第475話 お茶休憩ですね
迷宮学都に来てから人の多さにザワザワしっぱなしの気がしている迷宮管理者ネアです。
新しく『支配する?』って聞いてくる迷宮は特にない感じだなと感じていますよ。
「おりますがネアがどう振る舞いたいかで様子見対応なだけですよ。学都には迷宮の変化に過敏な研究者というモノもおりますから」
グラシィが飲み物とお菓子を準備しながら教えてくれますよ。
どうやら他の迷宮達にも私は観察されているようです。
『魔力を垂れ流してるからにゃあ』
『おいしくうまうまにゃ!』
おいしくいただかれているのですか。
「迷宮はロサ家が管理していることになっておりますが、それぞれの所領にも出入り口は有り、領主による管理が行われているのが通常です。ただ氾濫時魔物が溢れるのは学都の出入り口からだけという誓約が迷宮とロサにいた過去の管理者と結ばれて尊重されているだけですね」
へぇ。
『壁が形成される前は此処が王都だったにゃ!』
『ロサ家はヒトの政治に興味無いから皇帝家がフォローしているにゃあ!』
「起因はほぼ忘れられていますし、迷宮神子としての素養が高いロサ家の血統も数を減らしています。先代は管理者では有りませんでしたが八割の迷宮で契約更新が可能な実力者ではあられましたし」
ぉお。凄いのでは?
『だいたい魔力提供にゃ! 一定期間ごとに迷宮核に魔力を通しに来いが多いにゃ!』
いや、『豊穣牧場』で八十階層でしょ?
進むの明らかに大変だと思うんですけど?
「ですから、トラップを利用して迷宮核の間に招く迷宮も多いですね。それには迷宮の魔力圧に耐えることのできる魔力を保持していることが必須ですが」
ふぅんと聞きながら私が抱くエリアボス蛇ぐるみの尾っぽに戯れつくボロネーゼちゃんを眺めますよ。可愛いですね。
手放すとエリアボス蛇ぐるみが四匹のにゃんこーずによって攻撃されるんですよ。ぬいぐるみで戯れたいのはわかりますがエリアボス蛇ぐるみはダメですよ。ダーメ。
ところで。
「どーして迷宮が声をかけてこないのと研究者が居ることが関係してくるの?」
尋ねればにゃんこーずとグラシィが視線を合わせてますね。言い難いことなんでしょうか?
「ここ迷宮学都はロサ家の領地ですね」
うんうん。そう聞いているよね。
「ですが、他領への入り口をもつ迷宮がここに集中してもおります」
流通がここに集中しているよね。いいのかな?
「氾濫という危険を一箇所に集めていることで多額の帝国内の資金がロサ家に集中していることを不満に感じる方々も多いのです」
氾濫の危険は一手に引き受けているんだよね?
『氾濫はちゃんと間引いて誓約を守っている限りないようなものにゃ。ヒトは慣れるとあまりあたりまえのことに感謝しないにゃあ』
ああ、にゃんこーずがかわいいのはあたりまえだけど、愛でない事はないけどね。
「迷宮学都がなぜ学都であるか、それは最初からではありません。ロサ家の当主であった方が知識は財であると、引き継いでいくことを望まれたからと言われております」
学都となる前は商業都市だったそうですよ。
今では氾濫の危険を避けて『帝都』と『商都』は別に存在するそうですよ。
行き来自由なところはあるようなのですが、国を跨ぐティクサーの方の迷宮との行き来は難しそうですね。
「そこです」
どこですか?
「迷宮は人と契約します。協力関係を良しとします」
あー、それはそうですね。
迷宮神子を抱える『草原の国』も迷宮神子というか迷宮の子だろうと思える女王様が支配する『渓谷の国』がいい例ですね。
『岩山の国』は契約した当人を引き継ぐ人は居なくてもそれを補助しようとした家の人が王様やってる感じですよね。
「つまり、迷宮は国に属しているとも言えます。逆でもいいんですけどね。つまり、契約者の所属していると認識している国が違えば、迷宮が支配している土地は契約者の所属している国に移ります」
は?
「国を興したい者が冒険者となり、迷宮に建国を願うならば。ですが」
でも、遠浅の国は遠浅の国だし、迷宮同士繋がりはしなかったですね?
「契約者と管理者では権限が違いますから。ですが、ネア」
はいな。
「ネアは、帝国には属していないでしょう?」
いませんね。
「しばらくは『腐海瀑布』に迷宮同士のことはお任せください。今、各迷宮が国を違えかねない動きは抜かりの多いネアの手に余るでしょうから」
あ、はい。
「えっと、知らない人に奢ってあげると言われてもついて行きません。はい」
でもね、コッツくんとケールくんいい子だと思ったんですよね。私、人を見る目はありませんけどね。
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