第473話 労務所実習です。(ほぼ雑談

 後半は肉体労働でしたよ。

 とりあえずやってみようと促されたネア・マーカス含む女児組です。

 薬草摘みは問題なく。道整備の草刈りは得意ですよ。道に穴を開けるモグラは叩きますし、ミミズは傍にポイします。ミミズは森を豊かにする補助員ですからね……。迷宮内ではどうなんでしょうね?

「ねぇ、ネア」

 イマース嬢に声をかけられましたよ。

「なんですか?」

 とりまきとか雇われとかになるつもりはありませんよ?

「力のある平民は身分ある者の保護下にあるのがよいのですよ?」

 ……んー。

 善意、なんでしょうね。

「まず、自分の所属する国の偉い人を頼るものでは? 私、帝国民じゃありませんよ?」

「あら、失迷の国の王族の方たちは動いてらっしゃらないではありませんか」

 すでに印象の悪い王族がいるからですとは答えられませんよね。

「ネアは自国に戻ることを強く表明しているんですもの。逆に妙な圧力をかける方が良くありませんからアドレンス王国としては最良判断でしょう。おそらく。イマース嬢、現王政権に一切の興味がない力ある存在がどれほどの脅威かよく考えて判断なさるとよろしいですわ」

 ……アトマちゃん、なんかよくわからないんですけど、酷いこと言ってませんか? 気のせい?

 アトマちゃん、詳しいねぇと聞くと各王族や貴族の情報は集めようと思えば数日でそれなりに集まるそうです。

 帝国高位貴族は七歳まで名前以外の一切の情報が伏せられているそうですが、七歳過ぎれば解禁とばかりに家の中での立場や本人の気質がばら撒かれるそうです。

 情報制御しているお家もあるそうですが。なにそれコワイ。

「本人の資質といいますか、そのあたりは環境が大事ですから本来なら家の者が適切な教育係を側に配置するものなんです。わたくしもお姉様達に諸々の手解きを受けましたもの」

「フォゼッテ子息様は明らかに周囲の教育が足りていないと判断されるのですね?」

 よくわからないイマース嬢の解説を補填してくれるアトマちゃんですよ。

「少なくとも、ほかのお三方と比べて障りがありますもの」

 イマース嬢の言葉に納得しているっぽいアトマちゃんですね。

 でも、アドレンスの弟王子……フォゼッテ少年と比べて障りがあると言えそうですね。兄に甘えていただけかも知れませんが、あのタイプは好きじゃありません。私。

「わたくしも対応に不可はあるでしょうけれど、フォゼッテ様ほどではないと信じたいですわ」

 少し心細げにイマース嬢が息を吐いてらっしゃいます。

「普段の関わりと違う方々とはいろいろ異なるモノですし、譲りどころも重要ですね。少し、年上の方々ですとあちらで調整した上で、譲歩相談があったりしますよ」

 あー、グウェンさんはなにかと面倒見のよいお姉さんでしたものね。あのメンバー自由人はウェイカーくんだけですよね。納得です。

 迷宮だということを隠しもされていない場所で道を整備しつつ、そんな会話ですよ。

 次に指定された作業は薬草採取。

 得意です。

 得意ですよ。

 薬草採取!

 そういえば、思い出したので言ってしまいましたよ。

 入試の時、採取方法をわからないでいた貴族ご令嬢集団。

 ちょっと、どうなったのかなぁと。

「……わたくし、ロッサ令嬢はよく知りませんけれど、採取をすべて雇い人に任せてしまわれる方もおられますわ。採取作業は手に負荷がかかりますもの。美しい所作をまず身につけるために後回しにされがちかも知れませんわね。武や舞よりは優先され難いのです」

 んん?

「ロッサ嬢戦闘力もなかったですよ?」

「礼節もろくにありませんわよ? わたくしをツインドリルなんて珍妙な呼び方をなさるくらいには!」

 あ。

 イマース嬢ロッサ嬢嫌いなんだ。

 ところで。

「ツインドリルってなに?」

「知りませんわ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る