第463話 ティータイム
『腐海瀑布』の偽丘陵公園で四季巡りを一周し、冒険者ギルドで依頼完了手続きに流れで物納依頼をいくつかこなして懐がぬくぬくになったネア・マーカス十一歳、新入生です。
冬の丘陵地では『天水峡連』で手に入れた耐寒系スキルギフトで楽でしたよ。つまり、寒かったです。ですが、もふもふの増毛兎と増毛羊がとても可愛かったですね。
「ティカちゃん、おやつ一緒に食べましょー」
学都で食堂や茶店に行こうね。と旅の最中に話してたんですよ。ええ。
とりあえず『千切り』のスキルギフトも売れたし、基礎素材もそこそこ。増毛羊の毛糸も羊の肉塊も冒険者ギルドが良い値段で買い取ってくれましたよ。
ネコソギコースで狩ってきましたから売上は本当にいい感じですよ。『腐海瀑布』としては極浅階層なんでしょうけどね。
「そうね。一日で一年分の家賃更新料分を稼げるとちょっとほっとするわね。あ、ディ兄はどうする?」
「ん? 買い物して先に帰っておくよ。楽しんでおいで」
「わかったわ。明日は講座あるからディ兄は好きに予定組んでね」
「ん」
ディスお兄さんを見送ってから三番街のお茶屋さんにするか四番街にするか相談です。
ティカちゃんの講座は四番街、五番街でとなることが多くなる予定なのでまず今日は四番街で気になりそうなお店を探そうというお話になりました。まだ夜の時間には遠いですしね。
三番街は朝屋台巡りしたし。
四番街は飲み物の露店はありますが食べ物屋さんはお店の中で食べる仕組みが多いようです。
いくつかのお店が寄り集まって中庭のような場所を確保しているところもあるそうです。
お店で注文しないと入れないお庭というのは特別感ですね。と思っていると「密談用ね」なんてティカちゃんが教えてくれますよ。
そーゆーお店は少々じゃなくお高め設定なので「それなり」の店に行くわよとティカちゃんに引っ張られました。
飲食店を示す看板が掛かっているだけなのでそれなりのお店、私一人じゃまず見つけられないんですが!?
三番街は食堂わかりやすかったですし……。いや、ちょっと待って。馴染みのあの食堂はどっちかと言えば準ギルド的酒場ではないでしょうか? 食堂経営もしているけれど、酒も扱う。冒険者ギルドにも商業ギルドにも食事処は付随していますからそれの延長?
「ネア、そこの店でいい?」
ぐるぐる考えているとティカちゃんがただの民家っぽいドアを指差して聞いてきてました。
「みんか?」
「軽食屋さんね。第四学舎の学生ギルドでここへのお使いクエストがあったから間違いなく軽食屋さんだわ」
「うん」
ティカちゃんが間違いないっていうならたぶん大丈夫。
「じゃ、行きましょ」
バターたっぷりのさくさくパイがウリのお店でしたよ。
店内のお客さんはどうやら教会の人や回復術師の人が多いらしく、お店の人に「騒々しくなさらないでくださいね」と念押しされました。
「休憩中の治療師さんが多いお店なんですねぇ」
「食事療法をお店メニューで研究している講師先生もいるって噂。事実配達したのは薬効がある素材だったし。果実のパイかお肉のパイかどっちがいいかな」
メニュー考案してお店の人がつくるんですね。ちょっと大変そう。
「両方頼んでわけっこしよう」
パイにフレーバーティー。ちょっとシュワっとする口当たりのフレーバーティー。もしかしたらリリーお姉ちゃんのとこのシュワシュワ飲料の素になる粉使っているのかもしれませんね。
お店の人がパイを半分に分けてお皿に盛りつけて持ってきてくれましたよ。「皮がこぼれやすいですからね。どうぞ召し上がれ」と。
大きめのパイで分けて食べることはよくあるそうです。味見用の小さい大きさのパイもあるそうですが、普段は数種類あるパイのうち二種か三種がメニューに並ぶとのことです。
「デザートパイと主食パイって感じね。種類作るのも売れ残ると困るっていうのもあるんでしょうね」
荷物袋(時間遅延系)や保存箱は? と思ってしまいましたが、そういえば高額品でしたっけ?
「保存箱は基本、素材保管に使うのよ。うちも一緒。出来上がった食品は売り切っちゃう方がいいの」
ふぅんとおはなしを聞いておきます。私、お商売には向いてないと自覚していますから。
「……。ネア、商業ギルドの会員よね?」
「うん」
お水売りに素材売買ですよ。
「そっちを主力にする気がないなら別にいいんじゃないかしら。これから講義受ければいいことだしね」
ほっぺたうにうにしながら別にいいんじゃないとはこれいかに。
ティカちゃんがなにを気にしているのかが難しいですよ。
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