マリアちゃんが楽しそうに焼き菓子を喰みながら教えてくれますよ。
ニエナさんが布と櫛を使ってマリアちゃんの髪を乾かしていきますよ。マリアちゃんは「えー、ほっとけば乾くよー」って言ってますが特に抵抗なく手入れされていますよね。んー、お世話されて当たり前って奴ですね。
「お兄さん達いるんですね。私は弟と妹がいますよ」
「弟と妹かぁ、いいなぁ。兄様たちのお母様でもボクのお母様でもいいから弟か妹つくらないかなぁってよく思ったよ」
「お兄様達がいるのは羨ましいかな。弟はいるけど生意気で」
マリアちゃんが下の兄妹を羨ましいと言ってジーネさんが弟は生意気とぼやきます。わかります。弟は生意気ですよね。そして兄(のようなもの)はいいですよね。姉(のようなもの)もよいのですが。
「えー。兄様たちのお説教うるさいよー。お母様が金切り声あげるのは全部ボクのせいになるしー」
なんとなく、ジーネさんと顔を見合わせて笑いあいましたよ。
「ニエナさんは?」
ニエナさんに兄妹はと思って聞いてみると「ひとりっ子」だと教えてくれました。
お互いの兄妹に対する感情をなんとなくおしゃべりしているとグラシィが「お食事にいらしてください」と呼びに来たのでおひらきでした。
まだ、お互いの距離は探っているんですけど、なんていうか、悪いかんじにはなっていませんよ、ね?
でもやっぱりこういう時ってどういうお話をするのがいいのかわからないです。
お夕食は美味しかったと思うのですが、あんまり食べれていなかったようでグラシィとねこーずに心配させてしまったようです。
緊張していたことくらい自分でちゃんと気がつきたかったかもしれません。
心地好い時間だと思っていたはずなんですけどね。
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